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第2部 ICT が拓く未来社会
第3節 地域の課題とICT

(2)観光地での無料Wi-Fiの整備(福岡県福岡市)

観光庁が2011年10月に日本への外国人旅行客を対象に実施したアンケート調査によると、「日本への旅行中に困ったことは何か」という質問に対する回答で最も多かったのは、「無料公衆無線LAN環境」であった。外国人旅行客の無料Wi-Fi4へのニーズがいかに高いかがわかる(図表3-3-1-4)。

図表3-3-1-4 訪日外国人観光客が旅行中に困ったこと
(出典)平成23年度国土交通省観光庁調べ

無料Wi-Fiを整備することで、訪日観光客がスマートフォンやタブレットを使って滞在中に情報収集を円滑に行えるようになれば、満足度の向上やリピート率の上昇につながる。また、訪日観光客が観光地で撮影した写真や動画をその場でSNSへアップロードし、友人や知人と楽しい思い出を共有する動きが広がれば、更なる訪日観光客の増加にもつながる。

このような訪日観光客の無料Wi-Fiへの高いニーズに応えるため、総務省では、2014年6月に発表した「訪日外国人のICT利用環境整備に向けたアクションプラン〜SAQ2 JAPAN Project〜」に基づき、無料Wi-Fiの整備促進と利用の円滑化を図っている5。また自治体でも無料Wi-Fiの整備促進等に向けた様々な取組が進められている。

その一つである福岡市では、誰もが無料で使える公衆無線LANサービスである「Fukuoka City Wi-Fi」を2012年4月から提供している。これにより、訪日観光客などが簡単にインターネットを利用できる環境を実現するとともに、福岡市の観光情報や市政情報を発信し、市の魅力や旬な情報を域内の人々に幅広く伝えることを目指している。さらにFukuoka City Wi-Fiは、災害時における緊急情報の発信や、通信回線のバックアップのためにも活用されることが想定されている。

2015年5月時点で、Fukuoka City Wi-Fiの提供範囲は、市営地下鉄全駅、福岡空港、博多港国際ターミナル、JR博多駅、西鉄福岡(天神)駅、福岡タワー、福岡市博物館等の全81拠点、アクセスポイント370か所となっており、自治体主体の公衆無線LANサービスとしては国内最大級である(図表3-3-1-5)。

図表3-3-1-5 福岡市の無料Wi-Fiの取組
(出典)福岡市提供資料

Fukuoka City Wi-Fiに接続するには、SSIDを選択した後、利用者情報(氏名とメールアドレス)を登録して、認証を行う必要がある。接続後にインターネットブラウザを立ち上げると、韓国語、中国語(簡体、繁体)、英語と日本語の5言語に対応したトップページが表示される。アジアをはじめとした海外からの観光客の利用を想定したものである。セキュリティ対策として、フィルタリングや利用者情報の登録、端末情報の記録等の複合的な対策を実施している。また、福岡市は2014年8月分から、Fukuoka City Wi-Fiの利用状況(認証回数)を、個人を特定できない形式で処理した上で、オープンデータとして公開している。

NTTグループとJTBグループは2014年10月から2015年4月まで、福岡市周辺で実証実験「訪日外国人向け観光サービスによる地域活性化トライアル」を実施した。Fukuoka City Wi-Fiを通信インフラとして活用し、訪日観光客に向けて、スマートフォンやタブレット向けの専用アプリ「J Guidest Fukuoka」(2015年6月現在「Japan Travel Guide」として提供中)を通じた地図、人気観光スポット、グルメ・ショッピング等の観光情報を提供した。このアプリが収集・蓄積した利用状況等の各種データをビッグデータとして解析し、ユーザーの位置情報を活用し、周辺の店舗広告を表示するサービスや、観光客にそれぞれあったおすすめの情報を提示するサービス等の検証がなされた。



4 本項でのWi-Fiは公衆無線LANサービスを指す。

5 平成26年6月12日に公表されたSAQ2 JAPAN Projectは、①無料Wi-Fiの整備促進と利用円滑化、②国内発行SIMへの差替え等によるスマートフォン・携帯電話利用の円滑化、③国際ローミング料金の低廉化、④「言葉の壁」をなくす「グローバルコミュニケーション計画」の推進、の4つを柱としている。

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