第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

6 健康医療分野におけるICT利活用の推進


 我が国の健康医療分野においては、急速な少子高齢化の進展による患者数や国民医療費の増加、医師の不足、偏在等に起因する地域医療の崩壊、生活習慣の変化と疾病構造の変化、患者の健康医療分野に対するニーズの変化等、様々な課題を抱えている。増大する患者や変化するニーズに対応し、限られた資源を有効活用した健康医療サービスの提供を支援するために、ICTの利活用による課題解決への期待が高まっている。
 総務省では、これらの課題の解決に資するため、以下の施策を実施している。
 地域医療の充実に資する遠隔医療技術の活用方法及び推進方策について検討するため、平成20年3月から、総務大臣及び厚生労働大臣の共同懇談会である「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」を開催している。平成20年7月に公表された「中間取りまとめ」において、遠隔医療の位置づけの明確化、診療報酬の適切な活用が提言され、厚生労働省と連携しながらエビデンスの収集・蓄積を行ってきたところである。さらに、「規制・制度改革に係る対処方針について」(平成22年6月18日閣議決定)を受け、厚生労働省において、遠隔医療の実施可能範囲等を明確化するため、平成23年3月に、遠隔医療関連通知21を改正した。今後も、診療報酬の適切な活用等の検討に資するため、更なるエビデンスの収集・蓄積に努めていくところである。
 健康医療等分野におけるICTの利活用については、制度面等の課題への対応を含めて、関係省庁等とともに、ICTによる有効性・安全性を検証しながら、効果的な推進を図っていくことが重要である。また、平成23年3月の東日本大震災に際して、ある病院においては、津波により、カルテが流失し、電子カルテサーバもダウンしたものの、他県の病院と電子カルテの情報共有を行っていたことで、患者の医療情報を早期に復元することが可能となるなど、当該分野において、ICTの持つ効果が発揮されている例もあった。今後、被災地等における健康情報活用基盤(EHR)の推進など、復興対策や震災対策とあわせた取組についても十分に配意していくことが必要である。


21 「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」(H15.3.31厚生労働省医政局長通知)
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