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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査結果

(3)通信・放送の途絶状況

通信・放送についても土砂崩れや商用電源の停電による停波が発生した。固定通信網については、阿蘇市や南阿蘇村を中心とする阿蘇郡周辺や熊本市、益城町などで土砂崩れ等により最大で約2,100回線が被災した。携帯電話基地局についても、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社合計で熊本県内の約10%にあたる400局が停波した1。停波の原因については、約75%が商用電源の停電となっており、重要な基地局2の停電による停波は2局、複数ルート化等の対策により、伝送路断により停波した重要な基地局は4局に留まっている。また、停電、伝送路断により停波した重要な基地局についても、隣接局によるカバーや移動基地局車の配備等により、実際に通信の疎通に支障を与えた時間は限定的であり、4月18日午前には役所エリアが復旧、翌19日午後には避難所エリアが復旧、27日午後にはほぼ完全に復旧した(図表5-2-1-3)。

図表5-2-1-3 停波基地局数の時間推移(※)
(出典)総務省「電気通信事業者の平成28年熊本地震への対応状況」(2016年7月29日)

また、放送関係についても非常用発電機の故障やアンテナ破損により停波が発生した。地上放送(テレビ、AM、FM)関係についても熊本県内を中心に、停波が発生したが、いずれも72時間以内に復旧しており、アンテナ破損により最も停波時間が長かった熊本放送蘇陽北局(AM)においても、62時間20分の停波に留まっている(図表5-2-1-4)。

図表5-2-1-4 地上放送(テレビ、AM、FM)関係における被害状況
非常災害対策本部「平成28年(2016年)熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」(平成29年4月13日18時00分現在)により作成

このように、熊本地震は局地的な地震であったことから被害は比較的限定的になっている。また、ライフラインや通信インフラに対する被害についても、事業者による災害対策や応急復旧対策が進められていたことから、東日本大震災と比較すると被害規模は小規模にとどまっている。そのことが、ICTインフラの復旧状況についての両災害の比較を行った図表5-2-1-2から分かる。

東日本大震災では津波による設備の損壊や停電等により、固定系では約190万回線が被災し、移動系では約2万9千局が停波するなど甚大な被害が発生した。また、長時間にわたり輻輳が続くなど、被災者の情報行動を著しく制限することになった。一方、熊本地震においては、固定系では1/100、移動系では1/70程度の被害に留まっている。同様に、放送についても東日本大震災の120か所の停波に対し、熊本地震では5か所にとどまっており、被害の規模に加え、東日本大震災の教訓により電気通信事業者・放送局が対策を講じた結果、サービスの継続や早期復旧に大きく寄与した。

以上、熊本地震では、比較的発災直後から通信手段の利用制限は小規模に留まり、通信・放送ネットワークで一時的な障害等はあったものの、概ね平常時と同等の情報行動が可能な環境であった。また、熊本地震におけるICT利用は、災害の規模やライフラインの復旧の早さ、ICTインフラの稼働、ICTの普及環境(端末・サービス等)など各要素の連鎖により、概ね良好な結果であったと考えられる。



1 熊本県における4月16日15時時点の通信途絶状況につき、下記リンク先参照
総務省「電気通信事業者の平成28年熊本地震への対応状況」P2
http://www.soumu.go.jp/main_content/000432337.pdfPDF

2 都道府県庁や市町村の役所のエリアをカバーする基地局

3 一部地域で難視聴が発生したが、高性能アンテナの設置や共聴施設の整備等により対策を行った。

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