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第1部 ICTの進化を振り返る
第2節 年代を超えたICT利活用の普及

5 若者層とシニア層のICT利活用の特徴

以上、各年代のICT利活用の在り方をみてきたが、最後に総括として、20代以下の若者層と60代以上のシニア層のICT利活用の特徴を整理することにしたい。

冒頭述べたとおり、インターネット利用率や世帯ネットショッピング利用率の点では、若者層とシニア層の違いは過去約10年間の間に小さくなってきており、今回実施したウェブアンケート調査でも、ネットショッピングの利用率については大きな年代差は見られなかった。また、年代に関わらずインターネットは何かを調べようとする際の最も一般的なツールとなっており、テレビに次ぐニュース視聴の一般的手段としても定着しつつある。

その一方で大きな差がついたものもある。若者層とシニア層との差がまず顕著なのは、スマートフォンの利用率である。若者層では約8割に達するスマートフォン利用率は、シニア層では約2割にとどまる。若者層では、インターネットへのアクセスにはPCではなくスマートフォンを利用することが既に一般的になっている。

ICTサービスの利用状況をみても、若者層では、動画投稿・共有サイト、SNS、メッセージングアプリ、無料通話アプリといった、比較的新しいサービスの利用が盛んだが、シニア層での利用はそれほど盛んではない。特に近年普及が進んだメッセージングアプリでは大きく差がついた。その結果、たとえば、「日常的なおしゃべりをする」場合、若者層ではLINE等のメッセージングアプリが対面での会話に次いで最も頻繁に利用されるコミュニケーション手段となっているが、シニア層ではほとんど利用されていない。

以上のように、若者層とシニア層とではICT端末やICTサービスの利用について様々な違いが見られるが、こうした違いが過渡的なものか継続的なものかは今後更に検証が必要である。インターネットの世代別利用率の差が過去約10年間で縮小したように、今回観察されたような年代間の違いも長期的には縮小していく可能性は十分にあるだろう。

子どものICT端末利用状況

本文でみたように、20代以下のICT端末利用には、スマートフォン利用率の高さをはじめとした顕著な特徴があった。それでは、更に下の年代のICT端末利用状況はどうなっているのだろうか。

総務省情報通信政策研究所では、2015年3月、未就学児から小学生までの子どもを持つ保護者を対象に、ICT端末の利用状況等に関するアンケートを実施した6。調査対象としたICT端末は、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC、通信機能のあるゲーム機(ニンテンドー3DS、PSP等)、通信機能のある音楽プレーヤー(iPod Touch、通信機能付Walkman等)の7種類である7。なお、子どもが自分でICT端末を利用している場合だけでなく、保護者がICT端末を子どもに見せたり、使わせたりしている場合も含めて利用状況を調査した。

調査はスクリーニング調査と本調査の2段階で行われた。まず、スクリーニング調査では、対象年齢の子どもを持つ保護者に対して、上記のICT端末のいずれか1つ以上を子どもが利用しているかどうか(保護者がICT端末を子どもに見せている場合も含む)を尋ねた(ゲーム機と音楽プレーヤーを除く)。その結果、全体に年齢が上がるほど「利用率」(あるいは保護者がICT端末を子どもにみせた結果としての「接触率」)が高くなることがわかった(図表1)。

図表1 子どもがICT端末を利用している件数と出現率(保護者が見せているものも含む)
(出典)総務省情報通信政策研究所「未就学児のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成27年)
「図表1 子どもがICT端末を利用している件数と出現率(保護者が見せているものも含む)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次に、子どもが上記7種類のいずれかのICT端末を利用していると回答した保護者を対象に、本調査を実施した。本調査におけるICT端末の利用状況をみると、年齢が低いほどスマートフォンの利用が多く、年齢が上がるほどフィーチャーフォンやゲーム端末の利用が増加する。0〜3歳児については、7割 (68.5%)がスマートフォンを利用している(保護者が見せている場合も含む)。一方、小学4〜6年生では、7割(67.5%)がゲーム端末を利用している(図表2)。

