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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2章 ビッグデータ利活用元年の到来

第2章 ビッグデータ利活用元年の到来

近年、ビッグデータという言葉に代表される電子的に処理可能なデータの飛躍的増大や、コンピュータの処理能力の向上、人工知能等の技術革新が進んでいる。その根幹を担うのが「データ」であり、データの活用がこれまで見過ごされてきた生産性向上や新たな需要の掘り起こしに繋がり、経済成長やイノベーションの促進に資することが期待される。

我が国において、その環境は整いつつある。2016年末から2017年にかけて、官民データ活用推進基本法の制定や改正個人情報保護法の全面施行などといった法整備が進められている。官民データ活用推進基本法は、データの適正かつ効果的な活用の推進に関し、基本理念を定め、行政手続や民間取引のオンライン化等を目指すこととしている。改正個人情報保護法では、個人情報を特定の個人を識別できないように加工した情報を匿名加工情報と新たに定義し、個人情報の適正な流通のための環境を整備している。こういった法整備により、データの保護とのバランスを取りながら活用を促進する動きが加速することが見込まれる。もとよりデータ利活用のニーズは高かったが、こうした環境整備によって予見可能性が高まり、今後一気にデータ利活用が進み、本年は「ビッグデータ利活用元年」となる可能性がある。

世界各国においても、G7香川・高松情報通信大臣会合以降、G7、G20等のあらゆる機会を捉えてデータの自由な流通の重要性について確認されてきており、国際的な認識共有が進展しつつある。一方で、自国からのデータの移転を制限しようとする所謂データローカライゼーションの動きも各国・地域で見られ、国際展開する企業の制約要因になるとの懸念もある。データが国境を越えて流通する動きがますます加速する中、世界的にデータの活用と保護とのバランスを図る動きが今後も継続すると考えられる。

もう一点懸念されるのは、自分のパーソナルデータを流通させられることに対する国民の不安や抵抗感である。そのことは過去の情報通信白書のアンケート調査において明らかとなっており、同じアンケート調査で実施した国際比較からも日本の利用者がパーソナルデータの提供を許容する度合いが低いという結果となっている。こういった国民の意識は、データの活用に対する企業の意欲を萎縮させ、ひいては今後の経済活動の抑制に繋がりかねない。

本章では、こうした認識の下、データの流通・利活用に向けた課題を含む現状の整理を行い、さらに国民・企業向けアンケート調査等を通じて、国民の不安の払拭及び企業の意識改革を促しながら今後の利活用の道筋について展望する。

第1節ではデータ流通・利活用の前提として、対象とするデータの種類や、利活用モデルの整理等を行う。第2節では安心・安全なデータ流通のための環境整備状況とともに、企業関係者と個人への調査によるそれぞれの意識及びギャップについて取り上げる。第3節ではデータの流通や保護に関する国際的な議論や各国・地域における対応について、現状と課題を整理する。第4節では、これらを踏まえてデータ流通・利活用に関する将来を展望するとともに、提言をまとめる。

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