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第2部 ICTが拓く未来社会
第1節 ICT端末の新形態

(5)パートナーロボットのニーズと課題

以上のように、パートナーロボットは市場として将来的に大きな成長が見込まれており、国内各社によって萌芽的な製品の開発や導入が進みつつあるが、消費者はどのような利用意向を持っているのだろうか。以下では、パートナーロボットの活用が期待される代表的分野である介護、コミュニケーション、子育ての3分野について、アンケート調査を通じて消費者の利用意向等を確認した。

ア 介護用ロボットの利用意向(介護する側として)

パートナーロボット活用への期待が高まっている代表的な分野の一つとして、介護分野がある。介護分野でのロボット技術の活用については、既に一部で試行的取組が始まっている15。ロボット技術が日々進歩している中、介護用ロボットについての一般的な定義を与えることは難しいが、今回のアンケート調査では将来的な技術進歩を考慮してその可能性を幅広く想定し、介護用ロボットを「排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換)、入浴(入浴時の付き添いや身体の洗浄)、食事(食事の準備、食事の介助)、移乗(車いすからベッド・便器・浴槽・椅子等への移乗動作の介助)といった場面で介護者を助け、介護する側の負担軽減につなげたり、要介護者の健康状態をインターネット経由で介護サービス施設等に通知する機能を持ったロボット」と定義して、その利用意向を尋ねた。

まず、回答者が自分の親族等を「介護する側」になったと想定した場合の介護用ロボットの利用意向を聞いたところ、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人は63.1%と6割を超えた(図表4-1-3-5)。

図表4-1-3-5 介護用ロボット(介護する側として)の利用意向
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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介護用ロボットの介護する側としての利用意向を年代別に見ると、年代が高くなるほど利用意向が高い傾向にあり、50代で67.0%、60代以上では68.6%に達する。自分自身や親の介護が現実のものになっている中高齢層にとって期待が高いことがうかがわれる(図表4-1-3-6)。

図表4-1-3-6 介護用ロボット(介護する側として)の利用意向(年代別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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介護用ロボットの介護する側としての利用意向を同居人に65歳以上高齢者がいるか否かに分けて見ると、高齢者がいる世帯では「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人が65.8%となり、高齢者がいない世帯(同61.8%)に比べてやや多い(図表4-1-3-7)。

図表4-1-3-7 介護用ロボット(介護する側として)の利用意向(同居人に65歳以上高齢者がいるか否か別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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イ 介護用ロボットの利用意向(介護される側として)

次に、回答者自身が誰かに「介護される側」になったと想定した場合の介護用ロボットの利用意向を聞いたところ、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人は63.3%に達し、「介護する側」としての場合とほぼ同様の利用意向が認められた(図表4-1-3-8)。

図表4-1-3-8 介護用ロボット(介護される側として)の利用意向
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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介護用ロボットの介護される側としての利用意向を年代別に見ると、年代が高くなるほど利用意向が高い傾向にあり、50代で68.3%、60代以上では69.5%に達する。自身の介護が視野に入ってくる中高齢層にとって期待が高いことがうかがわれる(図表4-1-3-9)。

図表4-1-3-9 介護用ロボット(介護される側として)の利用意向(年代別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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介護用ロボットの介護される側としての利用意向を同居人に65歳以上高齢者がいるか否かに分けて見ると、高齢者がいる世帯では「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人が66.6%となり、高齢者がいない世帯(同61.9%)に比べてやや多い(図表4-1-3-10)。

図表4-1-3-10 介護用ロボット(介護される側として)の利用意向(同居人に65歳以上高齢者がいるか否か別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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ウ コミュニケーションロボットの利用意向

人工知能の進歩により、会話をしたり、ダンス・体操を一緒にしたり、クイズ・ゲームの相手をしたりするコミュニケーションロボットの開発が進められている。ロボットとのコミュニケーションによる脳への刺激が認知症予防につながったり、ちょっとした運動を行うことで筋肉の萎縮や衰えを予防して寝たきり防止につながったりする効果が期待されている。また、ペットを飼える環境にない人にとって、その代わりのような存在になる可能性もある。今回のアンケート調査で、このようなコミュニケーションロボットへの利用意向を尋ねた。

その結果、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人は46.3%と、介護用ロボットに比べると低いものの、半数近くとなった(図表4-1-3-11)。

図表4-1-3-11 コミュニケーションロボットの利用意向
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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コミュニケーションロボットの利用意向について年代別に見ると、年代が高くなるほど利用意向が高い傾向にあり、50代で51.3%、60代以上では54.5%が「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答している。自身の身体の衰えや認知症の懸念が感じられる中高齢層の間で、コミュニケーションロボットへの期待が高いことがうかがわれる(図表4-1-3-12)。

図表4-1-3-12 コミュニケーションロボットの利用意向(年代別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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エ 子育て支援ロボットの利用意向

