第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第1章 ICTにより国民生活はどう変わったか

みんなでつくる情報通信白書コンテスト2011 小・中学生の部 優秀賞受賞コラム


わたしとケータイ〜心に響いたメール〜

執筆 香川 えり子(かがわ えりこ)さん (東洋英和女学院中学部 3年(当時))
香川 えり子(かがわ えりこ)さん

コメント:私が落ち込んでいた時にもらったメールは今でもはっきりと全文を思い出すことができます。きっとメールの送り主は特別に想い入れがあるわけではないと思いますが、もらった私にとっては大切な一通です。

 メールのいいところっていろいろある。すぐに返信が来るとか、世界中の人と交信できるとか。でも私が一番、いいと思うのは顔を見て言えないことを言うことができること。学校の友達に普段は恥ずかしくて言えないようなちょっとした気持ちを、メールの最後のところに書いておくだけですっきりした気分になる。また言われたほうも嬉しい。私が今でも心に残っているのは中学2年の夏にもらったメールだ。

 私は中学2年の5月下旬にダンス部をやめた。文化祭をはじめとする学校行事で華やかな振る舞いをみせるダンス部員は注目の的で、私はそのダンス部をやめるのが不安でならなかった。みんなに根性無しだと思われるし、クラブの友達とも縁が切れてしまうかもしれない。新しく入るクラブでは自分はまったく一人でのスタート。私の心配事は絶えなかった。そのひとつに体育の授業があった。ダンス部をまだやめていない5月の初めから、体育ではダンスの授業をやっていた。6〜7人でグループをつくって踊り、クラスメイトの前で発表するのだが私は当然のようにリーダーを任された。でも私はダンスが特別うまいわけでもないし、リーダーシップもない。ただみんなが私の面子をつぶさないために選んでくれたのだと思う。だからダンス部員でなくなった私は不安でたまらなかった。私よりリズム感もリーダーシップもある子がいるなかで、果たしてみんなは私についてきてくれるだろうか。私は同じグループで仲のいいYさんにダンス部退部についてのメールを送った。またリーダーをやる自信がないことも書いた。メールを送信した数分後、着メロが鳴った。Yさんからのメールを見た私は思わず何度も読み返してしまった。

 そこには私を慰める言葉があり、もちろん私はそれも嬉しかった。でも私の心に響いたのは最後の一行だった。

 「でも、ダンスのグループは今までのように○○がまとめたほうがいいハズ☆」

 私はこの言葉に救われた気がした。Yさんは別に私がリーダーシップに優れていると、褒めてくれたわけではない。ただ今まで通りやってくれていい、そう言っているだけなのだが嬉しくてしょうがなかった。Yさんはこの言葉をそんなに重いものと思っていないかもしれない。でもメールを受け取った私にとっては、本当に励まされる一文だった。

 Yさんはいつも学校で素直に言葉をぶつけてくるような人ではないし、また格好つけた言葉も言わない。飾らない人だから、きっと目を合わせてこの言葉を言うことはできないと思う。メールだからこそぶつけることのできるあたたかく優しい言葉だ。普段、顔を見て言うのは恥ずかしい言葉でもメールなら言うことができる。これって素晴らしいことだと思う。また最後に付け足されたようにある一行の持つパワーはすごいものだと実感した。
テキスト形式のファイルはこちら