これまで述べてきたフレームを基に、IoTやAIが経済成長にどの程度のインパクトを与えるか推計したところ、2030年に実質GDPを132兆円押し上げる効果があることが明らかになった(図表3-5-2-8)8、9。
業種別に市場規模(生産誘発額)へのインパクトをみると、「製造業」「商業・流通」「サービス業、その他」において経済成長シナリオとベースシナリオとの差が大きくなっており、これらの業種におけるIoT化及び企業改革の進展が大きなインパクトを持つと考えられる。
1990年代から2000年代半ばまでにかけての第3次産業革命(ICT革命)の日米比較でも、ICT産業のみならずICT利用産業におけるICT利用の拡大が重要であったことが複数の先行研究で指摘されている。市場規模(生産誘発額)を、ICT産業から生じる経済波及効果とICT利活用産業から生じる経済波及効果に分解してみると、ICT利活用産業から生じる経済波及効果が大きいことがわかる。
また、推計に当たっては、一次波及効果のみならず二次波及効果も考慮している。サービスやコンテンツやソフトウェアは無形のものが多く、これらの需要が増えても物財への波及は限られているが、労働投入はなされており所得には波及する。所得への波及をみることで、サービスやコンテンツやソフトウェアのインパクトや人材が付加価値の源泉であることの側面がとらえられると考えられる。
8 実質GDPを2016年の522兆円から2030年に725兆円に増加させるには、年平均2.4%の成長率が必要であり、過去20年間の我が国のトレンドにかんがみると現実的ではないとの指摘も想定される。しかし、第3次産業革命の期間中1990年代半ばから2000年代半ばの米国においては、それ以上の経済成長を達成しており、産業革命には年平均2%以上の成長が10年程度続くほどのインパクトがあると考えられる。
9 内閣府の経済再生シナリオの2030年の値は、2025年の成長率が2030年まで同様に推移すると仮定して算出している。