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第2部 ICTが拓く未来社会
第2節 ICT産業のグローバルトレンド

(2)我が国ICT産業の動向

我が国の通信機器の輸出額のうち、最も多くを占めているのが「データ通信機器」であり、次いで「基地局」となっている。「データ通信機器」は、具体的にはデジタル伝送装置や固定通信装置(固定無線や衛星系システムを含む)が含まれる。2012年頃までは下降トレンドであったものの、いずれの製品群も2014年の実績では上昇に転じている(図表5-2-6-5)。これらのトレンドを踏まえ、我が国企業の動向や今後の可能性について展望する。

図表5-2-6-5 我が国における通信機器の輸出額の推移21
(出典)一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会「通信機器生産・輸出入」
ア 基地局市場

我が国では多くのベンダーがスモールセルに係る技術開発を進めており、今後のグローバル展開において他国企業と比べて技術的な優位性を発揮することが期待されるところである。前出の通信機器の輸出額の推移にみられるように直近の基地局製品に係る供給においては、こうしたスモールセルの動向も相まって拡大しているとみられ、更なるグローバル展開が期待されるところである。

イ バックホール・大容量回線市場

基地局の整備等による移動体通信網のさらなる高度化や強靭化と連動して、いわゆる「バックホール」と呼ばれる背後にあるネットワークの整備も需要として見込まれる。バックホールの主な例としては、携帯基地局と制御局・交換局等のコア網設備を結ぶ伝送路が挙げられ、通常は光ファイバー回線などの固定有線回線や固定無線回線が利用される。代表的な例として、我が国ではNECが長年蓄積したマイクロ波伝送技術や小型化技術を活かした固定網無線伝送装置『パソリンク』がグローバルで高いシェアを誇っている。特に、光ファイバー回線など大容量回線のインフラが整備されていない地域や国土が広く固定回線を敷設できない地域においては、同装置を利用することで、設置コストを大幅に縮減できる。実際に、150弱の国への納入実績のうち、約2/3がアジア太平洋や中近東アフリカなどの新興国地域である。前出の通信機器の輸出額の推移の「データ通信装置」はこうしたバックホール市場需要に対応する製品群に相当し、更なる展開が期待されるところである。

また、急増するトラヒックやそれを処理するクラウド・コンピューティングの拡大等に対応するために世界中で超高速・大容量光通信技術の技術開発競争も進んでいる。とりわけ光伝送の分野は、世界的にみても、これまで我が国の通信事業者やメーカーが世界標準でリーダーシップを図ってきた分野である。代表的なネットワークとして挙げられるメトロネットワーク(数10km程度の都市内通信網)の市場においては、富士通及びNECが北米地域やアジア太平洋地域において、主要な事業者として展開している(図表5-2-6-6)。2014年には、NTT、NEC、富士通、三菱電機の4社が毎秒100ギガビット光伝送用信号処理技術の研究開発を進め、結晶としてのチップ(LSI)の実用化に世界に先駆けて成功しており、世界22か国をつなぐ太平洋・大西洋の光海底ケーブル網などにも採用されている。こうした光伝送分野における我が国企業の技術的優位性に立脚した海外展開が期待される。

図表5-2-6-6 WDM(メトロネットワーク)の市場シェア(2013年)
(出典)IHS Technology


21 音声、画像その他のデータを受信、変換、送信または再生するための機械(スイッチング機器及びルーティング機器を含む)

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