第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第2章 浮かび上がる課題への対応

(2)ICT利活用の際の不安


●全体としては、情報活用能力が高いほど不安は低くなる傾向

 今回、このような結果を踏まえつつ、ICT機器の取扱能力に加えて、ICTの安全性の理解状況も含めた広い意味での情報活用能力に着目し、国民利用者に対する意識調査を行った1
 調査に当たって、まず、情報活用能力の程度を3段階に分類(図表2-1-1-5)し、情報活用能力とICT利活用における不安とがどのような関係にあるのか分析を行った(図表2-1-1-6)。その結果、全般的な傾向としては、情報活用能力レベルが高いほど、不安は低くなる傾向がみられた。

図表2-1-1-5 情報活用能力のレベルとアンケート設問の選択肢の対応表
図表2-1-1-5 情報活用能力のレベルとアンケート設問の選択肢の対応表
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

図表2-1-1-6 ICT利用の際の不安
図表2-1-1-6 ICT利用の際の不安
全般的には、情報活用能力が高いほど不安は低くなる傾向
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

Excel形式のファイルはこちら
 ただし、「災害時の通信障害」、「監視カメラ等自動的な撮影」、「知的財産の保護」、「ネットの制度・慣行」については、必ずしもその傾向がみられなかった。これらに対する不安は、自身の能力向上だけでは解消(回避)が難しいものであり、能力があり一定の知識があるからこそ、不安を感じる項目なのではないかとも考えられる。
 特に、情報活用能力と「ネット活用全般」、及び情報活用能力と「プライバシー」、「ウイルス」、「個人情報の流出」(不安を感じる割合の高い上位3項目)との関係を見てみたところ、いずれの項目についても、情報活用能力が高いほど、不安感が小さくなる傾向がみられた(図表2-1-1-7)。

図表2-1-1-7 ICT利用の際の不安(情報活用能力別)
図表2-1-1-7 ICT利用の際の不安(情報活用能力別)
4分野いずれも、情報活用能力が低いグループほど、不安が大きい
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

Excel形式のファイルはこちら
●不安の低下には、情報活用能力以外に、安全性の理解も重要

 次に、インターネット利活用に係る安全性理解2の有無に応じて、「ネット活用全般の不安」を見てみたところ、理解している方が不安の割合が低くなった(図表2-1-1-8)。特に、情報活用能力別に、「安全性の理解」の有無に応じた「ネット活用全般の不安」の違いを見てみると、全般的な傾向としては、情報活用能力が低下するにつれて、不安を感じる割合は高まっている(図表2-1-1-9)。また、情報活用能力の各レベルにおいて、安全性を理解していない人は、理解している人に比べて不安が高い傾向がみられる3。この結果から、今後、不安を払拭するためには、情報活用能力の向上とともに、安全性の理解を促していくことも重要であると考えられる。

図表2-1-1-8 ネット利活用に係る安全性理解と不安感(ネット活用全般)
図表2-1-1-8 ネット利活用に係る安全性理解と不安感(ネット活用全般)
安全性についての理解が高いほど、不安感が低くなる
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

Excel形式のファイルはこちら
図表2-1-1-9 情報活用能力別の安全性理解と不安感(ネット活用全般)
図表2-1-1-9 情報活用能力別の安全性理解と不安感(ネット活用全般)
情報活用能力以外に、安全性への理解の有無も不安感に影響
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

Excel形式のファイルはこちら
 なお、情報活用能力別に安全性理解の状況をみると、情報活用能力が低い人では3割程度しか安全性を理解していない状況である。そのため、特に情報活用能力が低い人に対して、安全性の理解を促し、不安を緩和すべきと考えられる(図表2-1-1-10)。

図表2-1-1-10 情報活用能力別の安全性理解の状況
図表2-1-1-10 情報活用能力別の安全性理解の状況
情報活用能力が低い人では3割程度しか安全性を理解していない
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

Excel形式のファイルはこちら

1 日本国内のインターネット利用者を対象としたウェブ調査を行い、年代別割り付けを行って1,800人の回答を得た。調査の概要については、付注3を参照
2 回答者のインターネット利用上の安全性に関する知識(トラブルの予防方法や解決方法についての知識)の理解状況について、(1)良く理解している、(2)それなりに理解している、(3)あまり理解していない、(4)理解していない、の4段階で質問を行い、(1)(2)の回答者を「理解している」、(3)(4)の回答者を「理解していない」と整理した
3 情報活用能力が「高」の場合、安全性を理解していないとした人の回答数が少ないため(N=13)、留意が必要である。
テキスト形式のファイルはこちら