第2部 ICTが拓く未来社会
第3節 ICTによる新たなワークスタイル―テレワークの可能性

(4)小括

以上、就業者と企業に対するアンケート調査結果の分析に基づき、テレワーク普及に向けた課題等を探ってきた。その結果、まず明らかとなったのは、テレワークの認知度の低さである。企業の場合でも就業者の場合でも認知度は5割未満であり、テレワーク普及促進に向けてまずは認知度向上を図ることの重要性が改めて確認された。その一方、テレワークについて知らなかった就業者も内容を知れば4割がテレワークの利用を希望していることが示しているように、テレワークへの潜在的なニーズは高いことが確認された。

就業者がテレワークの利用を希望する理由の1位は「自分にあった環境で仕事ができるから」であった。また、テレワークを導入している企業の5割以上が生産性・業務効率の向上を実現している。これらの結果は、テレワークの利用が広がることで、就業者が自分に適した環境で仕事をし、企業の生産性向上につながっていくというシナリオが現実性の高いものであることを示唆している。

また、30代女性では「子育てと仕事との両立」をテレワークの利用を希望する理由として挙げる人が5割に達しており、50代女性では「親の介護と仕事との両立」を挙げる人が約3割に上っている。テレワークが、子育てや介護と仕事との両立を可能にし、女性が社会の中で活躍するための手段として期待されていることが改めて確認された。男性にもこれらの理由をテレワークの利用を希望する理由として挙げる人は少なくなく、テレワークの普及が男性の子育て参画等につながる可能性も示唆された。

テレワーク実現に向けた具体的な課題としては、就業者サイドから見た場合にはICT機器の利用スキル向上が、企業サイドから見た場合には情報セキュリティの確保が、それぞれ重要であることが確認された。テレワークの必要性を感じていない就業者や、テレワークの導入に適した職種がないと考えている企業も多かったが、これらの結果は、テレワークやそのメリットについての認知が世の中に広まることで、変わっていく可能性もあるだろう。

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