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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 データ流通・利活用における課題

(2)国内における制度的措置の状況

我が国では、データ流通・利活用に関する制度環境について継続して検討が進められてきている。パーソナルデータについては、情報通信技術の進展により、膨大なデータの収集・分析が可能となり、個人情報保護法の制定当時には想定されなかったパーソナルデータの利活用ができるようになる中、①個人情報に該当するかどうかの判断が困難ないわゆる「グレーゾーン」の発生・拡大、②パーソナルデータを含むビッグデータの適正な利活用ができる環境整備の必要性、③事業活動がグローバル化し、国境を越えた多くのデータの流通といった3つの課題が顕在化していた。これらの課題に対応するため、個人情報保護法の改正が2015年に行われ、2017年5月に全面施行された。その後、「官民データ活用推進基本法」において、官民データ活用の推進に関する基本理念が定められ、また、オープンデータについて、同法第11条において「国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする」と定められているところであり、今後のより一層のオープン化の推進が期待されるところである。

図表2-2-1-1 データ流通・利活用に関連する法律の位置づけ
(出典)内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「官民データ活用推進戦略会議の開催について2」より総務省作成
ア 改正個人情報保護法

2015年9月、改正個人情報保護法が成立した。この改正の主なポイントとしては、個人情報の定義の明確化、匿名加工情報制度の導入、個人情報を第三者に提供する場合の確認と記録の作成の義務化、個人情報保護委員会の設置及び外国にある第三者に対する個人データの提供に関する規定の整備が挙げられる(それぞれの概要は図表2-2-1-2参照)。その中でも特に重要な項目の一つが、個人情報保護委員会の新設である。従来日本では個人情報の取扱いについて監督する権限を有する独立した専門組織が存在しなかった。一方諸外国では、EUを中心に、アジア、南米、アフリカにおいても独立した個人情報の監督機関が設置されている。一般に、これらの諸外国の例では、消費者からの苦情を直接受け付け、違法な個人情報の取扱いを是正し、場合によっては制裁金を科したりすることができる。今回の改正で、個人情報取扱事業者に対する監督権限が各分野の主務大臣から委員会に一元化され、重畳的な監督、所管省庁が不明確といった課題が解消されることとなった。

図表2-2-1-2 改正個人情報保護法の主なポイント

もう一つが、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を「匿名加工情報」と定義し、一定のルールの下で本人の同意を得ることなく目的外利用及び第三者提供を可能としたことである。これは事業者間におけるデータ取引やデータ連携を含むパーソナルデータの利活用促進を目的としたものであり、新事業や新サービスの創出、ひいては、国民生活の利便性の向上につながることが期待される。

イ 官民データ活用推進基本法

2016年12月、官民データ活用推進基本法が成立し、公布・施行された。同法は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の情報を活用することにより、急速な少子高齢化の進展への対応等の我が国が直面する課題の解決に資する環境をより一層整備することが重要であるとの認識のもと、官民データの適正かつ効果的な活用の推進に関し、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的としている。

同法では、基本理念及び基本的施策として以下のような点が規定されている。(この他、官民データ活用推進基本計画の策定や官民データ活用推進戦略本部の設置に関する事項等が規定されている。)

図表2-2-1-3 官民データ活用推進基本法に規定された基本理念及び基本的施策の概要
ウ その他

上述の官民データ活用推進基本法において、「国は、法人の代表者から委任を受けた者が専ら電子情報処理組織(当該委任を受けた者の使用に係る電子計算機とその契約の申込みその他の手続の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を用いて契約の申込みその他の手続を行うことができるよう、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。」と規定されている(第十条)。これを受けて、政府は「電子委任状」を円滑に利用できる環境を整備するための「電子委任状の普及の促進に関する法律案」を国会に提出し、2017年6月9日に成立した。

企業が電子的な契約書や証明書を発行する場合、作成する社員が代表者から書類の作成に必要な権限を委任されていることを、紙の書類と同様に電子的に証明できることが求められる。同法は、主務大臣(総務大臣及び経済産業大臣)が電子委任状の普及を促進するための基本的な指針を作成すること、電子委任状の信頼性を保障する事業者を主務大臣が認定する制度を創設すること、等を規定している。同法に基づき、信頼性の高い電子委任状が流通するようになれば、書類の電子化が進み、様々な手続がオンラインで完結するようになると期待される。



2 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第70回)官民データ活用推進戦略会議(第1回)合同会議 資料1
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