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第1部 ICTの進化を振り返る
第1節 通信自由化30年―制度、サービス、市場の変遷

2 第2期―インターネットと携帯電話の時代 

(1)インターネットとIT革命

ア インターネットの形成と発展

インターネットは、当初は専ら研究・教育機関で利用されており25、商用利用が可能になったのは1990年代に入ってからである。日本では、1993年に商用利用が開始されて以降、急速に利用者を増やしていった。利用が急拡大した背景としては、当時日本ではパソコン通信が既に広く普及しており、そのユーザーを取り込む形でインターネットが普及していったことや、パソコン向けOS市場で高いシェアを占めていたWindowsの使い勝手がWindows95の登場によって向上し、パソコンが一般ユーザーにとって身近なものになったことなどが挙げられる。更に、これまで通話サービスを中心に従量料金で提供されてきた通信料金の分野で、データ通信向けの定額サービスが導入されたことも、インターネットの急速な普及に貢献した。

Netscape NavigatorやInternet Explorer等のウェブブラウザの普及によって、文字ベースの情報だけでなく写真等の画像もインターネットを通して閲覧できるようになった26。同時に、企業や個人が自分のWebページを開設し、世界中に情報発信を行うことが可能になった。Webページは、企業の情報発信媒体として早くからその利用価値が認識され、急速に利用が広まっていった。そうした中で、通信サービスの役割も質的に変化していった。すなわち、単に情報を伝達するだけでなく、ユーザーの求める形で情報を蓄積し、加工することも、通信サービスの一環として提供されるようになった。

前述したIIJ等の先駆的取組に続く形で、1996年にNTTがインターネット接続サービスであるOCNを開始し、翌1997年度に長距離系NCC3社と地域系NCC4社(TTNet、大阪メディアポート、中部テレコミュニケーション、四国情報通信ネットワーク)が、それぞれインターネット接続サービスを開始した。

また、1996年に武蔵野三鷹ケーブルテレビ(株)がケーブルテレビ回線を利用したインターネット接続サービスを開始し、その後他のケーブルテレビ事業者も続々とインターネット接続サービスを提供するようになった。

こうしてインターネットは、消費者はもちろん企業にも急速に広がっていき、1998年には、商用利用開始からわずか5年で世帯普及率10%を超えた(図表1-1-2-1)。これは、従来の主要な情報通信メディアと比較しても急速な家庭への普及であった。特に2001年から2002年にかけては、世帯普及率が34.0%(2000年末)から60.5%(2001年末)、81.4%(2002年末)に急増した時期である。

図表1-1-2-1 我が国における主な情報通信メディアの世帯普及率10%達成までの所要期間
(出典)平成11年版通信白書
「図表1-1-2-1 我が国における主な情報通信メディアの世帯普及率10%達成までの所要期間」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

インターネットへの接続は、当初、電話やISDN回線を利用したダイヤルアップ接続が主体であった。電話よりも伝送速度の速いISDNの利用は1990年代後半から2000年代初めにかけて急増したが、その後、CATVインターネットやDSL(デジタル加入者回線:Digital Subscriber Line)27が登場すると、伝送速度の大幅に早いこれらの回線手段がブロードバンドサービスの普及をリードしていくこととなった(図表1-1-2-2図表1-1-2-3)。

図表1-1-2-2 ISDN回線数の推移
(出典)電気通信事業者協会年報
図表1-1-2-3 インターネット接続サービスの利用者数
(出典)総務省
「図表1-1-2-3 インターネット接続サービスの利用者数」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

DSLについては2000年、加入光ファイバーについては2001年に加入者回線等のアンバンドルや相互接続の技術的条件に関するルール整備が行われた。その結果、2001年から低廉な価格でDSLを提供する新規事業者が登場し、ブロードバンド料金の大幅な低廉化が進んだ。

また、1998年の経済対策閣僚会議において、「光ファイバ網全国整備の2005年への前倒しに向けて、民間事業者の活力を生かし、できるだけ早期に実現できるよう努力する。」旨の決定がなされるなど、更なるブロードバンド化への動きが強力に推進され始めた。光ファイバーを活用したFTTH(Fiber To The Home)サービスについては、2001年、世界に先駆けて一般利用者向けのサービスが開始された28

そして、2001年の「e-Japan戦略」に基づき、「少なくとも高速インターネットアクセス網に3,000万世帯、超高速インターネットアクセス網に1,000万世帯が常時接続可能な環境を整備する」という「利用可能環境整備」の目標が設定され、2004年には、高速インターネットアクセス網への加入可能世帯数はDSLで3,800万世帯、ケーブルインターネットで2,300万世帯、超高速インターネットアクセス網であるFTTHで1,806万世帯となり、当該目標が達成された。

イ 「IT革命」と新ビジネスの出現

インターネット上に新しいビジネスが登場し、情報通信産業の大きな構造転換が始まったのもこの時期である。第1期は、電話市場と専用線市場という2つの市場が通信市場の中心であり、それらを巡ってNTTとNCCがサービス面や料金面での競争を行ってきた。これに対し、第2期以降インターネットが普及すると、データ通信需要が急激に拡大し、これに応えるISPという新たな通信事業者が増加した。また、情報の蓄積等を担うデータセンター業も登場した。今では多くの人が利用している電子商取引の楽天やAmazonが参入したのもこの時期である。インターネット上でのコンテンツ配信も新たなビジネスとして登場した。更に、インターネット上での認証・決済や、セキュリティの確保等の様々な関連サービスも新規ビジネスとして提供されるようになった。このように、インターネット登場後の情報通信産業は、ネットワークのオープン性に起因して様々な形での新規参入が可能となり、多種多様で複雑なものとなっていった。



25 我が国におけるインターネットの起源は、1984年に開始されたJUNET(Japan University/Unix NETwork)である。これは東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学間で構築された研究用ネットワークであった。

26 ブラウザの発明によりテキストから画像、動画まで扱えるようになったことは、通信技術の大容量化を推進することにつながった。

27 我が国におけるDSLサービスの提供は1999年に開始された。

28 平成13年版情報通信白書は、「ブロードバンド元年」を宣言した。

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