第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(2)ネットワークの高度化等


ア ネットワークの高度化の推進

(ア)IPv6の推進
 平成23年2月、世界各地域にIPアドレスを分配するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)は、IPv4アドレスの在庫をすべて払い出した。平成23年4月、アジア太平洋地域にIPアドレスを分配しているAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)においても、通常の申請により分配可能であるIPv4アドレスの在庫が枯渇した。また、我が国のIPアドレスを管理しているJPNIC(Japan Network Information Center)は自ら在庫を持たないため、APNICの在庫枯渇を受け、JPNICも通常の分配を終了した。この結果、我が国の通信事業者等においては、早期のIPv6導入が重要となっている。
 総務省ではこれまで、「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会7」等において円滑なIPv6導入方策に関する検討を行うとともに、関連団体と連携して官民共同の導入推進体制である「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」8を構築し対応を進めてきた。同タスクフォースでは、インターネット関連事業者向けアクションプランの策定、インターネット関連事業者に対する広報戦略の策定・実行、IPv6技術に関する教育プログラムの作成等を実施している。
 また、平成21年度及び22年度には、実ネットワークと同等の環境を持つIPv6実験用ネットワーク(テストベッド)を整備し、インターネットをIPv6で運用・構築できるエンジニアの育成を図っている。
 このような中、IPv6を使用する上で不可欠なインターネット接続サービスについては、大手のインターネット接続事業者、アクセス回線事業者を中心に対応が進展しており、平成23年中頃には本格的なサービスが出そろう見込みである。

(イ)ネットワークのオールIP化に向けた取組
 近年、IP電話サービスが急速に普及・拡大するなど、ネットワークのIP化が進展していることから、情報通信審議会情報通信技術分科会の下に設置されている「IPネットワーク設備委員会」において、IP電話端末等に関する技術的条件及び電気通信事故等に関する事項について検討され、平成21年7月に情報通信審議会から一部答申を受けた。
 これを受け、総務省では平成22年4月に、重大事故及び四半期報告事故の報告様式の簡略化・明確化等を行うための関係規定整備を行うとともに、平成22年10月には、IP電話端末が具備すべき機能及び各種端末への緊急通報機能の具備に関する技術基準等を整備するため、端末設備等規則(昭和60年郵政省令第31号)及び端末機器の技術基準適合認定等に関する規則(平成16年総務省令第15号)の各一部の改正を行った。

(ウ)新世代ネットワークの推進
 総務省では、ネットワークのIP化やホームネットワーク、ユビキタスネットワークの進展等の大きな変化を踏まえ、次世代ネットワークの次の世代を見据えた新たなネットワークの検討を行うことを目的として、平成19年1月から「ネットワークアーキテクチャに関する調査研究会」を開催し、平成19年8月に報告書を取りまとめた。
 同報告書においては、新世代ネットワークを世界に先駆けて実現し国際競争力を確保するため、新世代ネットワークの研究開発の推進、産学官連携のためのフォーラム設立の必要性が示された。
 これを受け、総務省は新世代ネットワーク基盤技術に関する研究開発を最重要なテーマとして中長期的な視点で推進している。また、産学官の連携による「新世代ネットワーク推進フォーラム」(平成19年11月設立)等を通じて我が国の英知を結集し、新世代ネットワーク実現に向け、我が国として重点化すべき研究開発項目、社会経済的側面、国際標準化戦略の検討等を実施している9
 ITU-Tでは、FG-FN(Focus Group on Future Networks)において、平成21年6月から22年12月まで新世代ネットワークに関する検討がなされたが、その後SG13に引き継がれ、平成23年5月20日にY.3001(新世代ネットワークの方向性を示すビジョン文書)が勧告として承認された。

イ IPアドレス・ドメイン名の適切な管理
 インターネット利用に必要不可欠なIPアドレスやドメイン名については、重複割当の防止等全世界的な管理・調整を適切に行うことが極めて重要である。現在、インターネット資源の国際的管理・調整は、民間の非営利組織であるICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が行っており、総務省は、ICANNの政府諮問委員会(各国政府の代表者等から構成)の正式登録メンバーとして、国際的な協力体制の確立に取り組んでいる。
 ドメイン名については、ICANNにおいて、平成21年11月より「多国文字による国別トップレベルドメイン」の受付が開始された。我が国における「多国文字による国別トップレベルドメイン」については、情報通信審議会情報通信政策部会に設置されている「インターネット基盤委員会」において検討され、平成21年7月に答申を受け、文字列としては「.日本」が適当であるとされた。また、その管理運営事業者は民間で設立された「日本インターネットドメイン名協議会」において、平成22年10月、(株)日本レジストリサービスが選定され、総務省に報告された。
 また、ICANNにおいては、引き続き「地理的名称に関連する新たな分野別トップレベルドメイン」の導入策についての検討が進められており、総務省としては、これらの新たなトップレベルドメインの導入促進等について検討を行っている。


7 IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/ipv6_internet/index.html
8 IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース:http://kokatsu.jp
9 参考:「新世代ネットワーク推進フォーラム」:http://forum.nwgn.jp/
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