第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第3章 「共生型ネット社会」の実現がもたらす可能性

(2)「共生型ネット社会」への期待


●ソーシャルメディアをはじめICTの利活用を進め、「共生型ネット社会」の実現をめざす中、ICTが不安の解消、人と人との支え合い、国民の幅広い層の包摂を実現することが期待される

 これまで、過去、現在を振り返った上で、ソーシャルメディアのポテンシャルが大きいことを確認し、ソーシャルメディアの利用が進み、国民生活に浸透した場合にもたらされるICT社会像として、「共生型ネット社会」を構想した。
 「共生型ネット社会」は、ソーシャルメディアをはじめとするICTが自然に社会に溶け込み、サイバー空間でのつながりやICTの利活用を、不安の解消、人と人との支え合い、国民の幅広い層の包摂等の形で実社会につなげている社会、又はそれらの実現が期待される社会4といえる。換言すれば、社会に溶け込んだICTの恩恵が国民に幅広くひ益し、国民が生活の豊かさを享受することができる社会ということもできるだろう。
 上述した課題に対する取組を利用者本位で行い、また、ソーシャルメディアの利用に伴い将来顕在化しうる問題について適宜適切に対処を行うことにより利用に伴う負の影響を最小化し、「共生型ネット社会」の実現をめざす中、ソーシャルメディアをはじめとするICTの恩恵を国民が十分実感できるようにしなければならない。
 特に、被災という出来事を経験した日本で、人と人との支え合い、地域と地域との支え合い、絆の再生、形成、身近な不安の解消、地域コミュニティの問題解決等が求められる現在、「共生型ネット社会」の実現をめざし、ICTが、支え合い、絆の再生、形成、身近な不安の解消、地域コミュニティの問題解決等に貢献していくことが強く求められている。


4 ICTにより社会の幅広い層を包摂する取組として、例えば、現在、脳波通信、マルチモーダルインターフェース(音声認識、ジェスチャーインターフェース等五感の組み合わせによるインターフェース)等の研究が推進されている。諸外国でも同様の問題意識での取組が進められており、EUでは、「eインクルージョン」(2006年公表)の[1]すべての人々のICT利用促進、[2]高齢化施策、[3]デジタルリテラシー向上、[4]少数民族・移民の包摂、[5]過疎地等の福祉向上、[6]電子政府推進の6項目を、「デジタルアジェンダ」(2010年公表)で継承し推進している。具体例に、AAL-JP(Ambient Assisted Living Joint Programme)では、高齢者の生活の質的向上を図るため、[1]衣服に織り込まれたウェアラブル・ボディー・センサーで高齢者の健康状態を把握、[2]一人暮らしの高齢者が転倒して身動きが取れなくなるような事態を神経形態学的画像センサーによりリアルタイムで検知するなどのプロジェクトを推進している
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