総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > ボーン・グローバル企業の台頭とICT
第2部 ICTが拓く未来社会
第4節 ICT化の進展がもたらす経済構造の変化

(1)ボーン・グローバル企業の台頭とICT

ア ボーン・グローバル企業の定義

近年、インターネットの普及やクラウドファンディングによる新たな資金調達の基盤形成により、起業して間もなく海外展開やグローバルビジネスを狙うといった企業の国際化が進展している。このような形態を意識した企業は「ボーン・グローバル」などと呼ばれ、企業の国際化に係る研究等においても注目されてきている。

従来の企業の国際化のプロセスについては、一定期間の国内事業の後、国際貿易(輸出)や技術供与の段階を経て、最後に海外直接投資(現地生産や現地での研究開発等)に向かうという漸進的・連続的・段階的な国際化の展開プロセスが主要な考え方であった。たとえば、メーカーの場合、輸出や技術供与の期間を経た後、対外的直接投資によって現地生産や研究開発等の活動を展開するものである。このような、国内で事業を行った後次第に海外に拡大していくプロセスに対して、ボーン・グローバル企業を表す顕著な特徴として、起業時からすぐさま海外市場に参入したり、あるいは同時に多数の諸外国に参入したり、また経験が限定的である中で合弁会社を形成するなど、創業間もなく国際的な活動を展開することが挙げられる。

ボーン・グローバル企業は、ベンチャー・中小企業、ハイテク系スタートアップ、そしていわゆるグローバル企業のそれぞれの要素を併せ持つ形態といえる。ベンチャー・中小企業とは、事業が小規模であることと大企業と比べると資源が限定的である点で類似性がある。また、先端的な技術をシーズとする革新的な新規創業企業である点でハイテク系スタートアップと類似している。さらに、グローバル市場で互いに競合している点でグローバル企業と類似している。ボーン・グローバル企業は、これらの要素が組み合わさることで、起業後まもなく輸出、技術供与、現地生産やR&Dといった国際的事業活動を開始でき、伝統的な国際化プロセスでは蓄積できなかった持続可能な競争優位性を有するものと考えられる(図表5-4-2-1)。

図表5-4-2-1 ボーン・グローバル企業の位置づけ
(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)
イ ボーン・グローバルにおけるICTの役割

ボーン・グローバル企業の出現の理由については、第一に、市場状況のグローバル化、世界市場経済の統合の進展、インターネットをはじめとするICTによるビジネスのグローバル化の進展といった外的要因が挙げられる。第二に、希少な経営資源の有効利用、国際的な経験が豊かな人材の増加や起業家精神(アントレプレナー)の台頭といった内的要因が挙げられる。

こうした内的要因と相まって、ボーン・グローバル企業の成長において、ICTが重要な役割を果たしていると考えられる。たとえば、ボーン・グローバル企業は、全社的なコミュニケーション及びマーケティング・コミニュケーションはもとより、販売取引、商品受注から入金管理までの一連の作業(サプライチェーンマネジメント)や顧客管理(カスタマーリレーションマネジメント)においてインターネットを積極的に活用している。その他、国内外のパートナー、供給業者、顧客、代理店、流通業者、開発パートナーなどとの関係構築・支援においてインターネットを活用している。

ウ ボーン・グローバル企業の事例

ボーン・グローバル企業は1990年代以降、急激にその数を増大させてきた。ICT分野においても、ソフトウェア等の標準化やインターネットの普及などを背景に、グローバル市場を相手に展開する企業が国内外で立ち上がっている(図表5-4-2-2)。

図表5-4-2-2 ICT分野におけるボーン・グローバル企業の例
(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)
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