総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > 電気通信サービスに関する個人情報・利用者情報等の適正な取扱い
第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

3 電気通信サービスに関する個人情報・利用者情報等の適正な取扱い

スマートフォンに蓄積される様々な利用者情報については、アプリケーション(以下「アプリ」という。)が収集・利用しており、収集した情報が第三者へ提供されている場合もある一方、利用者にとっては、どのような情報が収集され、また利用されているのかが分かりにくいといった不安や懸念が生じている。

このような中、総務省は、プライバシーポリシーの普及と、運用面・技術面から第三者が当該アプリを検証する仕組み(以下「第三者検証」という。)を推進するにあたっての諸課題について検討し、平成26年度から平成28年度において第三者検証システム(図表7-2-3-1)の構築に向けた実証実験を実施した。

図表7-2-3-1 スマートフォン アプリケーションのプライバシーに関する第三者検証の仕組み

これらの結果を踏まえ、総務省は事業者に対してプライバシーポリシーの正確な記載を一層求めていくとともに、利用者に対しても、自らのプライバシーを守る第一歩として、アプリを利用する際にはプライバシーポリシーの記載内容等を確認するよう周知・啓発を図っていく方針である。

政策フォーカス 電気通信サービスを安心して利用するために〜消費者保護ルール実施状況のモニタリング〜

1.はじめに

スマートフォンの普及や、固定インターネット接続サービスに関する様々なセット割引料金の販売など、電気通信サービスの高度化・複雑化が続いている。多くの利用者に利便性の向上や選択肢の増加がもたらされる一方で、利用者と事業者の間の情報格差や事業者の不適切な勧誘等により、苦情等やトラブルも生じている。電気通信サービスを安心して利用できる環境の整備は、競争環境整備と同時進行で取り組むべき課題であり、ここでは近年の消費者保護施策について取り上げる。

2.消費者保護ルールの充実・強化とモニタリング枠組の策定

法令上の消費者保護ルールの整備は、2004年に遡る。電気通信事業法において、事業の休廃止に係る周知、提供条件の説明及び苦情等の処理の義務を電気通信事業者に課す規定が設けられ、提供条件の説明の義務(説明義務)については電気通信事業者に加え契約締結の媒介等を行う代理店も対象とされることとなった。電気通信事業分野では、参入規制や料金・約款の事前規制が原則として撤廃されており、行政が個々のサービスの提供条件の内容について法令上の規制を課すことは基本的にできない仕組となったことが消費者保護ルール導入の1つの背景として挙げられる。

それから約10年を経た2016年5月、消費者保護ルールの更なる充実・強化を目的の1つとした電気通信事業法等の一部を改正する法律(平成27年法律第26号)が施行された1。この改正法の成立・施行はそれ自体が消費者保護の充実に大きく資するものであるが、しかしながら、これにより整備された新しいルールの実効性を確保するには、内閣府消費者委員会など関係の有識者からの指摘もあり、改正法の施行以後の取組も重要と考えられた。消費者保護ルールの多くの部分は、一定の行為規制を定めそれに対する違反等の行為について行政上の措置を事後的に講じる仕組(事後規制)となっており、このような制度は整備されるだけではなく適切に実行されてこそ実際の効果を生じるものであるからである。

そのため、違反等が疑われる事案について個別に調査・対処を行うことに加えて、電気通信事業者・代理店によるルールの実施状況を検証するとともに苦情等の収集・分析を行うなど、制度実施状況のモニタリングを積極的に行う必要があると考えられた。

そこで総務省では、改正法令の施行と時期を一にして、「電気通信事業の利用者保護規律に関する監督の基本方針」を策定し、モニタリングの基本的な方法についてあらかじめ明らかにするとともに、2016年9月には有識者や関係の事業者団体が参加する「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」を立ち上げた(図表1)。

図表1 消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合(概要)

3.モニタリング定期会合の始動

総務省では、まず、基本的な法令遵守状況や説明の分かりやすさ等を確認する書面質問及びヒアリングから成る書面等調査から着手することとし、総務省のほか各地の消費生活センターや独立行政法人国民生活センターに寄せられる苦情相談の傾向分析も行った。2017年2月開催の第2回モニタリング定期会合におけるその中間報告の内容は、次のとおりである2

(1)書面等調査の主な結果

今回の調査の結果、説明時や契約時に交付する書面の記載内容に法令に必ずしも適合しない事例が一部の事業者で判明したほか、MNOサービスについては5項目の運用面の改善・検討事項と3項目の優良事例を、FTTHサービスについては5項目の改善・検討事項と6項目の優良事例を取り上げて、事業者及び事業者団体と問題意識を共有し、検討を依頼したところである。特に、MNOサービスとFTTHサービスに共通する改善・検討事項として、料金プラン・オプション等の金額を個々に説明するだけでなく、総支払額(合計金額)の見込みも明示し、これを記載した説明書面等を交付する運用や、解約時に生じる費用を一括して明示する運用を基本とするよう検討すべきとする項目を設けており、料金等の説明不足が疑われる苦情等が多いという結果とも対応している。

