総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > テレワーク普及の可能性と課題
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 働き方改革とICT利活用

(3)テレワーク普及の可能性と課題

テレワークを導入するにあたっては、人事評価や労務管理などの制度の変更、リモートアクセス等を可能とするICT利活用環境の整備などが必要になる。これは働き方改革での取組と共通するところが多い。そこで、働き方改革に関連して行っている施策(社内制度面3)、働き方改革に関連して導入しているICT機器やシステム(情報システム面4)について、テレワーク導入企業の水準以上の取組を行っている場合には、それぞれ制度面、情報システム面に関してテレワークを導入可能な環境が整っているものと捉えることとした(図表4-2-1-7)。すなわち、社内制度面、情報システム面ともに、テレワーク導入可能な環境が整っている企業を「テレワーク導入可能群」、社内制度面、情報システム面のいずれかについてテレワーク導入可能な環境が整っている企業を「テレワーク導入準可能群」として分析を行った。

図表4-2-1-7 テレワーク導入可能群、準可能群の捉え方
(出典)総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)

従業員数300人以下の企業についてみてみると、テレワークを既に導入している企業は3.0%である。しかし、現状でも、テレワーク導入可能群の企業が21.4%を占めている。これらの企業が抱えるテレワーク導入に向けた課題が解決されることによって、従業員数301人以上の企業と同等の水準までテレワークの導入が進展する可能性があるものと考えられる。また、制度面でテレワーク導入企業の水準以上の取組をしている企業が9.5%、情報システム面でテレワーク導入企業の水準以上の取組をしている企業が25.2%であり、合計34.7%の企業がテレワーク導入準可能群の企業に位置づけられる(図表4-2-1-8)。

図表4-2-1-8 テレワークの導入、導入可能性(従業員数300人以下)
(出典)総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)
「図表4-2-1-8 テレワークの導入、導入可能性(従業員数300人以下)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次にテレワーク導入済みの企業とテレワーク導入可能群の企業の、テレワーク導入の目的についてみてみた。テレワーク導入済み企業では、導入可能群の企業と比較し、「顧客満足度の向上、営業力の向上」「イノベーション創出の環境づくり」といった企業競争力を高める目的意識が高いことがわかる。一方、テレワーク導入可能群では「人材の採用・確保、流出の防止」「育児による退職の防止」「介護による退職の防止」といった、いわば福利厚生的な目的意識が高い(図表4-2-1-9)。テレワーク実現のための素地となる環境については同等の整備状況であっても、目的意識として企業競争力の向上により意識を置いている企業ではテレワークの導入につながり、従来型の福利厚生的な目的意識が強い企業では、テレワークの導入にまでは到っていない可能性がある。

図表4-2-1-9 テレワーク導入の目的(複数回答)
(出典)総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)
「図表4-2-1-9 テレワーク導入の目的(複数回答)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

では、テレワーク導入可能群の企業がテレワークを導入するとした場合に課題となると考える事項としてどのようなものがあるだろうか。テレワークを既に導入している企業と比較すると、導入可能群の企業では、導入済みの企業と同様、労務管理や人事評価といった社内の制度に関するものが高くなっている。さらに、経営層、管理職、社員の各層におけるテレワークへの理解を挙げる比率が、テレワーク導入済みの企業よりも10ポイント以上高くなっている。また、テレワークの導入・運用コストを挙げる比率も導入済み企業の2倍の水準になっている(図表4-2-1-10)。テレワーク導入に向けた社内制度作りの支援を行うとともに、テレワークに既に取り組み企業業績の向上等に効果を得ている企業の事例等を紹介すること等を通じて、従業員各層に対するテレワークへの理解を高めるなどの取組を進めていくことが有効であるものと考えられる。

図表4-2-1-10 テレワークの導入にあたっての課題、導入するとした場合の課題(複数回答)
(出典)総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)
「図表4-2-1-10 テレワークの導入にあたっての課題、導入するとした場合の課題(複数回答)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


3 社内制度面の整備状況に含まれる項目は1.柔軟な労働時間制度導入(フレックスタイム、裁量労働制)、2.多様な働き方に対応した評価制度導入(目標管理制等)、3.仕事の見える化、情報共有の仕組みづくり、4.社外で業務ができる環境整備(リモートアクセス等)、5.育児・介護休暇制度の導入、6.時短制度の導入、7.長時間労働の是正(残業抑制、朝型勤務制度)、8.在宅勤務制度の導入、9.会議の見直し(会議の廃止、遠隔会議での代替)、10.その他 の合計10個である。テレワーク導入済み企業は平均で2.4個(従業員数300人以下)、5.1個(従業員数301人以上)の施策を実施している。

4 情報システム面の整備状況に含まれる項目は1.書類の電子化(ペーパーレス化)、2.社外からの社内システムへのアクセス(リモートアクセス)、3.会議のクラウド化(ペーパーレス会議)、4.社内の情報共有のシステム化(イントラネット、社内SNS等)、5.電子決裁、6.テレビ会議、ビデオ会議、7.社員へのPC、スマートフォン等ICT機器の支給、8.その他 の合計8個である。テレワーク導入済み企業は平均で2.2個(従業員数300人以下)、5.1個(従業員数301人以上)のシステムを導入している。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る