第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第2章 浮かび上がる課題への対応

(2)親と子どものICT利活用に対する意識


●子どもの年齢が高い親ほど、子どものインターネット利用に対する不安感が低い

 一方、親が子どもにインターネットを活用させることについては、どのように考えているのだろうか。こちらは、子どもの不安とは逆に、子どもの年齢が高い親ほど、子どもにインターネットを活用させることの不安は減少する傾向がみられる(図表2-1-2-5)。

図表2-1-2-5 子どもにインターネットを活用させることの不安
図表2-1-2-5 子どもにインターネットを活用させることの不安
子どもの年齢が高い親ほど、「不安」という回答割合が低い
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●親と子どもでは、子どもの方がインターネット利用マナーへの注意が低い

 では、親と子どもでは「インターネット利用マナー」に対する意識の差はあるだろうか。
 親は「十分に注意している(41.3%)」、「注意している(52.3%)」との回答が多く、「あまり注意していない(5.7%)」、「注意していない(0.7%)」合わせても6.4%にしかすぎない。一方、子どもは「あまり注意していない(32.0%)」、「注意していない(17.0%)」合わせて49.0%と多い(図表2-1-2-6)。親と子どもでインターネット利用のマナー意識に差異があり、親と比較すると、子どもの方がインターネット利用マナーへの注意が低い傾向がみられる。

図表2-1-2-6 親と子どものネット利用マナーの意識の比較
図表2-1-2-6 親と子どものネット利用マナーの意識の比較
子どもの方がネット利用マナーを注意していない傾向にある
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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 また、「他人のマナーで気になること」については、親、子どもともに「インターネット上の誹謗中傷」が最も割合が高く、全体の傾向としては類似しているが、いずれも子どもの方が「気になる」とした割合が低い(図表2-1-2-7)。こちらも親と比較すると、子どもの方が他人のネットマナーを気にする傾向が低い。

図表2-1-2-7 親と子どもの「他人のマナーで気になること」の比較
図表2-1-2-7 親と子どもの「他人のマナーで気になること」の比較
子どもの方が他人のネットマナーを気にする傾向が低い
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●子どものインターネット利用についてルール決めをしている家庭が多いが、家庭内での意識の相違もみられる

 家庭内におけるインターネット利用について、親子間でインターネット利用に関するルール決め等を行っているとの答えは、「しっかりとしている」、「ある程度している」を合わせると、親が58.0%、子どもが51.8%となっており、インターネット利用について何らかの決めごとをしている家庭が多いことがわかる(図表2-1-2-8)。しかし、ルール決めについての、親子間での認識の一致を調べたところ、親が「子どもと話し合い、ルール決めをしている」と答えた中で子どもは「親と話し合い、ルール決めをしていない」と答えた割合が27.2%、逆に、親が「親と話し合い、ルール決めをしていない」と答えた中で子どもは「親と話し合い、ルール決めをしている」と答えた割合が18.8%に及ぶなど、親子間で認識の相違がある家庭も多い(図表2-1-2-9)。

図表2-1-2-8 「話し合ったり、利用方法についてルールを決めたりすること」
図表2-1-2-8 「話し合ったり、利用方法についてルールを決めたりすること」
インターネット利用について何らかの決め事をしている家庭が多い
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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図表2-1-2-9 「話し合ったり、利用方法についてルールを決めたりすること」に関する親子での意識の差
図表2-1-2-9 「話し合ったり、利用方法についてルールを決めたりすること」に関する親子での意識の差
親子間で認識の相違がある家庭も多く見られる
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●情報活用能力や安全性理解について、親子間で相関が見られる

 子どもの不安に対する親の影響を検証するに先立ち、親と子どもの関係を、情報活用能力や安全性理解の観点から見てみたものが、図表2-1-2-10及び図表2-1-2-11である。すると、親の情報活用能力や安全性理解が高まるほど、子どもの情報活用能力や安全性理解の割合が高くなる。このことから、子どもがICTを利用し、必要な基本的スキル・知識を身につけるためには、まず親自身がICTを使い、スキル・知識を身につけることが重要なポイントと考えられる。

図表2-1-2-10 親の情報活用能力と子どもの情報活用能力
図表2-1-2-10 親の情報活用能力と子どもの情報活用能力
親の情報活用能力が高いと子どもの情報活用能力が高い傾向
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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図表2-1-2-11 親の安全性理解と子どもの安全性理解
図表2-1-2-11 親の安全性理解と子どもの安全性理解
安全性を理解している親の子どもの方が、安全性の理解が高い傾向
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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 なお、安全性を理解していると思うかどうかをたずねたところ、親が安全性を理解していないと答えた場合でも、その子どもの72.7%が「親は理解している」と考えている(図表2-1-2-12)。親の安全性理解の実態とは別に、子どもは親を信頼する傾向がある。

