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第1部 ICTの進化を振り返る
第1節 通信自由化30年―制度、サービス、市場の変遷

(4)通信政策の動向

ア 相互接続ルールの構築

1985年当時の事業法においては、円滑な接続を確保するための接続協定の認可制度などが創設されたものの、それは、事業者間の協議を前提としたものであったため、当事者間の合意が得られずに接続協議が円滑に進まない事例が生じてきた22。こうして主に電話市場で公正有効競争という考え方の下、相互接続ルールの協定の認可整備などが進められることとなった。

1990年には、「日本電信電話株式会社法附則第2条に基づき講ずる措置」(以下この節において「政府措置」という)に即して、接続の円滑化、ネットワークのオープン性の確保等が措置され、NCCのネットワークとNTTの地域網との接続に関する条件の改善が図られ、1993年には、NTTと長距離系NCC3社の間の接続料金の設定等を内容とする接続協定が定められ、また、長距離系NCC3社によりエンドエンド料金23が導入された。

これらの競争条件の整備により市場のルール作りが進められ、長距離通信市場における競争が生じ、料金は低廉化していった。

イ その他の競争促進政策

専用線の自由化に向けた国内における音声系の専用線と公衆網の接続については、1995年に専用線の片側に公衆回線を接続する、いわゆる「公-専」片端接続を可能とした。また、国際VANサービスにおける基本音声サービスの提供については、1995年に公衆網と接続のない形態での国際専用回線による基本音声サービスの提供を行うことを可能とした。

ウ NTTの在り方を巡る議論

当時の制度整備の中で大きな論点の一つは、NTTの在り方であった。1990年には、NTT法附則第2条に基づき民営化後5年でのNTTの在り方について議論が行われ、その結果、政府措置が決定された24

郵政省では、1991年度以降、1995年度のNTTの在り方の検討まで、政府措置の具体的推進を図るとともに、毎年度の推進状況について取りまとめ、広く国民・利用者への周知に努めた。

たとえば、1992年にNTTの移動体通信業務を分離し、新会社としてエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(現NTTドコモ)が営業を開始した。また、ネットワークのオープン性を確保するためのNTTと第二種電気通信事業者による「オープンネットワーク協議会」の設立や、内部相互補助の防止のための会計規則の改定などが行われた。

エ 国際通商問題

この時期には、社会・経済の急激な国際化に伴い、外国との間で通信分野の通商問題が取り上げられるようになった。1985年から行われた日米MOSS協議(市場志向型分野別協議)に基づいて通信機器及び通信サービスの広い分野で規制緩和が行われていたが、1989年、USTR(米国通商代表部)は、大幅な貿易赤字などを背景として、包括貿易法第1377条に基づき、通信MOSS協議の合意事項のレビューを行った結果、自動車電話と第三者無線の分野で、我が国に合意違反ありと認定した。

日米両国間で協議を重ねた結果、米国による制裁措置は回避され、自動車電話については、IDOがNTT方式により割り当て済み周波数の一部を使用して、北米方式(モトローラ方式)の自動車電話サービスを提供できるよう措置することなどで合意した。



22 たとえば、フレームリレーサービスの提供にあたり、事業者間の接続協議が不調に終わり、1994年に日本テレコムよりNTT地域網との接続を求めて事業法に基づく郵政大臣の接続協定の締結命令の申立てが行われたが、その後NTTとの間で接続協議が調い、申立ては取り下げられた。
 また、VPNサービスについても、同サービスの提供にあたり、事業者間の接続協議は不調に終わり、1994年にDDI、日本テレコム、日本高速通信より郵政大臣の接続協定の締結命令の申立てが行われ、郵政大臣が接続協定を締結すべきことを命じた。

23 従来、長距離系NCCを利用する場合、利用者が支払う料金は、長距離系NCCが設定する中継部分の料金とNTTが設定する足回り部分の料金の合計であったが、1993年からは、長距離系NCCが発信者から着信者までを通して(エンドエンドで)料金設定を行うエンドエンド料金が導入された。これは、従来に比べ、①POI(NTTと長距離系NCCの接続点)からの距離に係らず通話距離が同じであれば同一料金となるため、利用者に分かりやすい料金となる、②長距離系NCCにとって自由な料金設定が可能となる、という利点を有していた。

24 同措置の内容は、たとえば、以下のとおりである。
 ①公正有効競争を促進するため、NTTが長距離通信事業部、地域別事業部制を導入・徹底してその収支状況を開示するよう措置するとともに、移動体通信業務を一両年内を目途にNTTから分離して完全民営化する。また、接続の円滑化、ネットワークのオープン性の確保、内部相互補助の防止、情報流用の防止、デジタル化の前倒し等についても所要の措置を講ずる。
 ②NTTにおいて徹底した合理化案を自主的に作成し、これを公にし実行することとする。
 ③①及び②の措置の結果を踏まえ、NTTの在り方について1995年度に検討を行い、結論を得る。
 ④NTTの研究開発の推進及び標準化活動への寄与について、一層積極的な対応を促進するとともに、我が国の通信の発展を図るための総合的研究開発体制の確立について検討する。

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