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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第1節 第4次産業革命がもたらす世界的な潮流

(2)オープンイノベーションの進展

第4次産業革命を社会経済において顕在化させるには、新規需要の拡大等につながるイノベーションを促進し、イノベーションによって新たな財やサービスを創出し続けることが重要と指摘されている。平成28年(2016年)版情報通信白書でもみたとおり、人口減少等の構造的課題を抱える我が国において、今後の成長力を引き上げるためには、社会経済に変化をもたらすイノベーションが活発に生み出され、イノベーション主導経済を実現していくことが肝要である。特に、前項で言及したように、ネットワークや新たな技術を介して、産業・分野横断的に需要者と供給者のビジネスのマッチングを実現するには、企業の枠を超えた新規事業開発や、高度な専門スキルを有する社外の人材の起用など、いわゆる「オープンイノベーション」の推進が期待される。

ア ベンチャー企業

イノベーションの中核的な担い手の一つとして期待されるのが、機動的な意思決定のもと迅速・大胆な挑戦が可能なベンチャー企業の存在である。IoT(Internet of Things)やビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット等の分野における技術的ブレークスルーが急速に進み、新たなビジネスや社会変革につながる第4次産業革命時代において、ベンチャーに対する期待感はかつてないほどに高まっている。日本経済団体連合会(経団連)は、ベンチャーに関する報告書「新たな基幹産業の育成に資するベンチャー企業の創出・育成に向けて」(2015年12月)において、「現在、産業界では自前主義を脱却した、本格的なオープンイノベーションの取組が進みつつある」とした上で、産業界が今後、ベンチャー企業との「産産連携」等を一層深めていく方針が表明されている。

一方、我が国の課題として、企業内部だけでなく産業全体の静的特性が顕著である。起業人材の比率を表す起業活動指数TEA(2014年)は米国13.8%、中国15.5%、英国10.6%に対して日本は3.8%と低いのが現状である。すなわち、他国と比べると、起業人材やベンチャー企業が育っていない(図表3-1-2-1)。

図表3-1-2-1 諸外国の起業人材比率と所得水準
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
「図表3-1-2-1 諸外国の起業人材比率と所得水準」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

第4次産業革命において、ものづくりやシステム、サービス等が融合したビジネスが今後拡大することが予想される中で、いわゆる大企業中心・生産機能中心の日本型産業構造は、成長性のある事業や産業創出の機会を逸してしまう可能性もある。また、第2章でみたように、今後は、企業が多様なデータや知・ノウハウ等を活用して、付加価値の高い事業領域で継続的な差別化の仕組みを如何にして実現するかが産業変革の重要な論点となる。そのためには、我が国においてもシリコンバレーをはじめ諸外国でみられるベンチャーモデルなども参考としたビジネスモデル変革が期待され、また大企業や創業年数の長い企業、また中小規模企業においても、再度「ベンチャー的」経営のマインドを取り戻し、成長意欲を醸成することが肝要である。こうした企業意識については、本章の第2節において詳細にみていくこととする。

イ 研究開発

第4次産業革命の顕在化に資するイノベーションを加速させるためには研究開発(R&D)への投資と推進が肝要となる。「IoT国際競争力指標」によれば、研究開発の状況を計測する指標としてエンジニア数に着目すると、我が国では、ICT・IoTの両市場で米国企業に次いで高く増加傾向にある(図表3-1-2-2)。

図表3-1-2-2 世界のエンジニア数シェア(左:ICT分野、右:IoT分野)
(出典)総務省「IoT国際競争力指標」
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