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第2部 ICTが拓く未来社会
第1節 ICT端末の新形態

2 コネクテッドカー・オートノマスカー

(1)コネクテッドカー

ア 注目されている背景

コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のことであり、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。具体的には、事故時に自動的に緊急通報を行うシステムや、走行実績に応じて保険料が変動するテレマティクス保険、盗難時に車両の位置を追跡するシステム等が実用化されつつある。自動車にはこれまでも、カーナビやETC車載器などの通信機器が搭載されてきたが、近時コネクテッドカーへの注目が高まっている背景としては、以下の各点を挙げることができる(図表4-1-2-1)。

図表4-1-2-1 コネクテッドカーへの注目の背景

第1に、無線通信の高速・大容量化により、リアルタイムかつ容量の大きなデータを送受信可能になったことである。

第2に、車載情報通信端末の低廉化や同等アプリケーションを搭載したスマートフォン等による代替化が進んでいることである。

第3に、クラウド・コンピューティングの普及により、データの迅速かつ大容量な生成・流通・蓄積・分析・活用が可能となり、ビッグデータの流通が大幅に増加してきたことである。

以下では、実現が見込まれる具体的なサービスの一部をみていくことにする。

イ コネクテッドカーの実現するサービス
(ア)緊急通報システム

自動車事故によって失われる人命を減らすことを目的として、自動車事故発生時に自動で警察や消防などの緊急対応機関に緊急通報を行うシステムの導入が各国で進みつつある。欧州では、緊急通報システム「eCall」システムの普及が進んでおり、2018年4月からはeCallシステムの新型車への搭載が義務化される5図表4-1-2-2)。また、ロシアでも、eCallと類似した緊急通報システム「ERA-GLONASS」の導入が進められており、2017年1月から、ロシアで販売されるすべての新型車への搭載が義務化される6

図表4-1-2-2 eCallのシステム概念
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
(イ)テレマティクス保険

欧米の保険会社は、利用者の運転中の行動(ブレーキの回数や加減速動作など)や時間帯を収集し、利用者の運転行動・振る舞い(How)に基づき運転の危険度を評価し、保険料を策定するPHYD(Pay How You Drive)を提供している。たとえば、Progressive、State Farm、National General Insuranceといった米国企業は、走行距離、速度、時間帯等を記録し、運転行動・振る舞いに応じて保険料を算定している。一方、CISやInsure the boxといった英国企業は、上記に加えてGPSを活用した位置情報等を収集することで、制限速度超過、危険の多い道路の走行割合などを含めて保険料を策定している(図表4-1-2-3)。

図表4-1-2-3 走行実績を考慮した保険を提供している会社と収集情報例
(出典)日本自動車研究所「ITS車載システムの標準化に関する調査研究報告書」及び各社公表資料から作成

日本においてもテレマティクス保険が本格的に普及しつつある。あいおいニッセイ同和損害保険では、トヨタ自動車と連携し、車載テレマティクス端末から得られた走行距離に連動して保険料を算出するPAYD(Pay As You Drive)型のテレマティクス保険「つながる自動車保険」を2015年4月以降の契約から提供している。「つながる自動車保険」では、実際の走行距離を1km単位で保険料に反映する。運転の時間帯、走行距離・燃費等の情報も取得・分析しているが、PHYD型の保険とは異なり、保険料には反映させず、安全運転に関するアドバイスサービスの提供を行うにとどめている。ソニー損保では、2015年3月以降の契約を対象に、急発進・急ブレーキの発生状況とそのリスクにより保険料を算出するPHYD型のテレマティクス保険「やさしい運転キャッシュバック型」の提供を開始している。

(ウ)盗難車両追跡システム

盗難車両追跡システムとは、車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができるシステムである。GMが1996年より提供しているテレマティクスシステム「OnStar」には盗難車両の追跡機能が搭載されており、2007年には遠隔操作により緩やかに速度減速を行う機能が追加されている。また、国内ではトヨタ自動車が2002年より提供しているテレマティクスサービス「G-BOOK」に盗難車両抑止システムを搭載しており、契約者の要望に基づきトヨタスマートセンターで盗難車両の位置を追跡することができる。その他、一部の車両には通信でエンジンの始動をできなくするリモートイモビライザーを搭載する等、車両盗難抑止に力を入れている。これらの機能は、2014年夏に一新された新世代テレマティクスサービス「T-Connect」にも継承している(図表4-1-2-4)。

図表4-1-2-4 トヨタ自動車 マイカーセキュリティのイメージ
(出典)トヨタ自動車ホームページ
ウ コネクテッドカーの市場動向

富士経済によると、2014年のコネクテッドカーの世界市場は、1,300万台以上となり、スマートフォンを含むモバイル端末連携型のコネクテッドカーを中心に今後、更に拡大すると予想されている。2025年は新車のコネクテッドカーと既存車のコネクテッド化を合わせて、2013年比6倍弱の6,500万台を超えると予測されている。

図表4-1-2-5 コネクテッドカーの世界市場推移
(出典)富士経済「コネクテッドカー関連市場の現状とテレマティクス戦略2014」
エ コネクテッドカーの利用意向

以上のように、各社からコネクテッドカーの様々なサービスが提供され始めており、市場として大きな成長が見込まれているが、実際に消費者からはどの程度利用が期待されているのだろうか。

今回実施したアンケート調査でコネクテッドカーの利用意向を尋ねたところ、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人の割合は、過半数の52.5%に達した7。コネクテッドカーに対する期待が高いことがわかる(図表4-1-2-6)。

図表4-1-2-6 コネクテッドカーの利用意向
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
「図表4-1-2-6 コネクテッドカーの利用意向」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


5 欧州委員会ホームページ「eCall in all new cars from April 2018」 https://ec.europa.eu/digital-agenda/en/news/ecall-all-new-cars-april-2018別ウィンドウで開きます

6 GLONASS UNIONホームページ「Equipping vehicles with ERA-GLONASS terminals」 http://glonassunion.ru/web/en/era-glonass/equipment別ウィンドウで開きます

7 「自動車免許を現在持っておらず、将来持つ予定もない」と答えた人を集計対象から除いている。

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