図表2-1-2-12 親の安全性理解と子どもが考える「親の安全性理解」
図表2-1-2-12 親の安全性理解と子どもが考える「親の安全性理解」
親が安全性を理解していないと答えた場合でも、その子どもの72.7%が「親は理解している」と回答
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●親の安全性理解が子どもの不安に影響

 親が安全性を理解しているかどうかによって、子どもの不安がどのように変化するかを見てみると、「安全性を理解していない親」の子どもにおいて、不安を感じる子どもの割合が高い傾向がみられる(図表2-1-2-13)。この結果から、子どもの不安には、親の安全性の理解の程度が影響を与えていることが考えられる。

図表2-1-2-13 親の「安全性の理解」と子どもの不安
図表2-1-2-13 親の「安全性の理解」と子どもの不安
子どもの不安には、親の安全性理解の程度が影響
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●子どものインターネット利用における不安の解決方法で、最も回答が多いのは「親や家族」

 子どもの不安の解決方法について、小中高校生別に回答結果をみると、それぞれ最も回答が多いのが「親や家族」である(図表2-1-2-14)。子どもは親を最も頼りにしていることから、親の安全性理解が子どもに影響を与えるとも考えられる。その一方で、中学生以降になると、「親や家族」は最も高い回答割合ではあるものの、その割合は低下し、その他に「友人・知人」に相談する割合が高まる。また、小中高校生ではICTの利用方法等が大きく異なる。子どもは年齢が高くなるに従い、幅広くICTを利用するようになる。これらのことを総合すると、子どもの不安を低下させるためには、親の影響が大きな役割を占めるものの、子どもの年齢が高まるにつれて、親以外の要因も重要となると考えられる。

図表2-1-2-14 子どものインターネット利用上の不安への解決方法
図表2-1-2-14 子どものインターネット利用上の不安への解決方法
子どもの年齢が高まるにつれて親や家族に相談する割合が低下
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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●大半の親がインターネット活用に関する安全性を教える必要性を感じている
 インターネット活用に関する安全性の知識を子どもに教える必要性については、「必要だと思う」、「ある程度必要だと思う」の合計で94.4%となっており、大半の親が、インターネット活用に関する安全性の知識を子どもに教える必要性を感じている(図表2-1-2-15)。

図表2-1-2-15 インターネット活用に関する安全性を子どもに教える必要性
図表2-1-2-15 インターネット活用に関する安全性を子どもに教える必要性
大半の親が、インターネット活用に関する安全性の知識を子どもに教える必要性を感じている
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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 その中で、誰が安全性の知識を子どもに教えるかについて聞いたところ、1位の回答では、「保護者(78.6%)」が最も回答割合が高かった(図表2-1-2-16)。また、2位の回答では「通っている学校(46.1%)」、3位の回答では「自分で学ぶ(32.9%)」が最も回答割合が高かった。主として親が子どもに知識を与えるべきであるが、それ以外にも、学校や子ども自身の取組も必要という考え方の親が多い。

図表2-1-2-16 誰が安全性の知識を子どもに教えるか
図表2-1-2-16 誰が安全性の知識を子どもに教えるか
「保護者」「通っている学校」「自分で学ぶ」と答える親が多い
(出典)総務省「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査」(平成23年)

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 年齢が高くなるにつれて、子どもは親以外にも相談するようになること、親においても「保護者」に加えて、それ以外で安全性を学ぶ機会を期待していることを考えると、保護者に加えて、学校等多様な場において子どもが安全性知識を学ぶ機会を設けることが重要だと考えられる。

●子どものICT利用に対する親の影響力は大きいが、親以外の人・組織による取組も重要

 子どものICT利用の不安は、親のICT利用の不安に比べて低く、年齢が高まるにつれて不安が高まる傾向があることがわかった。また、子どものICT利用状況は、小学生ではあまり利用が進んでおらず、中学生以降急激に利用が進むことがわかった。このことから、年齢が高まるとともに、ICT利用の不安が高まることは、それだけICTの利用が進んだ結果とも考えることができる。また、子どもの不安に影響を与える要因としては、親の安全性理解が重要であることが明らかとなった。安全性を理解している親の子どもほど、不安を感じていない傾向がみられる。そのため、子どもにICTを利用させる際には、親が安全性の知識を身につけることが重要なポイントとなる。
 一方で、子どもによる不安の解消方法として、「親や家族」へ相談する割合が高く、不安の解消という点では親や家族の影響を大きく受ける様子がうかがえる。ただし、子どもの年齢が高まるとともに、中学生以降では、「親や家族」以外に「友人・知人」等に相談する割合も高まるため、親以外の人や組織においても子どもの不安の払しょくのための取組が必要となると考えられる。また、子どもに対して誰が安全性の知識を教えるべきかの質問に対しては、親の意見として、主には親が子どもに知識を与えるべきであるが、それ以外にも、学校や子ども自身の取組も重要という考え方がうかがえた。
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