またFTTHサービスでは、「転用」という簡易な仕組みにより、電話等で取得した番号を乗換え先事業者に伝えるだけで、電話番号等を維持したまま原則として工事なしにNTT東日本又はNTT西日本の光回線サービスから他の事業者による光回線サービスに切り替えることができることもあり、勧誘されて事業者を乗り換えることに関するトラブルが多発している。これを受け電話勧誘に関する改善・検討事項では、契約先がNTT東西から変更になることの説明徹底、利用者に対して電話(口頭)での申込み又は承諾となる旨3の説明徹底、転用で乗り換えた後に元サービスに復帰を求めた場合の予想される不利益(電話番号変更等)に関する適切な説明等を盛り込んでいる。

(2)苦情等傾向分析の中間結果

苦情等の総数をみると、2016年4月から12月の総数は前年同時期から6.8%の減少となったが、個々の月の件数をみると必ずしも前年比で減少していない月もある。サービス別ではインターネット通信サービス(固定系)が7.5%減少したのに対し移動通信サービスは1.5%の減少となっている。より詳細に7〜11月の苦情等のサービス別比率を分析すると、通信サービスに係る苦情等の中では、光回線(FTTH)サービスの苦情等が最も大きな比率(38.2%)を占め、次いで主要な携帯電話(MNO)サービスが高い比率(29.1%)を占めている。MVNOサービスの比率は、7.4%と推測された(図表2)。

図表2 サービス種類別の苦情相談件数

苦情等の多いFTTHサービスは、電話勧誘や訪問販売を発生源とするもので、60%超を占めるのが特徴である。他方、主要なMNOサービスでは、店舗等を発生源とするものが60%超を占めた。(図表3)。

図表3 苦情等の発生チャネル

FTTHサービスに関する苦情の発生要因は、「事業者の信用度への不安」や、「契約先事業者についての説明不足」が上位に挙がっている。また、契約初期段階の契約解除が大半を占めていることから、電話勧誘等では、相手先事業者に関する理解が不十分な状態で苦情相談に至っている傾向が窺われた。

一方、MNOサービスについては、「料金・割引に関する説明の不足」や「その他誤案内・案内不足一般」(身に覚えのない料金請求、オプションサービスについての説明の不足)が多くなっているが、光回線の電話勧誘等と異なり、契約の締結そのものについて疑義を呈する内容は多数派ではないという結果となった。

苦情内容の代表例は以下のとおりである。

ア FTTHサービス

(ア)事業者の信用度への不安

  • 大手通信事業者を名乗る代理店から不審な勧誘電話を受けたが、大丈夫か。
  • 勧められて契約したが、ネット上でよくない評判を見るので、解約したい。

(イ)契約先事業者についての説明不足

  • 大手通信会社のサービスかと思い契約したが、そうではなかった。

イ MNOサービス

(ア)通信料金・割引の説明不足

  • 勧められてタブレットを購入したが通信料金が数千円高くなることに気付いた。解約したい。

(イ)その他誤案内・案内不足一般

  • 身に覚えのない料金請求があったため問い合わせをしたが、十分な回答がなかった。
  • 勧められてオプションを付けたが、料金や内容について十分説明がなかった。

4.今後の取組

今回のモニタリングにより、携帯電話サービス及び光回線サービスともに改正法令施行後も事業者等が取り組むべき課題があることが明らかになった。総務省では、引き続き、モニタリング等の取組を進め4、消費者保護の充実を図っていくこととしている。

また、特に光回線サービスの電話勧誘など事業者側からの勧誘があったときに適切に対処を行うという観点から、総務省では、引き続き消費者からの相談に応じるとともに、パンフレット・チラシ等の資料を用意するなどして5、周知にも努めている。



1 改正後の法令では、従前の義務に加えて、①説明義務の充実、②書面交付義務、③不実告知等・勧誘行為の禁止、④媒介等業務受託者に対する指導等が盛り込まれている。5月21日施行。
平成28(2016)年版情報通信白書第6章第2節(P.348)参照

2 詳細は会議資料(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ict_anshin/02kiban08_04000269.html別ウィンドウで開きます)を参照。

3 電話(口頭)で利用者から契約の申込み又は承諾を受ける際は、そもそも一般的に、契約内容が適切に説明され、かつ、利用者の申込み又は承諾の意思が明確に表示されていることが前提になると考えられるものである。

4 2016年度のモニタリングでは、本稿のほか、利用者に扮した調査員が販売現場において具体的な説明の状況を調査するいわゆる覆面調査などを行い、2017年6月、同調査により特に説明の実施状況が悪い点と判明した事項を含む2016年度の評価・総括が取りまとめられた。併せて、総務省からは、各社に改善を求める指導も実施したところである。

5 電気通信消費者情報コーナー(総務省ウェブサイト)(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/s-jyoho.html別ウィンドウで開きます
●消費者トラブル等に関するご相談・情報提供の窓口(総務省)
 総務省電気通信消費者相談センター 電話:03-5253-5900(各地の総合通信局等でも受け付けています)
 トラブル等の情報提供ページ(総務省ウェブサイト):https://telecom-user-report.soumu.go.jp/webapp/form/19436_otcb_1/index.do別ウィンドウで開きます
●電気通信事業者協会でも相談を受け付けています(電話:03-4555-4124)。
 また、具体的な契約トラブルのご相談は、「消費者ホットライン」188や最寄りの消費生活センター等へお願いします。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る