第3部 基本データと政策動向
第11節 海外の政策動向

(4)ドイツ

政府は、ハイテク立国及び製造立国としての地位を将来にわたって維持・発展させていくため、ドイツのICT産業の競争力強化と経済成長を目的とした省庁・業界横断的なICT戦略「デジタルドイツ2015」及び技術革新戦略「ハイテク戦略」を決定した。また、これらの戦略の支援を含む包括的なデジタル化社会計画として、2014年に「デジタル・アジェンダ2014-2017」を策定した。

ア ハイテク戦略

政府は、グローバルな課題解決と国際競争力の強化を目的に、2006年8月に包括的な国家戦略である「ハイテク戦略」(2006年〜2009年)を策定した。官民連携の下、研究開発の強化とイノベーションの推進により、ドイツ産業界が世界市場を先導することで持続可能な経済成長や雇用の拡大を目指すとしている。2006年以降、ドイツの科学・イノベーション政策は、この戦略を基本計画として、BMBFの主導のもとに推進されている。

2010年6月には、2020年までを視野に入れた「ハイテク戦略2020」が策定され、新しいグローバルな挑戦課題として「気候とエネルギー」「健康と栄養」「モビリティー」「セキュリティ」「コミュニケーション」の5つを掲げた。特に、今後10〜15年に社会で重要となる、広範囲にわたる11の未来志向のプロジェクトが確認された。

2014年9月には、第3弾となる「新ハイテク戦略18」が発表され、2015年以降の基本計画が策定された。イノベーションは、ドイツの経済成長と生活の質を向上させる鍵であるとの認識のもとに、創造的なアイディアを具体的なイノベーションとして迅速に実現することによって、引き続きドイツが世界のイノベーションのリーダーとしての地位を確保し続けることを目標としている。政府は、この新ハイテク戦略を通して、2014年だけで110億ユーロの予算を投入する予定であり、さらに現政権任期中に30億ユーロの追加予算を支出することを決定している。

同戦略では、社会及び将来の経済成長と豊かさに関連する研究テーマを特定し、優先的に実施している。ここで挙げられたテーマは、デジタル経済と社会、持続可能な経済とエネルギー、革新的な労働環境、健康的な生活、インテリジェント・モビリティ、国民生活とセキュリティである。

なお、「ハイテク戦略2020」の11の未来志向プロジェクトは、「新ハイテク戦略」でも継続されている。ただし、「新ハイテク戦略」では、2つの未来志向プロジェクト(ネット利用拡大と省エネ、未来の労働環境と労働体制)が統合され、「インダストリー4.0」として実施されている。

イ デジタル・アジェンダ2014-2017

「デジタルドイツ2015」と「ハイテク戦略」とは別に、2014年8月、IT戦略の行動計画「デジタル・アジェンダ2014-201719」が閣議決定された。同戦略は、経済成長と雇用拡大、インターネットアクセスの拡大、信頼性とセキュリティの強化などを目的としている。

具体的な活動領域は、デジタル・インフラ、デジタル経済と雇用、イノベーション社会、デジタル社会ネットワークの実現、教育・科学・研究・文化とメディア、社会と経済の安全・防御・信頼、欧州及び国際的な次元でのデジタル・アジェンダの7つの重要分野に焦点を当てている。

このうち、デジタル・インフラでは、2018年までに各家庭に最低50Mbpsのインターネット接続を確保する目標を掲げている。またデジタル経済では、「インダストリー4.0」やクラウド・コンピューティング、ビッグデータなどへの支援を盛り込んでいる。

この他に、データ保護の強化と政府関連機関へのサイバー攻撃に対する防衛強化に向けた連邦情報技術安全局(BSI)の体制強化案なども提示している。



18 http://www.bmbf.de/pub/HTS_Broschuere_engl_bf.pdfPDF

19 http://www.digitale-agenda.de/別ウィンドウで開きます

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