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第3部 基本データと政策動向
第6節 ICT利活用の推進

(2)医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進

超高齢社会に突入した我が国は、社会保障費の増大や生産年齢人口の減少等、様々な課題に直面しており、これらの課題を解決し、経済成長を成し遂げるとともに、社会課題解決先進国として国際社会に貢献することが重要である。そのためには、国民の健康を維持・増進し、高齢者等の社会参加を可能とする社会の構築が有効であることから、ICTの活用による地域の医療機関、介護事業者等のネットワーク化による医療・介護サービスの質の向上、ICTを用いた健康関連データの活用による国民の健康管理、健康サービスの質の向上等が必要となる。

総務省は、医療機関等のネットワーク化や健康関連データの活用における技術的課題の解決に向けて、以下の施策を実施している。

ア 医療・介護情報連携ネットワークの全国展開

医療機関等の保有する患者・住民の医療・健康情報を、安全かつ円滑に記録・蓄積・閲覧することを可能とする医療情報連携ネットワークは、患者・医療機関等の負担を軽減するとともに、地域医療の安定的供給、医療の質の向上、さらには医療費の適正化にも寄与するものである(図表8-6-1-2)。

図表8-6-1-2 医療情報連携ネットワークの概要

現在、電子カルテの導入が一部進んでいるが、普及率は医療機関全体の2割程度であるとともに、医療情報連携ネットワークについては運用コストの負担が大きく継続的な運用が課題となっているほか、カスタマイズにより異なるベンダー同士の情報連携が困難となっている。このため、中小の診療所も含めた医療情報連携を推進するためには、クラウド等を活用した低廉なモデルの普及・展開が必要である。

また、「健康を長く維持して自立的に暮らす」ことができるためには、「病院完結型」の医療から、「地域完結型」の医療・介護、地域包括ケアへと転換する国の医療政策とも整合を図りつつ、質の高い医療・介護サービスの提供が不可欠である。そのためには、在宅医療・介護分野における多職種の連携が必須であるが、現状、在宅医療・介護分野ではシステムの規格がベンダーによりまちまちであり、関係者間の情報共有が困難であるケースもみられることから、在宅医療・介護における共有情報やシステムの標準化を促す必要がある。

このような状況を踏まえ、総務省は、平成26年度、高品質で低廉な医療・介護サービスを実現するため、在宅医療・介護分野を含む医療機関等におけるクラウド等を活用した情報連携に関する実証を実施した(図表8-6-1-3)。

図表8-6-1-3 医療・介護情報連携ネットワーク基盤の全国展開
イ ICT健康モデルの確立

超高齢化社会を迎えた我が国においては、「健康を長く維持して自立的に暮らす」ことができるよう、高齢化の進展と疾病構造の変化、医療・介護等ニーズの増大等に対応し、社会保障制度の持続可能性を確保しつつ、国民が必要な時に、必要なサービスや給付を適切に得られる社会を実現する必要がある。

そのためには、まずは生活習慣病等の発症・重症化の「予防」による健康寿命の延伸を図ることが重要である。これまでの健康づくりの取組は、比較的健康意識の高い人を中心とした小規模なものが多く、具体的な効果に繋がりにくかったことから、国民のライフスタイルに適応した健康維持・増進の仕組みづくりを行うことにより、約7割を占めると言われている「無関心層」へのアプローチが必要である。

このような状況を踏まえ、総務省は、平成26年度、ICTを活用した健康づくりモデルの実証を行い、インセンティブを用いて、個人の意識付けを高めること等について検証を実施した(図表8-6-1-4)。

図表8-6-1-4 ICT健康モデルの確立
ウ 東北地域医療情報連携基盤構築事業

東日本大震災においては、津波により、病院に保管されていた紙カルテが消失し、患者の病歴や過去の診療情報が失われた。その結果、被災地域における適切な医療の提供が困難になったといった事例が報告され、医療情報連携ネットワークの重要性が注目されることとなった。これを受けて総務省では、厚生労働省及び文部科学省との連携の下、「東北メディカル・メガバンク計画2」の実現に向け、被災地域の医療圏において、医療情報連携ネットワークの構築を財政的に支援する措置を平成23年度より講じている。これまでに、宮城県内全域、福島県の県中、県南及びいわき地域、岩手県の宮古市及び久慈地域において事業を行ってきている他、平成27年度には、福島県の相双、県北、会津及び南会津地域において整備を計画している。



2 被災地の住民の健康・診療・ゲノム等の情報を生体試料と関連させたバイオバンクを形成し、創薬研究や個別化医療の基盤を形成するとともに、地域医療機関等を結ぶ情報通信システム・ネットワークを整備することにより、東北地域の医療復興に併せて、次世代医療体制を構築する計画

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