第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第2章 浮かび上がる課題への対応

(2)ICTを活用した社会的包摂の必要性


●核家族化の進行とともに、「単身世帯」、「高齢者単身世帯」、「ひとり親世帯」が増加傾向

 最近の我が国の社会的課題をみると「孤立化」という新たな社会リスクの高まりが挙げられている。「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)においても、「近年、「孤立化」という新たな社会リスクが急激に増加している。人は誰しも独りでは生きていけず、悩み、挫け、倒れたときに、寄り添ってくれる人がいるからこそ、再び立ち上がれる。かつて我が国では、家族や地域社会、そして企業による支えが、そうした機能を担ってきた。それが急速に失われる中で、社会的排除や格差が増大しており、老若男女を問わず「孤立化」する人々が急増している。」という認識が掲げられている。
 このような「孤立化」のおそれがある典型的な世帯属性として「単身世帯」、「高齢者単身世帯」、「ひとり親世帯」が挙げられる。例えば、「単身世帯」については同年代の単身以外の人に比べて自殺率が高いというデータが報告されている(図表2-2-2-3)。また、これらの世帯は、今後、増加が予想されている(図表2-2-2-4)。例えば、単身世帯率は、既に世帯全体の1/4以上を占める。また、ひとり親世帯も増加傾向にあり、特に母子世帯では所得水準も低くなっている4

図表2-2-2-3 「年代×男女×同居人の有無」別の自殺率(2009年試算値)〜人口10万人当たり自殺率と自殺者数〜
図表2-2-2-3 「年代×男女×同居人の有無」別の自殺率(2009年試算値)〜人口10万人当たり自殺率と自殺者数〜
(出典)「一人ひとりを包摂する社会」特命チーム 第1回会合(平成23年1月18日)

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図表2-2-2-4 世帯構成の推移と見通し
図表2-2-2-4 世帯構成の推移と見通し
(出典)厚生労働省「平成22年版厚生労働白書」
(総務省統計局「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(2008年3月推計)」により作成)

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 このような「孤立化」する人々の増大に対して、支え合いのネットワークから誰一人として排除されることのない社会、すなわち、「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指すことが掲げられており5、こうした社会の実現のため、ICTによるネットワーク形成が一定の役割を果たすことが期待される。


4 「平成21年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によれば、1世帯当たりの平均所得金額は、母子世帯で231.4万円、全世帯で547.5万円
5 第174回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説(平成22年6月11日)(「一人ひとりを包摂する社会」の実現)
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