第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

第7節 国際戦略の推進


1 国際政策の推進

(1)アジア・太平洋地域における国際政策の推進

ア アジア・太平洋経済協力(APEC)における活動
 アジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)は、アジア太平洋地域の持続可能な発展を目的とし、域内の主要国・地域が参加する国際会議である。電気通信分野に関する議論は、電気通信・情報作業部会(TEL:Telecommunications and Information Working Group)及び電気通信・情報産業大臣会合(TELMIN:Ministerial Meeting on Telecommunications and Information Industry)を中心に行われている。
 総務省は、自由化分科会(LSG:Liberalization Steering Group)議長を担当するとともに、我が国の情報通信政策の紹介及び研究開発プロジェクトの実施等を通じ、APEC参加国・地域間で共有すべき目標である「ユニバーサル・インターネット・アクセス」及び「ユニバーサル・ブロードバンド・アクセス」の推進等、APECの情報通信関連活動に積極的に貢献している。
 2010年(平成22年)10月には、我が国がAPEC議長となり、神奈川県横浜市での首脳会議をはじめとする、様々なAPEC関連のハイレベル会合が開催された。2010年10月には、沖縄県名護市において、APEC21全エコノミーの参加の下、TELMIN8が開催され、共同議長の片山総務大臣と松下経済産業副大臣の下で、APEC内の電気通信・情報産業政策について議論が行われるとともに、情報通信分野に関してAPECとして目指すべき共通目標を定めた「沖縄宣言」が採択された1図表5-7-1-1図表5-7-1-2)。沖縄宣言では、電気通信・情報産業は社会経済活動における重要な要素であり、社会経済の新たな成長を牽引していく分野であるとの認識の下、今後取り組むべき方策を共有し、協力していくことが確認され、また、これらの内容は首脳会議で採択された首脳宣言にも盛り込まれた。

図表5-7-1-1 APEC第8回電気通信・情報産業大臣会合(沖縄宣言)の概要
図表5-7-1-1 APEC第8回電気通信・情報産業大臣会合(沖縄宣言)の概要

図表5-7-1-2 APEC第8回電気通信・情報産業大臣会合 大臣会合出席者によるフォトセッション(2010年(平成22年)10月、於:沖縄県名護市)
図表5-7-1-2 APEC第8回電気通信・情報産業大臣会合 大臣会合出席者によるフォトセッション(2010年(平成22年)10月、於:沖縄県名護市)

イ アジア・太平洋電気通信共同体(APT)における活動
 アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Pacific Telecommunity)は、1979年(昭和54年)に設立されたアジア・太平洋地域における情報通信分野の国際機関であり、同地域における電気通信や情報基盤の均衡した発展を目的として、研修やセミナーを通じた人材育成、標準化や無線通信等の地域的政策調整等を行っている。
 我が国は、2008年(平成20年)から事務局長を輩出するなどAPTの活動を人的な面で支えるほか、特別拠出金を通じて、APTが行う研修や国際共同研究、デジタル・ディバイド解消のためのパイロットプロジェクトへの支援を行うなどの貢献を行っている。2010年度(平成22年度)には、APTは同地域の人材育成を行う研修を我が国で10件(計100名程度が参加)行ったほか、遠隔医療をはじめとする国際共同研究を7件、パイロットプロジェクトをラオス、フィリピンで実施した。我が国は、アジア・太平洋地域の発展のため、2011年度(平成23年度)も引き続き特別拠出を通じた貢献などに積極的に取り組んでいく予定である。
 また、2010年(平成22年)5月には、アジア・太平洋地域の電気通信とICTインフラの開発を促進すること目的としたAPT開発フォーラム(ADF:Asia-Pacific Telecommunications and ICT Development Forum)が東京で行われ、次世代IPネットワーク、ICT進展のためのグリーンテクノロジーをはじめとする技術・サービスや、ブロードバンド経済の進展等に関する意見交換がなされた。2011年度(平成23年度)には、災害管理ワークショップ(Workshop on Disaster Management / Communications)や島しょ国向けワークショップ(Pacific Workshop)といった複数のAPT関連会合が日本で開催される予定である。

ウ 東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との協力
 総務省は、アジア地域における国際協力を一層強化していくため、東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of South-East Asian Nations)諸国との間で、要人を迎えての政策協議や、政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)を活用した技術協力プロジェクト、専門家派遣・研修・セミナー等の人材育成施策等を実施している。
 また、2011年(平成22年)4月から、ASEAN諸国に対するICT分野の国際展開に係る官民協力を一層推進するとともに、日本とASEAN諸国との間の協力関係強化を目指して、「日ASEAN官民協議会」を開催している。
 2011年(平成23年)1月には、マレーシアのクアラルンプールにおいて、日本とASEAN加盟10か国における情報通信大臣会合を開催し、片山総務大臣出席の下、日本とASEANとの情報通信分野における協力等について意見交換を行うとともに、今後1年間の作業計画である「日本とASEANの情報通信分野における作業計画2011」を取りまとめた2。また、我が国は、ASEAN地域とのICT分野の協力関係を強化する観点から、引き続き、我が国の拠出金により調査研究やパイロットプロジェクト、セミナーの開催等の支援を行うことを表明した。今後、この作業計画に基づいて、ASEAN地域のインフラ整備、先進的なICT利活用方法の協力を推進していくこととしている。
 具体的取組としては、2011年(平成23年)2月に、東京において、「第2回日中韓によるASEAN向け人材育成ワークショップ」を開催したほか、2011年3月には「第3回日・ASEAN情報セキュリティ政策会議」を東京で開催し、日本とASEAN各国の高級事務レベルの参加の下、日本とASEAN各国との間で情報セキュリティに関する意見交換を行い、情報セキュリティ政策や意識啓発等における協力を一層推進することで一致した。


1 APEC電気通信・情報産業大臣会合の結果概要(沖縄宣言):http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin08_01000002.html
2 日・ASEAN情報通信大臣会合の結果:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39369.html
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