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第2部 ICT が拓く未来社会
第1節 地域の企業とICT

(3)ICTによる地域経済活性化の可能性

それでは、以上のような地域経済の現状を好転させ、「地方創生」を実現していく上で、ICTはどのような役割を果たし得るであろうか。少なくとも以下の4つの可能性が考えられる。

ア ICTによる「雇用の質」の向上

先にみたように、地方における人口流出の背景には、「雇用の質」の問題があった。「雇用の質」は賃金のみによって決まるものではないが、仕事にふさわしい十分な賃金が支払われることが良質な雇用の条件であることは疑いない。一般に、賃金水準を中長期的に規定する重要な要素は企業の労働生産性であるため、地域企業の労働生産性をいかにして高めるかが「雇用の質」を向上させる上でのポイントとなる。この点ICTは、企業活動の効率性向上(プロセス・イノベーション)の最も一般的なツールであり、地域企業の労働生産性向上に大いに貢献し得ると考えられる。

また中長期的にみた場合、ICTの普及と浸透は、定型的な職種を代替し(雇用代替効果)、非定型的な職種を創出することで(雇用創出効果)、経済全体の「雇用の質」を高めていくと考えられる。

イ ICTによる地域企業の商圏拡大

地方の人口減少は、消費市場の縮小を通じて地域経済を需要面から減退させている。この点ICTは、地域外へのモノやサービスの販売を容易にし、地域外の需要を地域経済に取り込むことを可能にする。地域にある優れた資源を活かした商品やサービスを地域外の人々に提供し、地域が「外貨」を獲得するため、ICTは重要な役割を果たし得る。

ウ ICTによる交流人口の拡大

地域経済の活性化のためには、「雇用の質」の向上によって定住人口の減少に歯止めをかけるとともに、国内外からの観光客や短期居住者の増加を通じて交流人口の拡大を図ることが有効と考えられる。交流人口の拡大は、地域経済の需要を増大させるとともに、地域外の人が地域の魅力に直接触れる機会をもたらし、定住人口回復のきっかけともなり得る。この点ICTは、地域と地域外との情報の交流を活発化し、地域の魅力を広く発信することで、交流人口の拡大に貢献する。

エ ICTによる新たなワークスタイルの実現

ICTはテレワーク、サテライトオフィス、クラウドソーシング等の地理的制約に囚われない新しい働き方を可能にする。こうした新しい働き方は、若者が地元に住み続けながら大都市圏の企業に勤務したり、大都市圏の人々が現在の仕事を維持しつつ地方に住んだりすることを可能にし、地方の定住人口拡大に貢献する。


次項以降では、これら4つの可能性を念頭に置きつつ、具体的に検証していく。

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