総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > IoTの実現に向けたアプローチと我が国ICT産業の方向性
第2部 ICTが拓く未来社会
第4節 ICT化の進展がもたらす経済構造の変化

(5)IoTの実現に向けたアプローチと我が国ICT産業の方向性

IoTの実現に向けたアプローチは、(1)IoTに関するユースケースごとに個別に検討するアプローチ(縦型アプローチ)、(2)様々なユースケースに共通的に適用できる技術を特定し検討するアプローチ(横型アプローチ)、の2つに分けられる。

(1)の縦型アプローチでは、前述したドイツ「4.0」や「インダストリアル・インターネットコンソーシアム」などが事例として挙げられる。ここでは、具体的なユースケースを前提に議論や検討を進めるため、一般的にイメージを固めやすい一方で、個別のユースケース特有の要件に左右されやすく、開発した技術の他分野への展開が困難となる場合も考えられる。(2)の横型アプローチでは、業界団体における検討や、CiscoやIntelなどネットワーク・プラットフォームに特化している企業の取り組みが相当する。技術の再利用という観点で標準化の効果を高められるが、個別のユースケースに関する分野特有の専門知識を取り込むことが難しく、標準技術の実際のビジネス展開に向けた検討が一層必要となると考えられる(図表5-4-1-14)。

図表5-4-1-14 IoTの実現に向けたアプローチ
(出典)「クラウド・M2M等を含むFuture Networksの標準化動向」ITUジャーナルVOL.44(2014年8月)

こうしたアプローチなどを踏まえ、今後IoTの世界における覇権争いが一層激しさを増す中で、我が国ICT企業がビジネス機会を拡大できる領域を見出していくことが期待される。その際に、IoTの本質を見極め、関連ビジネスにおいて主導的な機能や役割を果たす領域において競争力を発揮することが重要となる。

本章第3節で参照した国際アンケート(日本・米国・ドイツ・中国・韓国・インド)において、各国ICT企業が注目するIoTがもたらすビジネスへのインパクトに関する認識調査を実施したところ、日本、中国、韓国の東アジア地域の企業では、「ビッグデータの蓄積」や「データ分析の高度化」などIoTの技術基盤にフォーカスしており、IoTで先行する米国やドイツ、インドにおいては、「省人化の促進」や「対応の迅速化/オペレーション効率の向上」などIoTの応用・利活用にフォーカスしていることがみてとれる(図表5-4-1-15)。このように、IoTが実現する、データの収集・蓄積、解析、反映・応用の各領域で各国企業の関心の強度が分かれている。

図表5-4-1-15 IoTによるビジネスへのインパクト
(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)
「図表5-4-1-15 IoTによるビジネスへのインパクト」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

情報の収集やそれを実現するセンサー技術に関して、我が国はセンサー市場におけるシェアが比較的高いことからも、高い競争力を有していると考えられるが、当該領域に関心が高い中国・韓国の企業と競争していく蓋然性が高い。そのため、今後は、異業種連携、あるいは海外企業との連携も積極的に行っていくことで、情報の解析や反映・応用の領域も含めたIoTのエコシステムを早期から構築していくことが重要となるだろう。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る