第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第2章 浮かび上がる課題への対応

(1)他団体との協働や地域内外の人を巻き込んで地域活性化を成功


ア ICTによる林業の効率化により美しい森林を守る百年の森システム (岡山県英田郡西粟倉村)

●適切な人材確保によりICTを使って効率化を図るとともに、村役場と森林協会の協働により地域を活性化

 西粟倉村では、主要産業である林業の再生を図り、美しく豊かな森林を創造する「百年の森林事業」に取り組んでいる。この事業は、森林所有者から施業に関する長期委託契約を西粟倉村役場・美作森林組合が締結し、森林管理の大規模化による効率化・高度化を図るものである。
 事業の特徴は次の3つにまとめられる。第一に、高齢化した村内の森林所有者や村外に転出した所有者から造林や伐採等の施業を村役場と森林組合が長期契約で受託し、森林の荒廃を防ぐとともに、施業の大規模化・効率化を図ること。第二に、都市部住民等を対象にファンドを組成し、その資金で施業用の機械を購入し、森林組合に貸し出すことで施業の高度化・効率化を図ること。第三に、商社機能を持った企業を村内に設立し、村産品の高付加価値化とともに、前述のファンド出資者を基とする都市部住民との交流を図ることである。
 この事業では、出荷した林産品の収益や集団化した施業のコストを所有者ごとに管理する必要があり、これらの業務を効率化するために、ucode22を軸に各種の森林情報の連携や現場とオフィスの連携、インターネットによる所有者への現況公開機能等を導入した。具体的には、外部データセンターにサーバーを設置、集団施業に必要な契約情報や森林管理の情報を蓄積している。村役場に森林管理情報システムを置くとともに、森林組合ともネットワーク接続され、業務管理を支援する機能が提供されている。また、現場に持参できるシステムも導入し、GPSから得た位置情報に基づく森林現況を把握し、役場に設置された端末と情報も共有可能となった。さらに、森林所有者に対して、森林現況をインターネットにて公開する専用ホームページも併せて開設した。このようなICTの導入により、説明書類や図面の作成が大幅に効率化されるとともに、村と組合の情報共有が可能となり、組合業務の効率化も図られた。
 森林という基幹産業にかける村役場の意欲の高さ、村役場及び森林組合の協力関係のほか、村役場、森林組合ともにIターンによる若者の雇用を積極的に受け入れ、ICT利活用の十分なリテラシーを有した人材を確保したことが成功の鍵と考えられる。
 現状では当該地域の森林は間伐が中心であり、今後、伐採に向けた樹木の出荷管理などに向けたシステムに対応していく予定とのことである。

図表2-3-8-1 ICTによる林業の効率化により美しい森林を守る百年の森システム
図表2-3-8-1 ICTによる林業の効率化により美しい森林を守る百年の森システム
(出典)総務省「ICT利活用システムの普及促進に係る調査研究」(平成23年)


22 ucode:現実世界のさまざまな「モノ」や「場所」などを識別するための固有識別番号。「コンテンツ」や「情報」、またより抽象的な「概念」にも付与することが可能。ユビキタスIDセンターで管理している。http://www.uidcenter.org/ja/
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