本編

第1部 東日本大震災における情報通信の状況

 平成23年3月11日14時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生し、この地震により宮城県栗原市で震度7、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度6強など広い範囲で強い揺れを観測するとともに、太平洋沿岸を中心に高い津波を観測し、特に東北地方から関東地方の太平洋沿岸では大きな被害が生じた1
 政府においては、地震発生直後の15時14分に「平成23年宮城県沖を震源とする地震緊急災害対策本部」を立ち上げ、災害応急対策に関する基本方針に基づいて、関係省庁における情報の収集と被害状況の把握、人命の救助、被災者の救援・救助活動、消火活動等の災害応急活動、被災地におけるライフラインの復旧、必要な人員・物資の確保、被災地の住民等に対する的確な情報の提供を行った。
 また、総務省では、同日14時46分に総務省対策本部を、16時00分に総務省非常災害対策本部を設置し、被害状況の把握、災害応急対策、復旧対策等の措置を講じた。
 この震災では、国民生活上の重要なライフラインである、情報通信インフラにも甚大な被害が発生した。通信網については、東北・関東地方を中心に、回線の途絶や、停電等により情報通信機器が使用できなくなるなどの被害が発生した。また、東日本大震災による情報通信産業等への被害は、経済へも大きな影響を与えた2
 このような中、民間事業者等により、情報通信インフラの早期復旧に向けた取組が行われるとともに、公衆電話の無料化、特設公衆電話の設置等の災害対応の対策が実施された。また、放送による災害情報の提供や、インターネットを活用したソーシャルメディア等の新たなメディアが、安否確認や被災者支援のために使われるなど、新たな取組みも数多く行われた。一方で、インターネットの利用については、いわゆるデマ情報などが流布されたとの指摘や、インターネットを利活用できた者と、そうでない者との情報格差が発生したとの指摘など、課題点も指摘されたところである。
 震災への対応を要する課題は刻々と変化しているところであるが、本白書においては、平成23年5月までの状況を基に、情報通信がどのような役割を果たしたか、みていくこととする。


1 気象庁では、3月11日にこの地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。さらに政府では、今回の災害規模が東日本全域に及ぶ甚大なものであることに加え、大規模な地震と津波に加え原子力発電施設の事故が重なるという、未曽有の複合的な大災害であり、今後の復旧・復興施策推進の際に統一的な名称が必要となることから、災害名を「東日本大震災」と呼称することとした(平成23年4月1日閣議了解)
2 例えば、情報通信総合研究所他(2011)では、通信、放送、情報サービスなどICT関連産業の被害額と一般企業が保有するコンピュータなどIT関連資産の被害額とその影響が試算されている。それによると、ICT関連産業では1.6〜2.8兆円、一般企業(除くICT関連産業)の保有するICT関連資産では0.9〜1.6兆円、合計で2.5〜4.4兆円のICT資本ストックが毀損したと推計されている。また、復興のために4.4兆円のICT関連投資が生まれると、1.0兆円は、輸入に向かい、国内生産に回る分は3.4兆円とみられるが、これによって誘発される国内生産額は最終的に7.0兆円に達し、雇用誘発効果は35.7万人と試算されている
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