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第2部 ICTが拓く未来社会
第2節 ソーシャルメディアの普及がもたらす変化

1 シェアリング・エコノミー―ソーシャルメディアを活用した新たな経済

(1)シェアリング・エコノミーとは

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。シェアリング・エコノミーはシリコンバレーを起点にグローバルに成長してきた。PwCによると、2013年に約150億ドルの市場規模が2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みである(図表4-2-1-3)。

図表4-2-1-3 シェアリング・エコノミーの市場規模
(出典)PwC「The sharing economy - sizing the revenue opportunity」

シェアリング・エコノミーの嚆矢は2008年に開始された「Airbnb」であるが、その後様々なものを対象としたサービスが登場している。以下に主なサービスを示す1図表4-2-1-4)。

図表4-2-1-4 海外におけるシェアリング・エコノミー型サービスの例
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
ア Airbnb

Airbnbは、空き部屋や不動産等の貸借をマッチングするオンラインプラットフォームである。個人・法人を問わずに利用でき、共用スペースから戸建て住宅、アパート、個室から個人が所有する島まで幅広い物件が登録されている(図表4-2-1-5)。

図表4-2-1-5 Airbnbのサービスイメージ
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

また、ユーザー間の信頼性を高めるために、過去の利用者による「レビュー評価制度」、写真入り身分証明書などから本人確認を行う「ID認証」、Facebook等の外部のソーシャルメディアの認証情報を利用する「SNSコネクト」、利用者に起因する損害を補償する「ホスト保証制度」等の機能が導入されている。なお、利用者による評価は双方向であり、ホストからゲストへの評価も行われる。

Airbnbは2008年に設立され、2015年時点で190か国以上の34,000を超える都市で100万以上の宿が提供されている4

図表4-2-1-6 Airbnbとホテルの位置(ロサンゼルスの例)
(出典):Airbnb社ホームページ

Airbnb社によるとAirbnbの効果は地域経済にも影響を与えている。図表4-2-1-6は、Airbnbの扱う物件と民間ホテルの立地の比較である。同社の研究によると、ホテルのないところに物件があり、一般の旅行者が訪れない地域企業などにお金が落ちる効果が創出されている。具体的には、サンフランシスコで年間約56億円、シドニーで年間約214億円の地域経済効果が見込まれている5

イ Uber

Uberは、スマートフォンやGPSなどのICTを活用し、移動ニーズのある利用者とドライバーをマッチングさせるサービスである(図表4-2-1-7)。

図表4-2-1-7 Uberのサービスイメージ
(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

各地域のタクシー会社、ハイヤー会社に加えて、個人のドライバーとも提携をしており、利用者はスマートフォンから配車の依頼をすることができる。現在、57か国の都市でサービスが提供されている6

移動の目的や人数によって、サービスを「uberX(エコカー)」「uberTAXI(タクシー)」「UberBLACK(ハイヤー)」「UberSUV(ミニバン)」「UberLUX(最高級車)」等から選択することができる。なお、都市によって利用できるサービス及び料金が異なり、例えば東京であれば、uberTAXI、UberBLACK、UberLUXの3種類から選択することになる。

uberXは、エコカーを利用して個人で開業しているドライバーが多く、自家用車によるライドシェアリングが行われている。同社によると、uberXのドライバーは1時間20ドル以上の収入を得ることができ7、年間平均収入はニューヨークで約90,000ドル、サンフランシスコで約74,000ドルである8。そのため、米国等では、ドライバー登録をして収入を得る個人ドライバーが増えている。

同サービスでは、ユーザーが安心かつ便利に利用できるように「過去の利用者による運転手の評価確認」、「事前に登録したクレジットカードからの運賃の電子決済」、「同乗者との割り勘決済」などの機能を提供している。

ウ Prove Trust

シェアリング・エコノミー型サービスでは個人と個人との信頼関係が鍵となる。このため各サービスでは、Facebook等の既存ソーシャルメディアと連携したり、サービス独自に利用者間のレビュー評価制度を導入したりして、信頼性の確保に努めているが、一歩進んで、オンライン上の様々な活動履歴からユーザーの信頼度を総合的にスコア化するサービスも提供され始めている。その一つであるProve Trustでは、ユーザーの信頼度を、Facebook、地域情報コミュニティサイト「Craigslist」、Airbnb、ビットコイン、結婚恋愛サイトの利用状況等に基づき、総合的にスコア化するサービスを提供している。評価の内容は、ユーザーが実在する人物かどうかを評価する「Real Score」、ソーシャルネットワーク上での活動の活発さを評価する「Social Score」、他のユーザーからの評判を評価する「Feedback Score」により構成され、これらのスコアを集計して最終的な信頼度がスコア化される(図表4-2-1-8)。類似のサービスとして、TrustCloudがある。

図表4-2-1-8 Prove Trustによる信頼度のスコア化のイメージ
(出典)Prove Trust ホームページ9


1 各社ホームページより作成。

2 Airbnb社ホームページ、https://www.airbnb.jp/about/about-us別ウィンドウで開きます

3 高橋陽一「ライドシェアリングのジレンマ」(KDDI総研R&A、2013年7月号)

4 Airbnb社ホームページ、https://www.airbnb.com/economic-impact/別ウィンドウで開きます

5 Airbnb社ホームページ、https://www.airbnb.com/economic-impact/別ウィンドウで開きます

6 Uber社ホームページ、https://www.uber.com/cities別ウィンドウで開きます

7 Uber社公式ブログ、http://blog.uber.com/getgenne別ウィンドウで開きます

8 Uber社公式ブログ、http://blog.uber.com/uberimpact別ウィンドウで開きます

9 Prove Trust ホームページ、https://www.provetrust.com/#別ウィンドウで開きます!/p/example

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