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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 データ流通・利活用における課題

(1)データ利活用の状況及び課題

まず、企業のデータ利活用の状況及び課題について、「産業データ」と「パーソナルデータ」の別で整理する。

ア 産業データ8

企業におけるサービス開発・提供等における「産業データ」の活用状況としては、日本企業は「既に積極的に活用している」または「ある程度活用している」を合計してみても、他国と比べて遅れている傾向がみてとれる。4か国の中では、特に米国企業において産業データの活用度が高い(図表2-2-3-1)。

図表2-2-3-1 サービス開発・提供等のデータ活用状況(産業データ)
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)
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企業におけるデータ利活用は、サプライチェーン全体を通じたデジタル化によって、供給と需要をつなぐデータ流通が本格化するといえる。実際に今後想定される企業のデータの活用の段階についてみてみると、国によって大きく異なることが分かる(図表2-2-3-2)。我が国企業の特徴としては、「商品企画」「製品・サービス設計」が高く、逆に「生産」や「流通・販売」が低いM字型となっている。これは、当該領域では既にデータ活用がなされてきたという認識の表れとも考えられる。一方、米国企業では、「研究開発」や「商品企画」が特に高い。ドイツ企業は、「生産」「流通・販売」「アフターサービス」と、とりわけサプライチェーンの中段におけるデータ活用が想定されている。

図表2-2-3-2 今後想定されるバリューチェーンにおけるデータ活用
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)
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企業における産業データの取扱い・利活用における課題・障壁についてみてみると、調査対象の日・米・英・独の4ヵ国に共通した傾向にあるのは、データの「収集・管理に係るコスト増大」と「個人データとの線引きが不明瞭」の回答割合の高さである。例えば、スマート工場内の機械からの稼働状況や製品品質等に関するデータは、間違いなく「産業データ」に区分される。一方、コネクテッドカーからの運転状況やスマートホームの稼働状況、ビッグデータ化したヘルスケア情報など、産業データとパーソナルデータが不可分なサービスも数多く見られる。

また、日本の企業が他国と比較して突出して問題視しているのは「収集データの利活用方法の欠如、費用対効果が不明瞭」と「データを取り扱う人材の不足」である(図表2-2-3-3)。

図表2-2-3-3 産業データの取扱いや利活用の現在または今後想定される課題や障壁
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)
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これらが産業データ利活用に関し、先述のとおり他国と比べて消極的な日本企業が多い理由と考えられる9

イ パーソナルデータ

次に、企業におけるサービス開発・提供等における「パーソナルデータ」の活用状況についてみてみると、前述の「産業データ」と比べると4か国とも活用が進んでおらず、パーソナルデータの利活用がまだ過渡期にあるといえる。そのような中で、日本の企業は他国と比較して活用度がやや低い傾向がみられる。

図表2-2-3-4 サービス開発・提供等のデータ活用状況(パーソナルデータ)
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)
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企業における個人データの取扱い・利活用における課題・障壁についてみてみると、「個人データの管理に伴うインシデントリスク・社会的責任の大きさ」が最も高く、特に日本企業は他国と比べても回答率が高く、当該の課題に対してセンシティブである状況がうかがえる(図表2-2-3-5)。また、産業データの課題と同様に、日本企業と他国との差が目立つのが「データを取り扱う人材の不足」である。

図表2-2-3-5 個人データの取扱いや利活用の現在または今後想定される課題や障壁
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)
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8 「データと競争政策に関する検討会」報告書(2017年6月、公正取引委員会競争政策研究センター。以下、「検討会報告書」)では、各種のセンサーにより収集される機器、人体、土壌その他現実の「有体物」の状況に関するデータを「産業データ」としている。
http://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.files/170606data01.pdfPDF

9 検討会報告書の概要によれば、「個人データのポータビリティの促進とともに、産業データのオーナーシップに関する議論や、国や法定独占産業等のデータの利活用推進に向けた議論の深化が望ましい」としている。

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