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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第3節 広がる国際的な議論

(3)「情報の自由な流通」をめぐる国際連携の動向

ア G7香川・高松会合及び伊勢志摩サミットを契機とした国際連携

2017年9月に予定されているイタリア・トリノでのG7情報通信・産業大臣会合では、第4次産業革命や情報の自由な流通をめぐる包括的なテーマについて議論が行われる予定である。情報(データ)の利活用は近年ますます重要な課題になっており、国際的な議論も活発化している。この議論にG7として大きな方向性を示したのが、2016年4月に開催された「G7香川・高松情報通信大臣会合」(以下、「香川・高松会合」)であった。

香川・高松会合ではIoTやAIなどの新たなICTが普及し、すべてのヒトとモノがネットワークにつながるデジタル連結世界(digitally connected world)の実現に向けた情報通信政策につき議論を行い、情報の自由な流通の推進とコネクティビティの強化によるイノベーションの推進等をうたった「デジタル連結世界憲章」および「G7情報通信大臣共同宣言8」を採択した。香川・高松会合はG7としては21年ぶりとなる情報通信大臣会合であり、ICT分野における国際連携の重要性を改めて確認する場となった9。また、大臣会合と並行して、産学官の有識者による「G7 ICTマルチステークホルダー会議」が開催され、その結果が大臣会合に報告された。これらを契機として、G7、さらに2017年以降はG20においても情報通信、デジタル化をテーマとする閣僚会合が継続的に開催されることが見込まれている。

引き続き2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言10においても、香川・高松会合の成果を踏まえ、情報の自由な流通の支持といった文言が盛り込まれた。

以下では、2016年後半以降の国際連携の進展を紹介する。

図表2-3-2-2 G7香川・高松会合以降の主な流れ
イ 香川・高松会合後の動き

香川・高松会合の共同宣言では、同宣言の実施を確保するため、「将来のG7情報通信大臣会合において、議長国の裁量によってフォローアップ」を行うこととされている。この趣旨を踏まえ、G7を始めとする様々な枠組みでICT分野に関する会合が開催される際に、共同宣言の内容を踏まえた議論が行われている。

我が国は香川・高松会合の議長国として、同会合後も、他のG7参加国と協力して、G7以外の主要な国際会議の成果文書にもその考え方が反映されるよう努めている。同年9月、中国・杭州で開催されたG20杭州サミットでは、首脳宣言にデジタル経済について「情報の流通を通じた成長環境の整備」との記述がなされた。さらに首脳宣言の別添文書となっている「デジタル経済発展及び協調イニシアティブ」においては、情報の自由な流通やデジタルディバイド解消など、G7の共同宣言等においてとりまとめられた政策方針が、新興国を含むG20の場でも共通理解となり、明記された。加えて、同年開催されたOECDやAPECの会合においても、参加国の構成に応じた微妙な差異を残しつつも、情報の自由な流通などについての合意が盛り込まれている。

また、我が国は、共同宣言の実現のために各国の取組をとりまとめた同宣言の付属文書「G7協調行動集」に基づき、「ISAC連携のための国際ワークショップ」(2016.10、東京)、「日EU高齢社会フォーラム」(2016.12、ブリュッセル、日本・欧州委員会共催)、「IGF(Internet Governance Forum)G7に関するオープンフォーラム」(2016.12、メキシコ)、「AIネットワーク社会推進フォーラム・国際シンポジウム」(2017.3、東京)、「質の高いICTインフラに関する国際シンポジウム」(2017.3、東京)などをG7各国の参加を得つつ開催し、宣言の内容の具体化に取り組むとともに、2016年12月にはG7フォローアップ会合を開催し、各国の取組状況をレビューし、議長国としての報告書「フォローアップ報告書」をとりまとめ、公表している(2017年3月公表)。

