第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第3章 「共生型ネット社会」の実現がもたらす可能性

第1節 ユビキタスネットワーク社会の現実化


1 ユビキタスネットワーク社会の現実化

●ICTは社会に深く浸透し、国民生活や企業活動を支える社会的基盤となり、「ユビキタスネットワーク社会」は、ビジョンではなく現実のものになりつつある

 平成16年版情報通信白書では、「「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がネットワークに接続し、情報の自由なやり取りを行うことができるユビキタスネットワーク社会が実現に向かいつつある。」と記載したところである。
 約7年が経過した現在、インフラ面については、光、DSL、ケーブルテレビ等の有線網、3G、WiMAX、LTE、無線LAN、フェムトセル等無線網等、ネットワークの多様化、シームレス化が進み、全国どこでもブロードバンドサービスを利用可能な環境が整備されてきている。
 デバイスについては、パソコン、携帯電話、テレビ等家電、ゲーム機器、タブレット型端末、デジタルサイネージ等ネットワーク接続端末の多様化が進み1、スマートフォンの急速な普及2に象徴されるように、多様化・高機能化が進んでいる。
 このような環境の中で、ICTサービスも大きく進化し、人々はその恩恵を特段意識せず豊かな生活を享受できるようになっている。例えば、個人の購買行動においては、購買行動の前にICTを用いて検索、比較、検討をする等ICTを用いて得た情報を意思決定に活用し、購買行動の後に、ICTを用いて自らの評価を他人と共有する3等の動きが浸透してきている。また、あらかじめ登録した年齢、性別、趣味・関心、居住地、通勤経路といった情報、GPS等による現在の位置情報、行動履歴、行動パターン等に基づき、各種の最新情報が提供されたり、その時、その場所、その人に向けたおすすめが表示される等のサービスが提供されつつある。さらに、より進化した位置情報技術、インターフェース技術、センサー技術等により、社会の幅広い分野でICTサービスの介在を特段意識せずその恩恵を享受できる環境が整備されつつある4。また、SNSをはじめとするソーシャルメディアの利用により、人々は、お互いに気軽に知人・友人の日常を知り、経験や感情を共有することができる。
 企業活動においても、ICTは、製造・流通過程、金融、交通、エネルギー等の社会インフラ、医療、教育、行政等の公的サービスに深く組み込まれ、社会・経済活動の効率性の向上や新たな価値の創造に大きく貢献している。
 このように、ICTは社会に深く浸透し、国民生活や企業活動を支える社会的基盤となっているところであり、「ユビキタスネットワーク社会」は、今やビジョンではなく現実のものになりつつあるといえよう。


1 平成22年通信利用動向調査によると、個人のインターネット利用における利用端末は、パソコンからが92.0%、モバイル端末(携帯電話、PHS、PDA及びタブレット型端末を指す)からが83.3%、ゲーム機・TV等からが7.6%となっている
2 スマートフォンの出荷台数は、2010年7月から9月までの155万台が、2011年1月から3月までの389万台と約2.5倍に拡大した。また、全携帯電話出荷台数に対するスマートフォン出荷台数の比率は、2010年7月から9月までの17.9%が、2011年1月から3月までの44.9%に上昇した(出典:IDC Japanの2010年12月13日、同月27日及び2011年6月9日プレスリリース)
3 購買行動におけるAIDMA (attention,interest,desire,memory,action)からAISCEAS(attention,interest,search,comparison,examination,action,share)への変化の詳細分析については、第1章参照
4 位置情報技術やセンサー技術を用いた老人、児童等の見守りサービスや、センサー技術を用いた人の動きの感知、AR技術の利用等による、より人に優しいインターフェースも開発、実用されつつある
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