第1部 東日本大震災における情報通信の状況
第4節 情報通信が果たした役割と課題

コラム 阪神・淡路大震災時における情報通信の役割


 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災においては、最大時30万を超える加入電話に障害が発生するなど、ライフラインである情報通信ネットワークに大きな被害が生じ、救援・復旧活動等に支障が生じた一方で、地元の放送局やパソコン通信、インターネット等が災害情報提供に威力を発揮し、平成7年版及び平成8年版通信白書等においても取り上げた。特に、平成7年当時、普及が始まった段階であった携帯電話やインターネットについて、その災害時における重要性が認識された。また、日本の「ボランティア元年」といわれた中、情報ボランティアネットワークが誕生した。さらに、初めての「臨時災害放送局」が開設された。
 ここでは、過去の通信白書の記述等を参考に、特徴的な事項を取り上げる。

1. 携帯電話による情報交換
 携帯電話は、平成6年度末時点で約433万契約(携帯・自動車電話サービスの総契約数)であり、当時、普及の進展期にあった。この結果、地震発生直後から、被災地では安否確認、緊急通信、受話器はずれ等のため通話量が急増し、電話回線が輻そうしたものの、初期数日、携帯電話は一般電話より通じやすかった(しかし、その後、外部からの大量持ち込みでつながりにくくなった。)1。平成8年版通信白書によれば、被災地への救援活動や復旧活動のために各地から被災地にきたボランティア等は、携帯電話を使用することにより互いに連絡を取りながら機動的に活動することができたという例や、ある大手スーパーでは、阪神・淡路大震災後の道路渋滞の際において、各店舗等が携帯電話を使用して物流情報をやりとりしたという例があった。兵庫県では、阪神・淡路大震災後、携帯電話に対するニーズが高まり、携帯・自動車電話の加入者の増加率が全国の増加率と比べても大きくなった。

2. 情報ボランティアネットワークの誕生
 阪神・淡路大震災においては、数多くのボランティアがその救済や復興のために活躍した。特に、社会人や学生がボランティアとして参加し、この年は「ボランティア元年」と呼ばれた2。そして、情報ネットワーク重視型の新しいタイプのボランティア活動を誕生させる契機ともなった3

3. パソコン通信やインターネットによる災害情報の発信
 インターネットは、日本では、平成5年に商用インターネットサービスが始まった段階であり、当時は普及のれい明期であった。阪神・淡路大震災では、地元の大学や企業をはじめ、多数の大学・研究機関や企業がインターネットを通じて、被災地の画像、安否情報、地震に関する学術情報等を世界に発信した。神戸市はインターネットを利用して、焼失地域の地図、避難所一覧、静止画像による被災地の状況等の情報を発信した。
 また、パソコン通信のニフティサーブが、震災発生当日の午後1時に開設した「地震情報」メニューは、翌日午後6時までに、総アクセス件数約101万件、総アクセス時間数270万分に達した。そして、復旧活動の本格化に伴い、26日には、ボランティア情報や救援物資の流通円滑化を目的とする「震災ボランティアフォーラム」が開設され、多数のボランティア団体を結ぶ役割を果たす場を提供した。
 さらに、平成7年3月には、商用パソコン通信3社(同年4月までに6社)のネットワークをインターネットにより接続し、情報共有化を図る試みである、「インターVネット」が創設された。これにより、各ネットワークの掲示板又はインターネット上のニュースグループに書き込まれた情報が、インターネットを経由して自動的にパソコン通信ネットワーク及びインターネット上を流通することになり、別々に機能していた複数のネットワークの相互乗り入れを可能にし、ボランティア団体、企業、行政、マスコミ等を結ぶ情報ボランティアネットワークとしての役割を果たした。

4. 臨時災害放送局の開設
 阪神・淡路大震災においては、平成7年2月から3月まで、兵庫県によって臨時災害放送局「FM796-フェニックス」が開設され、被災地における住民等に対し、その救援に資する生活情報(震災関係情報、ライフライン復旧状況、交通情報等)のきめ細かな提供がなされた。
 阪神・淡路大震災の教訓を生かし、被災者向けに災害関連情報(避難情報、安否情報、ライフライン情報、生活情報等)をきめ細かに提供する地域に密着した災害放送が速やかに開始できるように「臨時災害放送局」の開設を可能とする措置が当時講じられた。


1 内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」http://www.bousai.go.jp/1info/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/1-2-1.html
2 経済企画庁(現内閣府)「平成12年度国民生活白書」http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/wp-pl/wp-pl00/hakusho-00-1-14.html
3 平成11年版通信白書でも取り上げたところである。http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h11/html/B1322000.htm
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