総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > アライアンス・企業買収の進展
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第1節 第4次産業革命がもたらす世界的な潮流

(3)アライアンス・企業買収の進展

ドイツのインダストリー4.0戦略では、製造業における「垂直連携」と「水平連携」の両方を強く意識している。「垂直連携」とは、日本の製造業のサプライチェーンなどで従来採用してきた考え方である。他方、「水平連携」とは、各企業の枠を越えて必要な時に必要な分、必要なリソースを、全ての企業から調達しているような状態である。すなわち、「インダストリー4.0」では、ICTにより垂直・水平連携が進展し、産業全体が効率化され、国全体が一つの「工場」のようになることを目指している。この例が象徴するように、第4次産業革命の社会では、企業間で情報や関連技術を互いに共有することが重要と指摘されており、多様な連携によってそれを実現することが予想される。また、分野や業態の垣根を超えた異業種間の競争が進展することから、企業における破壊的イノベーションを生み出そうとする取組として企業買収という手段も加速している。ここでは、この2つの潮流についてみてみる。

ア アライアンスの進展

垂直及び水平方向の連携は、製造業に限らず、様々な産業において進展している。「同一技術分野」及び「技術の組合せ」の観点から、いわゆる仲間作りや、技術標準化やオープン化を通じたデファクトの集団形成によって、エコシステムが形成され、市場が加速することが期待されている。こうした取組においては、必ずしも特定の標準・仕様を普及させるのではなく、産業毎の標準を相互運用できるようにすることを目的としている。

また、第1項において紹介した我が国の「IoT推進コンソーシアム」が推進するように、国内における業界横断的な連携の他、国際的な連携も進展している。国際的な連携については、民間企業・団体の動きに留まらず、国間の対話においても進められており、日米欧をはじめとする主要国での二国間連携や多国間の場も活用されている。こうした場では、国際標準化、人材育成、研究開発、規制改革など様々な分野における協力関係を模索している。

こうしたアライアンスの動きは、既存の産業構造や競争の構図が大きく変化する第4次産業革命の実現に向け、各主体間(企業、産業、国等)で、協調する領域(共通の進め方、あるいは共通にすべき進め方)と、競争する領域(独自の技術やノウハウ等によって競争すべき領域)の境界線を再定義し、明確にしていくための取組といえよう。

イ 企業買収(M&A)の進展

業界や企業間のアライアンスと並ぶ手段としてM&A等企業買収が挙げられる。新興国を中心に世界経済の停滞感が指摘される中、大手企業が低成長の打破を狙って買収攻勢を強めていることも背景にある。超大型案件の公表が相次いだ世界のM&Aは、リーマンショック前の2007年に記録した過去最高の取引金額を更新している。イノベーション創出・技術革新を目的とするM&Aが進展している。

ここで世界のM&A金額の国別シェアをICT分野とIoT分野を対象にみてみると、ICT分野では、米国企業によるM&Aが半分以上を占めており、中国、日本、ドイツと続いている。一方、IoT分野では、ドイツが最も高く、米国、韓国、日本と続いている。このように、新しい領域であるIoT分野では米国に限らず、多くの国でM&Aが活発化している様子が窺える。

図表3-1-2-3 世界のM&A金額の推移
(出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)
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図表3-1-2-4 2015年の世界のM&A金額シェア(左:ICT分野、右:IoT分野)
(出典)総務省「IoT国際競争力指標」
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