さらに、2017年3月、先端技術を活用したB to Bソリューションの世界最大級の展示会であるCeBIT2017がドイツのハノーバーで開催された。2017年の同展示会は日本がパートナー国となっており、日独首脳のほか、総務省からは太田総務大臣補佐官等が参加し、この機会を活用してドイツ及びEUとの会談が行われた。ドイツとの間ではIoT/インダストリー4.0に関するサイバーセキュリティ、国際標準化、研究開発等での協力の枠組を定めた「ハノーバー宣言」が署名され、EUとの間では、①高水準のデータ保護の推進及びデータの自由な流通の促進、②相互学習、優良事例共有、協力促進のための、データ・エコノミーに関する対話の強化、③データ・エコノミーのインパクトを測定するツールの共同開発に関する協力等をうたった共同プレスステートメントが発出された。

ウ G20デジタル大臣会合

2017年4月に、この年G20の議長国となったドイツが、G20として初の情報通信分野の閣僚会合であるデジタル大臣会合を開催した。G20デジタル大臣会合は、2017年4月6・7日にドイツ・デュッセルドルフで開催され、日本からは松村祥史経済産業副大臣、金子めぐみ総務大臣政務官が出席した。大臣会合において金子政務官から、「情報の自由な流通の促進は、経済成長のみならず、人々の福祉の増進や社会の革新をもたらすものであり、世界の発展の基礎であること、デジタル化の恩恵の最大化のためには、デジタルディバイドの解消が重要であり、インフラの整備やスキルの向上が不可欠であること、我が国は質の高いインフラ整備を通じて世界のデジタルディバイド解消に貢献すること」を表明した。

大臣会合の結果、デジタル化によりもたらされる機会を活用するためにG20各国が協力して取り組むべき事項について、大臣宣言がまとめられた。大臣宣言では、主に以下の点の重要性を確認している。

(1)グローバルなデジタル化 − 包摂的成長と雇用のためのポテンシャルの活用

包摂的な成長のためにデジタルディバイドの解消を目指し、2020年までに新たに15億人をインターネットに接続する目標を再確認。法制度環境の整備により、民間によるインフラ投資を促進するとともに、革新的なビジネスモデルや新たな通信技術の普及を支援し、成長を後押しする。

(2)成長のための製造のデジタル化

知識・ベストプラクティスの共有を通じて製造のデジタル化を促進するとともに、オープンで透明な標準を支持する。

(3)デジタル世界における信頼の強化

情報の自由な流通を促進するとともに、プライバシー、個人情報保護を尊重し、セキュリティの強化を推進する。オンライン上の消費者保護の問題に取り組む。

さらに、本会合の機会に金子政務官はドイツ、英国及びEUとバイ会談を行い、各国・機関との間で情報の自由な流通のさらなる推進等について合意した。

図表2-3-2-3 G20デジタル大臣会合で発言する金子総務大臣政務官
エ 今後の取組

イタリアがG7議長を務める2017年9月のG7情報通信・産業大臣会合では、香川・高松会合からドイツでのG20デジタル大臣会合に至るこれまでの各会合の成果を踏まえ、イノベーションによる経済成長の促進をめざし、デジタル世界の包摂的発展と開放性・安全性についての議論が行われる。個別論点としては、データ流通の一層の促進や、5G、AI、IoT標準化、サイバーセキュリティ、知的財産権といった広範な課題が取り上げられるとともに、合意内容を着実に履行するための議論が行われる。その後も関連する議論は継続して行われると見込まれる。また、香川・高松会合に引き続き、マルチステークホルダー会議も開催される予定である。

総務省としても各種会合や2国間の会談を通じ、ICT分野における国際連携を深め、引き続きリーダーシップを発揮していくよう取り組むこととしている。



8 G7情報通信大臣会合:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin06_02000083.html別ウィンドウで開きます

9 G7香川・高松情報通信大臣会合について、平成28年(2016年)版情報通信白書P123又は下記URL参照
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc123400.html別ウィンドウで開きます

10 G7伊勢志摩サミット首脳宣言(仮訳):http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000160267.pdfPDF

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