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第3部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

3 電波利用環境の整備

(1)生体電磁環境対策の推進

総務省では、電波の人体への影響に関する調査を実施し、人体の防護のため、電波法令により電波の強さに関する安全基準4を定めており、その内容は国際的なガイドラインと同等となっている。これまでの調査・研究では、この安全基準を下回るレベルの電波と健康への影響との因果関係は確認されていない。今後も科学的に電波の安全性について検証を積み重ねていくことが重要であり、総務省では、継続的に電波の安全性評価を行っていくこととしている。

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP: International Commission Non-Ionizing Radiation Protection)は、電波防護に関する国際的なガイドラインである「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン」(平成10年4月)のうち、低周波電磁界領域に関する内容を平成22年11月に改定した。このような国際的な検討動向や電波利用状況の変化等を受けて、平成25年12月に、「電波防護指針の在り方」について情報通信審議会へ諮問5がなされた。「電波防護指針の在り方」のうち「低周波領域(10kHz以上10MHz以下)における電波防護指針の在り方」については、電波利用環境委員会において平成26年1月から平成27年2月まで検討が行われ、同年3月に情報通信審議会で一部答申された。なお、高周波領域については、将来予定されている国際的ガイドラインの改定に合わせて改めて検討することとされている。

また、総務省は、電波の安全性に関する施策の推進に関して、生体電磁環境に関する検討会(座長:大久保 千代次 一般財団法人電気安全環境研究所電磁界情報センター所長)を開催している。本検討会は、人体や植込み型医療機器への電波による影響の防止に関する検討を行うことで、国民が安心して安全に電波を利用できる社会の構築に寄与してきた。平成26年度には、本検討会の前身である「生体電磁環境研究推進委員会」の報告書が公表された平成19年4月以降の国内外の研究成果について評価分析等を行い、現時点での電波の安全性に関する見解の取りまとめを行っている。その結果は、平成27年度前半に、第一次報告書として公表される予定である。

医療機器への影響について、総務省は「電波の医療機器等への影響に関する調査」を毎年度行い、その調査結果を受けて、必要な注意事項等を「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」に反映させている。

平成25年度に実施した「電波の植込み型医療機器に与える影響に関する調査」では、携帯電話(W-CDMA方式)と無線LAN(IEEE802.11n方式)の電波が同時に端末から発射された際の植込み型医療機器への影響について調査を行った。これは、近年利用が拡大しているスマートフォン等の無線端末には、一台の端末内に携帯電話と無線LANなどの複数種類の電波を備え、同時に放射する機能を有するものが多いことを踏まえたものである。調査の結果、影響の発生は確認されなかったことを受けて、総務省は、平成26年5月に「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」を改訂し、同指針の対象である「携帯電話端末」にはスマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末も含むことを明確にした6

近年、新たな植込み型医療機器の開発が進み、植込み型神経刺激装置など、植込み型心臓ペースメーカ等以外の植込み型医療機器の普及が進んでいる。また、携帯型輸液ポンプなど、常時身体に装着することで植込み型医療機器と同等の治療等を患者に提供する医療機器も普及が進んでいる。そのため、平成26年度に実施した「電波の医療機器等に与える影響に関する調査」では、携帯電話(W-CDMA方式)がこれらの医療機器に与える影響について、実機による影響測定を実施した。平成27年度には、この調査結果を受けて、指針の改訂等について検討を行う予定である。

加えて、平成26年度には、医療機関における携帯電話等の使用についても、電波環境協議会において、有識者、関係団体や総務省、厚生労働省等から構成される「医療機関における携帯電話等の使用に関する作業部会」が設置され、検討が行われた。医療機関における携帯電話等の使用については法的規制が無く、各医療機関において独自のルールが定められている。電波環境協議会は、同年8月に「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針等」を公表した。同指針等は、医療機関において携帯電話端末等の使用ルールを制定する際の考え方や、携帯電話端末を使用可能な場所での医用電気機器との離隔距離の目安等を示しており、医用電気機器から一定の距離を確保するなどの安全対策を行うことを前提とすれば、医療機関における携帯電話等の無線利用機器の活用を更に推進し、医療ICTの促進及び患者の生活の質(QOL)の向上に大きな効果を見込むことができるとしている。今後、各医療機関において、同指針等を参考にして携帯電話等の使用に関する合理的なルールが定められることが期待される。



4 電波防護指針:http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/medical/protect/index.htm別ウィンドウで開きます

5 情報通信審議会への諮問:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban16_03000185.html別ウィンドウで開きます

6 平成25年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban16_03000216.html別ウィンドウで開きます

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