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第2部 基本データと政策動向
第8節 郵政行政の展開

3 信書便事業の推進

「民間事業者による信書の送達に関する法律」(平成14年法律第99号。以下「信書便法」という。)により、民間事業者も行うことが可能となった信書の送達事業には、一般信書便役務を全国提供する一般信書便事業(図表7-8-3-1)と、郵便のユニバーサルサービスの提供確保に支障がない範囲の役務を提供する特定信書便事業(図表7-8-3-2)がある。そのうち、特定信書便事業については、495者(平成29年3月末現在)が参入しており、顧客のニーズに応えて、一定のルートを巡回して各地点で信書便物を順次引き受け配達する巡回集配サービスや、比較的近い距離や限定された区域内を配達する急送サービス、お祝いやお悔やみ等のメッセージを装飾が施された台紙等と一緒に配達する電報類似サービス等が提供されている。

図表7-8-3-1 一般信書便事業
図表7-8-3-2 特定信書便事業

総務省では、信書便事業の趣旨や制度内容に関する理解を促進し、信書を適切に送っていただくため、信書の定義や信書便制度などについての説明会を総合通信局及び沖縄総合通信事務所(全国11箇所)において開催している。平成29年度は、引き続き、信書便法改正に伴う特定信書便事業の業務範囲の拡大や標準信書便約款制度の導入を中心に周知することとしている。

政策フォーカス 郵政民営化10年

本年は、郵政事業の民営化から10年となる節目の年である。民営化がどのようなもので、具体的に何が変わったのか。この10年間の取組を概括的に振り返ってみたい。

1.郵政民営化の実施と見直し

2007年10月1日、郵政民営化関連6法1に基づき、経営の自主性、創造性及び効率性を高めるとともに公正かつ自由な競争を促進し、国民の利便の向上や経済の活性化を図ることを目的として、持株会社(日本郵政株式会社)、4事業会社(郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が、日本郵政公社の業務等を承継し、郵政民営化がスタートした。

図表1 郵政民営化以降の流れ

当初の郵政民営化は、従来国または公社といった1事業体で営まれてきた経営形態を5分社化してスタートしたが、2012年4月、議員立法により郵政民営化法等が改正され2、同年10月、経営形態が4社体制(郵便局株式会社が商号を日本郵便株式会社に変更し、郵便事業株式会社の業務等を合併により承継)に再編された3。同時に、それまで郵便のみとされていたユニバーサルサービスの対象に貯金・保険の金融サービスも追加され、これらのサービスを郵便局において一体で利用できるよう義務付けられるなど、国民の利便性のさらなる向上が図られることとなった。

図表2 郵便局におけるユニバーサルサービスの内容

2.郵政事業における新たな取組

(1)郵便

日本郵便では、2010年4月より、「レターパック」の取扱いを開始した。本サービスでは、料額印面が印刷された封筒を使用し、全国一律の料金により、信書・荷物のどちらも送付することができる。また、郵便窓口のほか、郵便ポストへの投函も可能であることに加え、封筒記載の追跡番号を用いて配達状況を確認することも可能となっており、新しいサービスとして広く利用されている。

2014年からは、「郵便・物流ネットワーク再編」を推進し、区分作業拠点である地域区分郵便局を集約の上、機械処理率を高めることにより、ネットワーク全体の生産性向上に取り組んでいる。さらに、日本郵便は、首都圏を中心に、宅配ロッカー「はこぽす」を設置し、自宅外で荷物を受け取ることができるサービスを、2016年11月から本格実施しているところであるが、本年3月末からは、荷物に加えて、再配達となる一般書留や簡易書留郵便物を対象とする試行サービスを開始した。また、郵便物の減少が続いていることに加え、近年の人件費単価の上昇等を踏まえ、収支改善のため、本年6月には郵便料金等を改定した。

(2)貯金

ゆうちょ銀行には、銀行法に基づく規制に加え、郵政民営化法に基づく規制が課されているが、必要な認可等を受け、2008年には、郵便局ネットワークを通じたクレジットカードの取扱い、住宅ローンなどの個人向けローンの媒介を開始した。2016年11月には、地域金融機関と連携した地域活性化ファンドへの出資を行うなど、民営化以降様々な業務を実施してきている。また、預入限度額については、2016年4月に25年ぶりとなる見直しが行われ、1,000万円から1,300万円に引き上げられた。

そのほか、本年6月には、全国の郵便局ネットワークや広範な顧客基盤等その特色を生かした事業の展開を進めるため、「口座貸越サービス」等の新規業務の認可を受けた。

(3)保険

かんぽ生命保険には、保険業法に基づく規制に加え、郵政民営化法に基づく規制が課されているが、新規業務の認可を受け、提供する保険商品の充実を図っている。2008年には、入院特約の見直しを行ったほか、最近では、2014年4月より死亡保障を薄くし保険料を低額化した改定学資保険、2015年10月より保険料払込期間を短くし貯蓄性を高めた短期払養老保険の販売を開始した。そのほか、同社の直営店や郵便局を通じて、がん保険をはじめとする第三分野の保険商品の受託販売を行うなど、利用者のニーズに応えるべく、サービス内容の充実を図っている。

