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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第1節 広がるデータ流通・利活用

1 ビッグデータの定義及び範囲

デジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータ、すなわちビッグデータを効率的に収集・共有できる環境が実現されつつある。特に、近年ビッグデータが注目されているのは、従来のICT分野におけるバーチャル(サイバー空間)なデータから、IoTの進展などを始め、新たなICTにおけるリアルなデータへと、あるいはB to CのみならずB to Bに係るデータへと爆発的に流通するデータ種別へと拡大しているためである。

図表2-1-1-1 本章のスコープ

本項ではこれらの背景を踏まえ、まずこれらのビッグデータの定義及び範囲について整理する。ビッグデータの種別に関する分類は様々な考え方があるが、本項では個人・企業・政府の3つの主体が生成しうるデータに着目し、大きく以下の4つに分類する。

1)政府:国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」

「オープンデータ」は、ビッグデータとして先行している分野であり、後述する『官民データ活用推進基本法』を踏まえ、政府や地方公共団体などが保有する公共情報について、データとしてオープン化を強力に推進することとされているものである。

2)企業:暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したデータ(「知のデジタル化」と呼ぶ)

「知のデジタル化」とは、農業やインフラ管理からビジネス等に至る産業や企業が持ちうるパーソナルデータ以外のデータとして捉えられる。今後、多様な分野・産業、あるいは身の回りに存在する人間のあらゆる知に迫る、様々なノウハウや蓄積がデジタル化されることが想定される。

3)企業:M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ(「M2Mデータ」と呼ぶ)

M2Mデータは、例えば工場等の生産現場におけるIoT機器から収集されるデータ、橋梁に設置されたIoT機器からのセンシングデータ(歪み、振動、通行車両の形式・重量など)等が挙げられる。この「M2Mデータ」と2)の「知のデジタル化」の2つについては、情報の生成及び利用の観点から、主として産業データとして位置付けられる。よって、本章では「知のデジタル化」及び「M2Mデータ」をあわせて「産業データ」と呼ぶ。今後、特にこうした産業データに係る領域においては、我が国の競争力を発揮でき、産業力の強化が期待されるところである。

4)個人:個人の属性に係る「パーソナルデータ」

「パーソナルデータ」は、個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された個人情報を含む。また、後述する『改正個人情報保護法』においてビッグデータの適正な利活用に資する環境整備のために「匿名加工情報」の制度が設けられたことを踏まえ、特定の個人を識別できないように加工された人流情報、商品情報等も含まれる。そのため、本章では、「個人情報」とは法律で明確に定義されている情報を指し、「パーソナルデータ」とは、個人情報に加え、個人情報との境界が曖昧なものを含む、個人と関係性が見出される広範囲の情報を指すものとする。

これらのデータに係る流通・利活用の観点からみると、例えばオープンデータは国や地方自治体が保有するデータをオープン化して、個人や企業等広く一般へ提供される。M2Mデータについては、企業が直接的に収集する他、個人が有する様々な機器(ICTデバイス、自動車、自宅等)から計測されるデータを収集し、付加価値をつけて財やサービスに変換し、企業(B to B)、個人(B to C / B to B to C)、政府(B to G)へ提供される。パーソナルデータについては、個人から企業へ提供され、企業は個人に対してB to Cあるいは企業間を経由したB to B to C等のビジネス形態を通じて財・サービス等が提供される。また、M2Mデータや匿名加工されたパーソナルデータについては、企業間のデータ連携やデータ関連ビジネス(B to B)の基盤となる。すなわち、こうした様々なデータを組み合わせることで、従来は想定し得なかった新たな課題解決のためのソリューションの実現につなげること、またそのソリューションの実現において異なる領域のプレーヤーが連携したイノベーションの実現が期待される。

このように、データ流通・利活用の促進において重要と考えられるのは多量かつ多様なデータが生成されることだけではなく、これらのデータをその提供者・利用者・受益者となる個人・企業・政府等の間で円滑かつ適正に循環させていくことで、イノベーションを加速させ、経済成長への貢献を高めていくことである。本章では、その循環が社会経済にもたらす便益やそれを実現するための手段や環境またデータ流通・利活用促進の妨げとなる壁等の課題について、政府と企業・個人間、個人と企業間といった関係性に着目しながら整理する(図表2-1-1-2)。

図表2-1-1-2 データ主導社会におけるデータの位置付け・定義
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)

これまでも様々なデータが共有・利活用されて社会発展の基礎となってきた。しかし、現在、膨大な計算処理能力を備えていない機器であっても、クラウド上で計算してデータの処理を行うことが可能となり、またAIの発展も相まって、計算環境が格段に向上しかつ低コストで利用できるような世界へ進化している。以降では、上述した4つのデータ種別がビッグデータ化されAI等を通じて処理されることで得られるネットワークとデータが創造する新たな価値について展望する。

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