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第2部 ICTが拓く未来社会
第2節 ICT産業のグローバルトレンド

(1)グローバル市場の動向9

ア モバイル向けコンテンツ市場

モバイル向けコンテンツ市場は、2014年は約390億ドル規模に達しており、2018年には約770億ドル規模まで成長すると予想される。特に、スマートフォンの普及や画面の接触率の増大等を背景に、モバイル広告の成長が期待されており、市場の約半分を占める規模に拡大すると見込まれている。また、当面は北米をはじめとする先進国を中心に拡大が続くと想定される(図表5-2-3-1)。2018年以降は、第4世代移動通信システム(LTE-Advanced)などの次世代ワイヤレスネットワークの本格的開始により、より高速かつ大容量な伝送や、固定網と移動体網のシームレス化により、いつでもどこでもコンテンツを楽しむことができる環境が提供され、更なる市場拡大が期待される。

図表5-2-3-1 世界のモバイル向けコンテンツ市場の推移と予測
(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)
イ モバイルアプリ市場

スマートフォンやタブレット端末の普及、とりわけ米AppleのiPhone登場を機に、アプリケーション(専用ソフトウエア)を端末にダウンロードして利用するモデルが世界中で広く浸透している。AppleをはじめGoogle、Microsoft、Samsungなど多くの事業者はこうしたアプリケーションを販売するプラットフォーム(アプリストア)をユーザーへ提供するとともに、アプリケーション開発者に対しては開発環境を提供することで、サードパーティーによるアプリケーション開発を誘引し、ユーザー向けのアプリケーションを充実させ、ユーザーのアプリ購入による販売収入から開発者に利益配分を行う仕組みを作り上げてきた。このようなアプリ開発者を巻き込んだエコシステムは「アプ・エコノミー」と呼ばれてきた。

アプ・エコノミーの形成により、アプリストアで扱われるアプリの数は飛躍的に増加し、ユーザーによるダウンロード数も伸び続けており、この傾向は今後も継続する見込みである。ダウンロードされているアプリのうち特に多いのがゲーム系アプリであり、2014年時点でダウンロード数全体の約4割を占めている(図表5-2-3-2)。スマートフォンやタブレット端末の普及状況と同様に、特にアジア太平洋への浸透が大きい(図表5-2-3-3)。

アプ・エコノミーはビジネスモデルの観点から「有料アプリ」と「無料アプリ」に分けられる。有料アプリはアプリのダウンロード時に課金されるものである。無料アプリは、アプリ内広告を採用する「無料アプリ+広告型」と、フリーミアムと呼ばれる「無料アプリ+アプリ内課金型」に分かれる。アプ・エコノミーが形成された当初は有料アプリが主流であったが、近年は無料アプリ(アプリ内課金)へシフトしている。全体の市場規模は2014年時点で271億ドル、2018年には395億ドルまで拡大することが予想されている(図表5-2-3-4)。

図表5-2-3-2 世界のモバイルアプリダウンロード総数・端末あたりのダウンロード数の推移及び予測
(出典)IHS Technology
図表5-2-3-3 世界のモバイルゲームダウンロード数の推移と予測(地域別)
(出典)IHS Technology
図表5-2-3-4 世界のモバイルアプリ市場規模の推移と予測(課金種類別)
(出典)IHS Technology
ウ モバイル向けコマース市場

パソコンを中心に拡大してきたeコマース市場は、今後モバイルコマースが牽引していくことが予想される。モバイルコマース市場は、2014年の約2,000億ドル規模が2018年には6,280億ドルに達すると想定される。特に、今後はアジア太平洋地域の拡大が顕著となる(図表5-2-3-5)。

図表5-2-3-5 世界のモバイル向けeコマースサービス市場規模の推移と予測
(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)
エ M&Aの動向

上位レイヤーに係る市場の成長を背景に、企業間のM&Aも盛んである。特に、変化の速い上位レイヤーでは多様な分野へとアプリケーションやプラットフォームが広がっていることから、同業種の買収による規模拡大の他、早期の事業領域拡大等を目的とした異業種の買収も進展している。近年のM&A件数の推移をみると、リーマンショック後の2010年頃より急激に増加している。主としてサービス分野やソフトウェア・OS分野が顕著に増加しているが、映像・音楽・TVなどのコンテンツ系や、ペイメントなどの決済・金融系も徐々に増えている。

これらのM&Aの多くは、依然として米国企業によるものが支配的であり、同国企業による積極的な投資やそれを実現する投資環境が上位レイヤーの成長と拡大を加速させている状況がうかがえる。他方、直近では中国企業によるM&A件数が伸びており、今後の動向と上位レイヤーにもたらすインパクトが注目される(図表5-2-3-6)。

図表5-2-3-6 上位レイヤーに係る各国企業のM&A件数
(出典)IHS Technology


9 本項で注目する3つのモバイル関連市場は以下の範囲と定義する。

 ①モバイル向けコンテンツ市場:「広告」「音楽」「映像」「ゲーム」の4つのコンテンツ分野におけるモバイル向け配信・販売等に係る市場。

 ②モバイルアプリ市場:モバイル向けアプリケーションの販売に係るビジネス。ただし、いわゆる「アプリ内コンテンツ」の課金など、①の分野に相当するものは①/②の両市場に含まれる。

 ③モバイル向けコマース市場:スマートフォン・タブレット等向けeコマースの市場。上記①/②とは別市場として整理。

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