第1部 東日本大震災における情報通信の状況
第4節 情報通信が果たした役割と課題

コラム 震災時におけるTwitterの活用状況について


 今回の震災においては、インターネットの中でも、特にソーシャルメディアが活用されたとの指摘がなされた。今回、代表的なソーシャルメディアの一つであるTwitter1について、被災地域自治体、及び被災地域マスメディアのアカウント状況等の推計2を行った。

1. 被災地域自治体における活用状況
 震災時点で、被災地域においても公式アカウントを持ち、情報発信している自治体があった。そこで、被災地域、周辺地域及び対照地域3の自治体アカウントを抽出4し、活用状況について分析を行った。
 被災地域の自治体アカウントの1日当たりツイート数は、3月11日から急増、3月10日以前の約10倍に達し、その後次第に減少したものの、震災前と比較して多くのツイートがされた。周辺地域の自治体アカウントでは、被災地域よりもやや遅れてツイート数が増加し、3月18日頃にピークとなったが、その後もあまり減少せず、ツイート数の多い状態が3月末まで続いた(図表1)。また、被災地域の自治体アカウントのフォロワー数も震災後急増し、3月31日には、震災前の約10倍のフォロワー数となった。3月下旬になって、フォロワー数の増加ペースはピーク時よりも落ちたものの、3月11日以前に比べると急速な増加が続いた。被災地域の自治体等がTwitterを活用して情報発信に取り組んだこととともに、Twitter利用者の間でこういったアカウントに対し関心が高かったことがうかがわれる。

図表1 被災地域の自治体アカウントのツイート数等の推移
図表1 被災地域の自治体アカウントのツイート数等の推移
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2. 被災地域マスメディアのアカウントの状況
 震災後、被害の大きかった地域の地元メディア(地方新聞、ローカル放送局等)のTwitterカウントでもフォロワー数の急増がみられた。例えば、震災前にTwitterアカウントを有していた被災地域マスメディア4社について、そのフォロワーの推移を推計したのが図表2である。3月10日以前からアカウントを持っていたラジオ福島では、3月31日時点のフォロワー数は3月10日の約50倍、茨城新聞も約7倍に増加した。地元メディアの発信する情報に対する関心の高さがうかがわれる。

図表2 被災地域マスメディアのフォロワー数の推移
図表2 被災地域マスメディアのフォロワー数の推移
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3. 震災関連デマ情報の出現状況
 今回の震災においては、Twitterの課題の一つとして、Twitterを通じて様々なデマ情報が広がったことが指摘されている。今回、このような例として、コスモ石油のコンビナート火災に伴う「有害物質の雨」5という誤った情報について、関連キーワードの出現推移を調査した6図表3)。
 3月11日の震災直後、コスモ石油という言葉のツイートが急増しているが、この段階では打ち消し表現である「デマ」という言葉を含むツイートがほとんどみられない。その後、3月12日の午後に、コスモ石油という言葉を含むツイートが再び急増しているが、この段階ではその多くは「デマ」という否定語とともにツイートされており、約1日でTwitter上でのデマの打ち消しが行われたことが推察される。

図表3 震災関係の誤った情報に係るツイートの出現推移
図表3 震災関係の誤った情報に係るツイートの出現推移
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1 Twitter(http://twitter.com)とは、ウェブ上で短いメッセージ(140文字以内)を投稿し合う簡易投稿サイトである。ウェブ上でメッセージを公開するほか、「フォロー」という仕組で、メッセージ受信を希望する人を集め、簡単にメッセージを送ることができる。Twitterで利用者が行う最も基本的な行為は「ツイート」と「フォロー」である。本調査では、これら2つの行為の実施数と、これらの行為を行う利用者数を示す「アカウント数」「フォロワー数」の計4種類の指標で、Twitter利用の状況を把握する。以下に、それぞれの概念について説明する
 ・ツイート:利用者がTwitterにメッセージを入力し、発信することを「ツイート」という。「発言する」又は「つぶやく」とも表現する
 ・ フォロー:他のTwitter利用者のツイートを自動受信することを「フォロー」という。フォローしたい相手を登録すると、相手がツイートする都度、その内容が送られてくる
 ・アカウント:Twitter利用者が利用の際に使う識別名のこと。個人だけでなく団体がアカウントを持つ場合もある
 ・ フォロワー:あるTwitterのアカウントをフォロー(自動受信登録)している人のことを「フォロワー」と呼ぶ。フォロワー数の多いアカウントは、ツイート内容を多くの人に即座に届けられることを意味する
2 推計の詳細については、付注1参照
3 岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び東北・関東地方の自治体のうち、「東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法の適用」を受け、「多数の者が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じ、避難して継続的に救助が必要となっている」自治体を「被災地域」、それ以外の東北・関東地方の自治体及び新潟県を「周辺地域」、比較対象として、大阪府、鳥取県、佐賀県を「対照地域」とした
4 被災地域では11アカウント、周辺地域では28アカウント、対照地域では5アカウントを抽出した
5 例えば、「コスモ石油の爆発により有害物質が雲などに付着し、雨などといっしょに降る」などとあったが、このような事実はなかった
6 googleリアルタイム検索を用いて、デマが特に流布したと推測される期間中の毎時00分00秒〜00分59秒の1分間に、当該のデマに関連するキーワードが出現した数をカウントした
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