第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

コラム クラウドサービスの利用状況の日米比較


 クラウドコンピューティングは、ネットワーク上に存在するコンピュータ資源(リソース)を活用するための利用技術の発展成果である。このクラウドコンピューティング技術を活用したサービスであるクラウドサービスは、利用者が必要なコンピュータ資源を「必要な時に、必要な量だけ」サービスとして利用できる、従来とは全く異なる情報通信システムの利活用策であり、情報通信分野におけるパラダイムシフトが起きつつある。
 平成22年5月、総務省「スマート・クラウド研究会報告書」において、日米両国におけるクラウドサービスに関する企業ユーザーの利用意向について、企業等のシステム導入の意志決定に関与する役員等へのアンケート調査を実施したが、今回、同様のアンケート調査を実施1し、企業側の意識の変化を調査した。

●日米間での利用実績は2.5倍の差

 クラウドサービスの利用実績について日米間で比較をしたものが、図表1である。日米の企業で、実際にクラウドサービスを利用した実績でみると、「利用している/利用していた」との回答は、日本の26.1%に対し、米国は64.0%となっており、日米間では2.5倍の差がある。しかし、2009年度は、日本の14.8%に対し、米国は56.2%となっており、3.8倍の差があったことから、日米間での利用実績の差が縮小しつつあることがわかる。

図表1 クラウドサービスの利用実績の日米比較(2009年度及び2010年度)
図表1 クラウドサービスの利用実績の日米比較(2009年度及び2010年度)
総務省「スマート・クラウド研究会報告書」(平成22年)及び総務省「スマート・クラウド戦略に関するプログレスレポート(第1次)」(平成23年)により作成

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●日本企業においても、クラウドサービスが徐々に浸透しつつあるものの、日米間では依然として格差が存在

 クラウドサービスの浸透度及び利用実態・意向について日米間で比較をしたものが、図表2である。日本企業においては、昨年度と比較すると、クラウド浸透度及び利用実績/利用意向の双方が高い「実利用フェーズ」段階の比率が大企業においては、18.3%から43.5%へと25.2%、中小企業においても9.1%から22.5%へと13.4%増加しており、徐々にクラウドサービスが浸透していることがうかがえるものの、他方日米間で比較すると、日本は大企業において米国の5割強、中小企業において4割程度にとどまっており、日本においては、今後さらにクラウドサービスが浸透することが予想される。

図表2 クラウドサービスに関する浸透度と利用実態・利用意向(2009年度及び2010年度)
図表2 クラウドサービスに関する浸透度と利用実態・利用意向(2009年度及び2010年度)
総務省「スマート・クラウド研究会報告書」(平成22年)及び総務省「スマート・クラウド戦略に関するプログレスレポート(第1次)」(平成23年)により作成


1 日本(2010年度:2011年3月、2009年度:2009年11月)及び米国(2010年度:2011年3月、2009年度:2009年11月)において、パネルを利用したインターネット調査として、2010年度は日本:515サンプル、米国:500サンプル、2009年度は日米両国500 サンプルを対象に実施。大企業は従業員数300名以上、中小企業は従業員数300名未満とし、2010年度の日本の大企業・中小企業は、2009年度調査結果を参考にウェイトバック後の数値を使用した
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