第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第1章 ICTにより国民生活はどう変わったか

(2)携帯インターネットの普及


 携帯インターネットにおいては、今から10年前の平成13年10月、我が国では世界に先駆けて第3世代携帯電話の本格提供が開始された。平成11年に開始された携帯インターネットの加入数(図表1-2-1-9)は、この時点ですでに4,000万加入を突破していたが、その後も飛躍的な拡大を遂げ、今日、生活の必需品として、必要不可欠な存在となっている。ここからは、提供開始以降の携帯インターネットの推移から、携帯インターネットの普及が与えた影響について、みていくことにする。

図表1-2-1-9 携帯IP接続サービス累計契約数の推移
図表1-2-1-9 携帯IP接続サービス累計契約数の推移
開始から平成19年までの間、前年比5%以上の成長を継続
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)

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●新たなビジネスモデルが誕生し、コンテンツが充実。eメールの送受信などのサービスも拡充し、携帯インターネットが拡大

 携帯電話からインターネットに接続する携帯IP接続サービスは、平成11年にNTTドコモのiモードサービス及び現KDDIのEzwebサービス、平成12年には現ソフトバンクモバイルのJスカイサービスが開始され、携帯電話において電子メールの送受信や携帯向けインターネットサイトの閲覧ができるようになった。携帯向けインターネットサイトの閲覧が可能になったことで、気に入ったコンテンツや便利なサービスを提供するサイトのコンテンツプロバイダと契約し、毎月の会費を通話料と一緒に払う新たなビジネスモデルが誕生し、それをきっかけとして様々なコンテンツの提供が拡大されていった。また、平成13年には、現ソフトバンクモバイルより「写メール」が登場したことをきっかけに、平成14年には、携帯電話3大キャリアにおいて、メールによる画像送受信サービスが提供されるなど、サービスの拡充が進んだ。その結果、契約数は開始当初から急激に拡大し、平成19年までの間、前年比が5%以上の成長を継続した(図表1-2-1-9)。

●携帯インターネットの急速な拡大により、インターネットのパーソナル化が進展

 一方、インターネットを利用する際、携帯電話、PHS及び携帯情報端末(PDA)等のモバイル端末を利用する人の割合の推移(図表1-2-1-10)は、平成14年から平成17年にかけて急激に拡大している。これは、平成15年に携帯インターネットを対象としたパケット定額サービスが各社から提供され、料金を気にすることなく、携帯インターネットが利用できるようになったことが大きな要因と考えられる。この時期のインターネット普及は成熟期に当たり、新たにインターネット利用を開始した人は多くはない。このことから、普段パソコンからインターネットを利用していた人が、携帯インターネットも利用するようになったことで、携帯インターネットが拡大したと考えることができる。つまり、自宅などの固定インターネットに限らずに、個人それぞれがインターネット接続できる環境が整ったという意味で、インターネットのパーソナル化が進んだと考えられる。

図表1-2-1-10 インターネットを利用する際、モバイル端末を利用する人の割合の推移
図表1-2-1-10 インターネットを利用する際、モバイル端末を利用する人の割合の推移
モバイル端末でインターネットを利用する人は、平成14年40.2%から平成17年81.2%と3年間で倍増
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(総務省「通信利用動向調査」により作成)

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●インターネットのパーソナル化だけでなく、携帯インターネット回線そのもののリッチ化も進展

 インターネットのパーソナル化により、利用者はいつでもどこでも自分の好きなタイミングでインターネットに接続できる状態になったが、これに伴って利用形態の変化は起こったのであろうか。平成13年には、第2世代携帯電話に代わり、高速データ通信を実現する第3世代携帯電話が登場し、その後乗り換えが進み、平成22年度末時点で98.8%が第3世代携帯電話となっている(図表1-2-1-11)。その結果、インターネット接続のパーソナル化だけでなく、携帯インターネットそのものの高速化・大容量化(リッチ化)も進展した。

図表1-2-1-11 第2世代・第3世代携帯電話の累計契約数の推移
図表1-2-1-11 第2世代・第3世代携帯電話の累計契約数の推移
平成13年に登場した第3世代携帯電話は、平成22年度末時点で98.8%に
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)

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●新たなビジネスモデルをベースに、パーソナル化とリッチ化のメリットを活かしたサービスが生まれ、利用が拡大

 iモードやEzweb、Jスカイなどにより、新たなビジネスモデルをベースにしたコンテンツが拡大してきたが、携帯インターネットで利用した機能・サービスの目的・用途の推移(図表1-2-1-12)を見てみると、第3世代携帯電話が利用され始めた時期に新たな動きがあったことがわかる。平成16年と平成22年とを比較すると、「動画投稿サイト」「電子ファイルの交換・ダウンロード(P2P、FTPなど)」「地図情報提供サービス」といった新たなサービスが登場し、利用されるようになった。また、「商品・サービスの購入・取引」「メールマガジンの利用」「ソーシャルネットワーキングサービス」といった項目で利用者が増加している。この間、携帯電話インターネットにおいては、新たなビジネスモデルが誕生している。前述したように、携帯インターネット拡大はパーソナル化と、高速化・大容量化というリッチ化につながったが、近年、そのパーソナル化とリッチ化のメリットを活かした多種多様なサービスが生まれ、人々は、個々の必要に応じた適切なサービスを利用できるようになったと考えられる。

図表1-2-1-12 携帯電話(PHS・PDAを含む)からインターネットで利用した機能・サービスと目的・用途の推移
図表1-2-1-12 携帯電話(PHS・PDAを含む)からインターネットで利用した機能・サービスと目的・用途の推移
携帯電話(PHS・PDAを含む)からインターネットで利用した機能・サービスと目的・用途の推移
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(総務省「通信利用動向調査」により作成)
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