総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > スマートフォンアプリを使った市民参加型のインフラ管理(千葉県千葉市「ちばレポ」)
第2部 ICT が拓く未来社会
第3節 地域の課題とICT

(2)スマートフォンアプリを使った市民参加型のインフラ管理(千葉県千葉市「ちばレポ」)

高度経済成長期以降に集中的に整備された道路等の社会インフラが今後一斉に老朽化するため、国民の安全・安心を確保しつつ、いかにしてインフラの維持管理や更新に必要なトータルコストを縮減・平準化していくかが課題となっている10。インフラの大部分は地方公共団体が管理しているが、近年の緊縮財政や行政改革の中で、インフラ管理の中心的役割を担う地方公共団体の土木関係職員数は、2004年から2012年までに約18%減少しており11、限られた人員で効率的にインフラ維持管理を実現することが課題となっている。そうした中、ICTを活用した市民参加型のインフラ管理への注目が高まっている。

その先駆的事例の一つである千葉市の「ちばレポ」(ちば市民協働レポート)は、「公共施設に落書きがある」、「道路が傷んでいる」、「公園のベンチが壊れている」、「ごみが不法投棄されている」といった地域インフラの不具合についての情報(地域の課題)を、発見した市民が市の担当者や他の市民と共有する仕組みである。

市民は自分のスマートフォンで現場の写真や動画を撮り、専用アプリを使って市の専用サイトに投稿する。その際、スマートフォンのGPS機能によって位置情報が添付されるので、市の担当者はどこでその不具合が発生しているかを地図上で迅速に知ることができる。市民の投稿に対しては、市の担当者が修繕や撤去等の対応を行うほか、場合によっては市民が自ら対応して解決を図る場合もある。投稿された地域の課題は専用サイトで公開され、投稿者や他の市民は不具合の事実とそれへの対応状況(受付済、対応中、対応済)を知ることができる(図表3-3-2-4)。

図表3-3-2-4 ちばレポの取組
(出典)千葉市提供資料

千葉市では2013年7月から11月まで実証実験を実施し、その成果を踏まえて2014年9月から「ちばレポ」を正式にスタートした。2015年4月末までに市民からの通報は1,095件投稿され、そのうち、道路に関する投稿が約71%、公園に関する投稿が約17%。ごみに関する投稿が約5%であった。「ちばレポ」の参加登録者は2015年4月末現在、2,887名である。

これまでは、市民が公共施設の不具合等を発見しても、市の担当者が把握するのみで、広く市民に共有されることはなかった。また、市では多数の通報に優先順位をつけて順次対応していたが、市民にはその様子が見えないため、「自分の通報になかなか対応してくれない」との不満を感じることもあった。「ちばレポ」によって、市が現在どのような問題にどのように対応しているかが市民に見えるようになった。その結果、市と市民とが協力して地域のインフラ管理に取り組む意識が醸成されたと千葉市では評価している。

「ちばレポ」はまた、市行政の効率化にもつながっている。これまで市では、市民からの不具合の通報等を各区域の各部署が受け付け、Excelの台帳等でそれぞれ管理していたが、「ちばレポ」の導入に合わせてこれらの市民からの通報等もクラウド上の統合CRM12で、ちばレポの投稿と合わせ一元的に管理するようになった。各不具合への対応状況等も併せて記録・共有することで、道路管理業務等の効率化が実現したと千葉市では評価している。



10 平成26年12月27日閣議決定『まち・ひと・しごと創生総合戦略について』

11 国土交通省「国土交通白書2014」38p

12 Customer Relationship Managementの略。ICTを利用して顧客との長期的な関係を築く手法やそのツールのこと。顧客データベースを基に、営業から保守サービス、問合せやクレームへの対応等、顧客とのやり取りを個々に管理することにより顧客満足度を高めることができる。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る