また、2016年4月、加入後4年経過した契約について限度額に算入しない額が30年ぶりに見直され、基本契約の1,000万円と合わせて最大で加入できる保険金額が1,300万円から2,000万円に引き上げられた。

(4)郵便局ネットワークの活用と新たな取組

日本郵政及び日本郵便は、郵政民営化法等により、郵便・金融のユニバーサルサービスの提供義務が課せられている4。2007年の郵政民営化当時には24,540であった局数は、本年4月末時点で24,422となっており、両社の経営努力により、約24,000局という局数を維持している。郵便局以外に金融機関がない町村も全国に24存在する5など、郵便局は引き続き地域住民に欠かせない生活インフラとなっている。

具体的に郵便局ネットワークを活用した取組の例として、一部の郵便局では、地方公共団体が発行する各種証明書の交付事務やごみ処理券・ごみ袋の販売のような受託窓口事務を取り扱っているほか、マイナンバーカードを活用した各種証明書発行に必要なキオスク端末が、試行的に一部郵便局へ設置されることとなっている。

また、日本郵政グループは、「トータル生活サポート企業」として発展していくことを目標に掲げており、日本郵便は、2013年10月から、郵便局員が定期的に高齢者宅を訪問し生活支援を行う「郵便局のみまもりサービス」を試行的に実施してきているが、今後、本格的な事業として展開することを検討している。

さらに、2016年7月には、東海地方において、MVNOを利用した格安スマートフォンのカタログによる斡旋販売が開始され、本年2月からは全都道府県に拡大された。

ほかには、新たな取組として、駅前の一等地等の有効利用を進めることで、JPタワー(東京・丸の内)や商業施設「KITTE」の建設・運営6など不動産事業にも進出し、日本各地の新たなにぎわいの創出に寄与している。

なお、日本郵便では、郵便事業を取り巻く環境が劇的に変化していく中で、2016年1月より、デジタルメッセージサービス「My Post」の提供を開始した。My Postでは、従来のメールとは異なり、メッセージを閲覧する相手を受取人が選択した相手に限定し、必要に応じ日本郵便が会員の本人確認を行うことで、情報セキュリティが確保された環境下で安心してメッセージのやりとりをすることが可能となっている。将来的には、官公庁への各種申請などに活用することも検討されており、新たな通信インフラのひとつとなる日が来るかもしれない7

3.株式上場と郵政民営化のこれから

日本郵政グループ各社は、民営化以降、経営の自由度を高めつつ、経営基盤の強化を図り、2015年11月には、グループ3社(日本郵政、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険)の株式上場が実現した。

政府が保有する日本郵政の株式については、段階的な売却が予定されている。また、日本郵政株式の売却収入については、2022年度までの売却収入を東日本大震災に係る復興財源に充てることとなっており、2013年1月に決定した復興財源フレームにおいては、4兆円程度を見込んでいるところである。政府は、上場に伴う日本郵政の株式売却により、総額約1.4兆円の収入を得た。

今後も、郵政民営化法等の規定に基づき日本郵政の株式の追加売却が進められていくなど、郵政民営化は着実に進められていくこととなる。総務省では、関係機関と連携しながら、郵便・金融のユニバーサルサービスを確保しつつ、国民の皆様が民営化のさらなる成果を実感することができるよう、引き続き民営化の推進に取り組んでいきたい。

図表3 日本郵政グループの現状


1 郵政民営化法、日本郵政株式会社法、郵便事業株式会社法、郵便局株式会社法、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の6法。

2 郵政民営化法等の一部を改正する法律の成立日である4月27日は「日本の郵便の父」と称される前島密の命日である。

3 郵便局株式会社法は日本郵便株式会社法に改められ、郵便事業株式会社法は廃止された。

4 郵政民営化法第7条の2第1項において、「日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社は、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持するものとする。」とされている。

5 北海道神恵内村、赤井川村、群馬県上野村、東京都利島村、御蔵島村、青ヶ島村、山梨県早川町、道志村、長野県平谷村、売木村、泰阜村、愛知県豊根村、京都府笠置町、奈良県野迫川村、上北山村、岡山県新庄村、西粟倉村、熊本県五木村、鹿児島県三島村、十島村、大和村、沖縄県渡嘉敷村、座間味村、竹富町の24町村。

6 ほかには、札幌三井JPビルディング、大宮JPビルディング、JPタワー名古屋、KITTE博多、JRJP博多ビルなどがある。

7 情報通信ネットワーク上での行政手続や契約の申込等について、電子委任状(事業者が当該事業者の使用人その他の関係者に代表権を与えた旨を表示する電磁的記録)の普及を促進するための法律が本年6月に成立している(電子委任状の普及の促進に関する法律)。

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