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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第5節 防災分野における情報化の推進

5 その他の取組:G空間情報の利活用推進

情報難民ゼロプロジェクト関連以外の防災対策として、G空間情報の利活用推進が挙げられる。総務省では、地理空間情報(G空間情報)のICTによる利活用を促進し、「G空間シティ構築事業」等を実施することで、先端的な防災システムを構築した。2016年度では当該システムの検証を行い、その結果を基に、2016年11月より運用が開始されたG空間情報センターと接続して利用できるよう、環境整備等を行うことで、地方公共団体等によるG空間情報を利活用した防災・減災、行政事務等の効率化を推進している。

コラムSOHMO 6 スマート・エイジング社会に向けて

近年、ICTユーザーとして存在感を増しているのが、シニア層である。2016年度通信利用動向調査によれば、60~69歳のスマートフォン保有率は33.4%で、前年の28.4%から大きく上昇した。ICTは機器やサービスの変化が速く、その利用に戸惑うシニアも多いのが現実だ。

人口の高齢化とICTの進化が同時に進展している今日、シニア層がICTを使いこなし便利で豊かな生活を送る「スマート・エイジング社会」の実現が期待される。そこで、スマートフォンやSNS等の操作方法、役に立つ使い方、安心安全のための注意点などをシニアに分かりやすく伝える、スマート・エイジングの出発点とも言える活動が広がっている。

スマホサロン

ブロードバンドスクール協会が開催している「スマホサロン」もそのひとつ。同協会は親子プログラミング体験教室など、幅広いユーザー向けの講習や啓発活動を行っているNPO法人だが、シニア向けの「スマホサロン」を開催している。毎回2時間程度のサロンでは、シニアに役立つスマートフォンの使い方をひとつ紹介し、実際に操作してその楽しさや便利さを体験することができる。同時に、安心・安全なスマホ利用の注意点や設定方法なども詳しく紹介しているのが大きな特徴だ。

〈スマホサロンの様子〉

パソコンと操作性が大きく異なるスマートフォンは、シニアにとってはハードルが多い情報通信機器でもある。スマホサロンの講師を務める三好みどりさんによれば、スマートフォンの使い方をご家族やお子さん、友達に教えてもらうという人が多いようである。しかし、「家族に同じことを聞くと面倒がられてちゃんと教えてもらえない」、「誰に聞けばいいか分からない」という方も少なからずいるという。

スマホサロンは、これらのハードルをシニアが乗り越えることを助け、ICTを上手に使いこなすスマート・エイジングへの入口を提供する取組だが、目的はそれだけではないと三好さんは強調している。

「スマホの操作手順だけでなく、ここで知り合った方同士の仲間づくりやコミュニケーションの場づくりにつなげることが大切。また、『スマホを持っているのにうまく使えない』と困っている方を優しくサポートできる人、相談相手になってあげられる人を増やしたいと願って活動しています。」

若い世代はスマートフォンのことは詳しいが、シニアが分かるようにスマホの使い方を教えるのは意外に難しい。ICT利用の経験や語彙が世代毎に異なるからだ。実は、シニアにスマホの使い方を一番上手に伝えられるのは、同じシニアのスマホユーザーなのだ。同世代の相談相手を増やすことが、シニアのスマホ利用を自然に定着させ、スマート・エイジング社会に一歩ずつ近づくきっかけとなる。

電脳ひなまつり

未来のシニアのスマートライフを彷彿とさせるイベントがある。毎年3月3日に老テク研究会が企画・運営する「電脳ひな祭り」だ。2017年には20年目を迎えた。

電脳ひな祭りは、各地で開催されているスマホサロンの参加メンバーや、シニアネットと呼ばれるシニアのネット愛好家グループがネット中継で相互につながり、ひな祭りを一緒に祝うというオンライン交流イベント。交流先は国内だけでなく、毎年海外のシニアグループとも交流し、ひな祭りという日本の文化を世界に発信してきた。

2017年のイベントでは東京の日本橋南郵便局内の特設コーナーを中心に、仙台、熊本、ボストン、ソウルとSNSのテレビ電話でつなぎ、様々な交流が行われた。また、熊本地震からの復興支援の呼びかけも行われ、シニアの社会参加という点でもスマート・エイジング社会の新しい可能性を感じさせるイベントになった。

今年の電脳ひな祭りで注目を集めたのが、昨年の情報通信白書で紹介した「まーちゃん」こと若宮正子さんが作ったスマホアプリ「hinadan(ひな壇)」である。アプリを起動すると、人形が置かれていないひな壇が画面に現れる。そこに、12体のひな人形を正しい並びで配置していくというパズルゲームである。人形の選択や移動はスワイプを使わずタップだけでできる等、スマホ操作に慣れないシニアに優しい作りになっている。でも、まーちゃんの希望はシニア以外の人たちにこのパズルを楽しんでもらうことだ。

〈「hinadan」のアプリ画面〉

「三人官女にも、五人囃子にも、正しい並びがあるんです。若い人がこのゲームをしたら、そういうことを楽しく覚えられるでしょ。海外の人にも触ってもらって、ひな祭りという日本の文化をぜひ知ってほしい。」

まーちゃんの願いはさっそく叶えられた。電脳ひなまつり当日、米ケーブルネットワーク大手のCNNでこのひな壇パズルが紹介されて世界中に情報発信された結果、世界各地からアクセスとダウンロードが殺到したのだ。このように、スマート・エイジング社会では、シニアが新しい文化やエンタテイメントを創造し、世界に発信することができる。

老テク研究会の近藤則子さんは20年前から電脳ひなまつりに携わってきた。当時からシニアのICT利用の可能性に着目し、様々な取組を展開している。シニアにとってのICT活用は、何よりもまず「生きがいづくり」につながる一方で、その様々な可能性や、解決が求められる課題についてあまり知られていないことが課題だと近藤さんは指摘する。

「高齢者の生きがいづくりにICTを活用したいです。ICTは点ではなく面で交流できるのがよいところ。しかも、世界と交流することができます。高齢者の孤独感もこれで解消できます。そのために、これからもシニアの情報格差の解消を目指して活動を続けていきます。」

スマホサロンや電脳ひな祭りの取組を見ると、シニアはICTの単なる利用者ではなく、文化や情報の発信者として大きな可能性を持っていることがよく分かる。こうしたICTユーザーとしてのシニア層の可能性を広げ、発展させる取組を草の根から政府までの幅広い協働によって進めていくことで、誰もが参加でき実り豊かなスマート・エイジング社会を作っていくことが求められている。



※「コラムSOHMO(草莽)」では、情報リテラシー向上やICT利活用推進に取り組んでいる民間団体の活動を紹介しています。

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