総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > 未来ICT基盤技術
第2部 基本データと政策動向
第6節 ICT研究開発の推進

(2)未来ICT基盤技術

ア 超高周波ICT技術に関する研究開発

総務省及びNICTでは、ミリ波、テラヘルツ波等の未開拓の超高周波帯を用いて、新しい超高速無線通信方式や、センシングシステムの実現を目指した基盤技術の研究開発を実施している。平成28年度は、超高周波領域での通信・計測システムにおいて基準信号を精度よく生成するために必要な高安定光源の研究開発において重要となる、非常に鋭い共振特性を持った共振器を実現するための低損失導波路の微細加工技術を開発し、共鳴波長で10倍以上の消光比を達成した。さらに、平成27年度までに開発した300GHz帯の無線送受信機を用いて映像コンテンツのタッチダウンロード実験を実施し、短距離高速通信でのテラヘルツ無線の有用性を示した。

イ 量子ICT技術に関する研究開発

NICTでは、計算機では解読不可能な量子暗号技術や、微弱な光信号から情報を取り出す量子信号処理に基づく量子通信技術の研究開発を実施している。平成28年度は、量子暗号技術と現代暗号の秘密分散技術の融合技術を開発し、計算機では解読不可能な秘密分散ストレージネットワークの実証に世界で初めて成功した。量子通信技術については、光空間通信テストベッドの空間伝送特性の計測・評価を実施するとともに、その結果に基づく実証実験系の設計を実施した(図表7-6-6-1)。

図表7-6-6-1 量子通信技術と量子暗号技術のイメージ
ウ ナノICT技術に関する研究開発

NICTでは、ナノメートルサイズの微細構造技術と新規材料により、光変調・スイッチングデバイスや光子検出器等の性能を向上させる研究開発を実施している。平成28年度は、小型超高速光変調器の実用化に向けて、原子層堆積酸化膜被覆により化学安定性を向上する技術、並びに、Oバンド(通信波長1.3µm帯)において従来比7.3倍の変調性能と105℃で連続使用可能な高耐熱性を有する実用性能の高い電気光学(EO)ポリマーの開発に成功した。また、超伝導単一光子検出器(SSPD)の広波長帯域化に向けて、様々な波長の光に対して高い光吸収効率を実現するための光キャビティ構造の最適化手法を確立するとともに、光子数識別、空間識別、高速動作を可能とする多ピクセル化に向けて、64ピクセルSSPDアレイ用に設計した極低温信号処理回路の実動作環境での動作を確認した。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る