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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査結果

(2)自治体・企業の事業継続のための取組

ヒアリング調査の結果に基づき、属性別にマニュアルの策定状況をみると、明文化されていなかったものも含めると、病院・介護施設では調査に回答した全ての団体、企業・自治体では8割以上の団体がマニュアルを策定していたと回答した。農漁業商工会では、マニュアルの策定は半数程度にとどまっている。なお、明文化されたマニュアルの策定状況は図表5-2-3-2(左)のとおりである。また、マニュアルは、東日本大震災を契機に見直しを行ったという意見がある一方、地震を想定したマニュアルは整備されていなかったという意見や業務に関する取り決めやマニュアルは存在しなかったという回答もあったが、東日本大震災時よりもマニュアルが策定されているという回答が増加した。

図表5-2-3-2 マニュアルの策定状況
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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業務継続に向けた対策として、自治体では半数以上の団体が基幹/業務システムの冗長化に取り組んでいるがネットワークの冗長化は約3割に留まっている。一方、企業はシステムの冗長化については対策している団体が4割程度であるがネットワークの冗長化への取組は半数以上が実施している。

自治体や企業を中心に基幹/業務システムの冗長化の重要性が認識されており対策が行われている。特に自治体においては現行では対策が行われていない場合でも、次期システムの更改の際に導入を検討しているという回答があった。ネットワークの冗長化については、過去の災害の教訓として対策をしていたという回答があった(図表5-2-3-3)。

図表5-2-3-3 基幹/業務システム及びネットワークの冗長化の状況
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)

データのバックアップの重要性に対する認識が高まっており、自治体、企業では回答したすべての団体でバックアップが行われていた。一方、クラウド活用に取り組んでいる団体は自治体では6割、企業では3割であった。企業については、多地点に拠点を持つ企業はクラウドの活用や遠隔地でのバックアップが行われていたが、経済性やセキュリティに対する懸念からクラウドは導入する予定はないとの回答もあった。

病院・介護施設では電子カルテなど病院特有の秘匿性が高く、業務継続に欠かせないデータを取り扱うため、クラウド化するためには災害時の紙媒体等を活用したバックアップ体制の検討が必要になるなど、導入に向けた障壁が指摘されている(図表5-2-3-4)。

図表5-2-3-4 データバックアップ・クラウド活用の状況
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)

このような対策や災害の影響を受けて、14日の地震では大きな被害はなかったが、16日の地震の際に業務システムが物理的に倒壊し、ネットワークが寸断されるなどの被害が発生した。一方、業務システムやネットワークの被害と比較して、データ被害は著しく小さく、サーバ等が倒壊した団体でもバックアップによりデータが復旧できたという回答もあった(図表5-2-3-5)。

図表5-2-3-5 熊本地震における被害発生状況8
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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ライフラインの復旧に向けて、クラウドシステム等を導入していた団体では効率的な情報把握ができ有用であったという回答がある一方、システムの導入にあたっては費用面が課題という回答もある。また、インターネットを介した住民からの情報の活用を検討したいというニーズが指摘されている。復旧に向けた情報発信にあたっては、複数のメディアを活用することの重要性が指摘されている。さらに、発信する情報の内容について正確かつ迅速な対応をどのように確保していくかが今後の課題として挙げられている(図表5-2-3-6)。

図表5-2-3-6 ライフラインの復旧とICTの活用
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)


8 業務システム、ネットワーク、データ等をもっている団体のみを対象として集計した。

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