図表2 子どもが利用しているICT端末全て(保護者が見せているものも含む)
(出典)総務省情報通信政策研究所「未就学児のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成27年)
「図表2 子どもが利用しているICT端末全て(保護者が見せているものも含む)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

本調査では、保護者に対して、子どもにICT端末を利用させる理由も尋ねている。その結果をみると、未就学児については、上位3位の理由は「保護者の手を離れる(保護者の手を煩わせない)時間ができるから(静かになる、ひとりで遊ぶ)」、「子どもの機嫌が良くなるから(泣き止む、笑顔になる)」、「学習ができるから(文字、数字、英語、歌、しつけ等)」となった。また、小学生の上位3位の理由は、「特に理由は無い」を除くと、「学習ができるから(文字、数字、英語、歌、しつけ等)」、「スマートフォンやタブレット端末の操作を覚えるから」、「保護者の手を離れる(保護者の手を煩わせない)時間ができるから(静かになる、ひとりで遊ぶ)」となっている(図表3)。

図表3 子どもにICT端末を利用させる理由
(出典)総務省情報通信政策研究所「未就学児のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査研究」(平成27年)
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いわゆる「シンプルスマホ」「格安スマホ」へのシニア層の利用意向

本文でみたように、60代以上のシニア層のスマートフォン普及率は他の年代と比べて低く、2割程度にとどまる。普及が進まない理由としては、スマートフォンがシニアにとって操作しにくいことや、スマートフォンの利用料金がフィーチャーフォンに比べて高額であることが考えられる。そこで、シニア層等が使いやすいよう画面表示を見やすくしたり、操作方法をシンプルにしたり、誤操作を防ぐ仕組みを取り入れたスマートフォン(いわゆる「シンプルスマホ」)と、月々の通信料金を通常のスマートフォンよりも低く設定してある反面、高速通信の利用可能な範囲等に制限のあるスマートフォン(いわゆる「格安スマホ」)へのシニア層の利用意向を尋ねてみた。

まず、いわゆる「シンプルスマホ」についてシニア層の利用意向を尋ねたところ、「利用意向あり(利用したい+内容次第では利用を検討したい)」は4割程度であり、「利用意向なし(利用したくない+あまり利用したくない)」や「必要性を感じない」を上回った (図表4)。

図表4 いわゆる「シンプルスマホ」へのシニア層のニーズ
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
「図表4 いわゆる「シンプルスマホ」へのシニア層のニーズ」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次に、いわゆる「格安スマホ」についてシニア層の利用意向を尋ねたところ、こちらも「利用意向あり」は4割程度であり、「利用意向なし」や「必要性を感じない」を上回った(図表5)。

図表5 いわゆる「格安スマホ」へのシニア層のニーズ
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
「図表5 いわゆる「格安スマホ」へのシニア層のニーズ」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

以上のように、「シンプルスマホ」や「格安スマホ」へのシニア層の期待は総じて高く、こうしたスマートフォンが充実すれば、シニア層のスマートフォン利用率向上に貢献する可能性がある。



6 我が国の未就学児〜小学生までの子どもを持つ保護者を対象に総務省情報通信政策研究所がウェブアンケートを実施。アンケート調査会社が保有するモニターからの抽出方法は次のとおり。
 0歳児〜6歳児の各年齢の子供の保護者では、0歳:150サンプル、1〜6歳児:200サンプル×6セグメント=1,350(各100サンプル:第一子、第二子以降)。
 小学1〜3年生・小学4〜6年生の子供の保護者(未就学児との比較)では、200サンプル×2セグメント=400(各100サンプル・第一子・第二子以降)。サンプル合計は1,750。

7 ゲーム機のような専用端末の場合は、インターネット接続機能を持っていても、端末の利用率がインターネット接続率や、専用サイト以外のサイト全般の利用率に直結しない点に留意する必要がある。この点については経済産業省「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(青少年インターネット利用環境整備に係る調査)インターネット利用状況調査報告書」を参照のこと。

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