第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第1章 ICTにより国民生活はどう変わったか

(2)IP電話の開始


 従来の回線交換とは異なるIP(Internet Protocol)の技術を応用したIP電話の進展は、従来の回線交換型の電話(固定電話)に対して、どのような影響を及ぼしたのであろうか。

●従来の固定電話と同様に緊急通報(110番等)等への通話も可能なIP電話が開始され、主にFTTH契約者において利用が進展

 IP電話は平成13年に提供が開始され、その後、平成14年には050から始まる電話番号のIP電話への付与が開始され、平成17年までの間、ブロードバンドの増加に伴い、主にDSL利用者によるIP電話の契約が増加した(図表1-2-2-2)。従来の固定電話と比べて通話料金が廉価であること4、一部の利用者同士では無料で通話ができることなどが増加の要因として考えられる。平成17年には、「0AB〜J」から始まる電話番号5を利用し、従来の固定電話と同様に緊急通報(110番・118番・119番)等への通話も可能なIP電話が開始され、主にFTTHの契約者において利用が進み、平成20年には1,000万契約を超え、「050型」IP電話の契約者数を上回った。

図表1-2-2-2 IP電話の普及率とブロードバンドの普及率の推移
図表1-2-2-2 IP電話の普及率とブロードバンドの普及率の推移
IP電話の普及率とブロードバンドの普及率の推移
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)

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●「050型」には一定程度の新規需要、「0AB〜J型」IP電話は固定電話からの乗り換えもあった

 IP電話の開始以降、固定電話の契約数はどのように変化しているだろうか。図表1-2-2-3から、IP電話の開始以降も、両者を合わせると約6,000〜7,000万契約で推移しているが、IP電話を「050型」と「0AB〜J型」に分けると、その傾向に違いがあることがわかる。「050型」IP電話の増加に伴い、全体数では、今までの減少傾向から増加傾向に転じており、一定程度の押上げ効果があったと考えられる。一方、「0AB〜J型」IP電話については、その増加に伴う全体数の増加傾向はみられなかった。さらに、平成13年から16年の間で平均0.9%の減少傾向だったものが、平成17年から21年では平均7.1%の減少傾向となるなど、「0ABJ型」IP電話開始以降には固定電話の減少傾向が強くなっている。IP電話が固定電話に比べて低価格であることに加え、FTTH利用者であれば、容易に加入することができたため、一定程度、乗り換えが起きたと考えられる。

図表1-2-2-3 IP電話利用数・固定電話加入者数・ブロードバンド契約数の推移
図表1-2-2-3 IP電話利用数・固定電話加入者数・ブロードバンド契約数の推移
IP電話利用数・固定電話加入者数・ブロードバンド契約数の推移
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)

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4 平成19年版〜平成22年版情報通信白書においては、IP電話の需要が伸びてきた要因の一つとして、料金が安いことを挙げている
5 03-××××-××××等の10桁で利用される番号
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