将来的にはロボットを子育て支援に活用することも想定されている16。ロボットが子どもの話し相手や遊び相手になり、一時的に子どもの面倒を見てくれることで、子育て負担の軽減につながると期待されている。また、ロボットが常時子どもの様子をモニタリングすることで、子どもの安全にもつながると期待されている。さらに、子どもの発熱の検知など、健康状態のチェック機能を備えることも想定されている。今回のアンケート調査で、このような子育て支援ロボットについて利用意向を尋ねた。

図表4-1-3-13 子育て支援ロボットの利用意向
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人は約3割にとどまり、介護用ロボットやコミュニケーションロボットに比べると、現段階での利用意向は低かった。

子育て支援ロボットの利用意向を年代別に見ると、一般的な幼少児の子育て世代である20代以下と30代では、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人が33〜34%となっており、他の世代(同28〜29%)よりもやや高くなっている。しかし、これらの子育て世代であっても、「あまり利用したくない」あるいは「利用したくない」と回答した人が「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人を上回っている(図表4-1-3-14)。

図表4-1-3-14 子育て支援ロボットの利用意向(年代別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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子育て支援ロボットの利用意向を未就学児が同居しているか否かで分けて見ると、「未就学児の同居家族あり」の場合、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と回答した人の割合が34.1%となっており、「未就学児の同居家族なし」の場合(同30.2%)よりは高い。しかし、「未就学児の同居家族あり」の場合であっても、「あまり利用したくない」あるいは「利用したくない」と回答した人が52.3%と半数を上回っており、利用に対して抵抗感が強いことがうかがえる(図表4-1-3-15)。

図表4-1-3-15 子育て支援ロボットの利用意向(未就学児有無別)
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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オ 子育て支援ロボットを利用したくない理由

子育て支援ロボットについて「利用したくない」あるいは「あまり利用したくない」と回答した人を対象に、利用したくない理由を尋ねた。その結果は、「ロボットが子供の面倒を見ることに心理的な抵抗があるから」が5割超で最も多く、続いて「安全性が気になるから」(44.5%)、「子供の成長への影響が科学的に明らかにながっていないから」(31.9%)、「価格が高いと思うから」(31.9%)の順となった(図表4-1-3-16)。子育てロボットの利用に対する慎重な姿勢の背景には、子育てに対する価値観が影響していることがうかがえる。

図表4-1-3-16 子育て支援ロボットを利用したくない理由
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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カ 望ましいロボットの形態

介護用ロボット、コミュニケーションロボット、子育て支援ロボットについて、それぞれどのような形態のものが望ましいかを尋ねた。各ロボットに共通して最も多い回答は「形態にはこだわらない」で、平均して3割程度であった。

用途別にみると、介護用ロボットでは、「用途に合わせた機械的形態」も32.3%と高くなった。逆に、「動物型(犬や猫など)」は8.8%と低かった。

コミュニケーションロボットでは、「人型(人間そっくり)」、「人型(人間そっくりではない)」、「動物型(犬や猫など)」、「用途に合わせた機械的形態」が大きな差がなく2割台であった。

子育て支援ロボットもコミュニケーションロボットとほぼ同様に「人型(人間そっくり)」、「人型(人間そっくりではない)」、「用途に合わせた機械的形態」は回答率に差がなく2割台であったが、「動物型(犬や猫など)」は15.1%と他の形態よりも低くなった(図表4-1-3-17)。

図表4-1-3-17 望ましいロボットの形態
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への
人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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キ 将来ロボットの活躍が期待される分野

これまで取り上げていない分野も含めて、将来的にどのような分野でロボットの活用が期待できるかを尋ねた。

「ロボットの活躍が期待できる」と回答した人(「期待できる」あるいは「どちらかと言えば期待できる」と回答した人)の割合が高かった分野は、順に、「防災(例:人の立入りが危険な地帯で活動できるレスキューロボット)」、「介護(例:介護用ロボット)」、「医療・健康(例:手術ロボット)」であった。逆に、「ロボットの活躍が期待できる」と回答した人の割合が低かった分野は「子育て(例:子育て支援ロボット)」であった(図表4-1-3-18)。「エ 子育て支援ロボットを利用したくない理由」でみたように、子育てに対する価値観や安全性への懸念から、ロボットに子育てを委ねることには抵抗感が強いことがうかがわれる。

図表4-1-3-18 将来ロボットの活躍が期待される分野
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
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15 たとえば、神奈川県では介護ロボット推進センターを設置し、介護事業所等に介護用ロボットを試験導入して現場での評価や福祉・医療関係者の見学会を実施する等の取組を行っている。

16 たとえば、一般社団法人電子情報技術産業協会「コンシューマエレクトロニクス業界が描く10年後の社会」では「2024年のホームイメージ」の中で家庭用ロボットが子育て支援を行うことが想定されている。

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