第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(4)電気通信紛争処理委員会


ア 電気通信紛争処理委員会の概要
 平成13年11月に、電気通信事業者間の紛争を処理する専門組織として、電気通信事業紛争処理委員会が創設された。
 平成22年に成立し、公布された「放送法等の一部を改正する法律」(平成22年法律第65号)が平成23年6月30日に施行され、同委員会の扱う紛争に放送分野等の紛争が追加されるとともに、名称が電気通信紛争処理委員会(以下「委員会」という。)に変更された。現在、総務大臣により任命された委員5名及び特別委員7名が紛争処理に当たっている。
 委員会は、[1]事業者間等の紛争を解決するためのあっせん・仲裁手続の実施、[2]総務大臣から命令及び裁定等について諮問を受け、審議・答申を行うこと、[3]その権限に属せられた事項に関し、ルール整備等について総務大臣に必要な勧告を行うことという3つの機能を有している(図表5-2-1-3)。
 また、委員会事務局に事業者相談窓口を設けて、事業者間の紛争に関する問合せ・相談等に対応している。

図表5-2-1-3 電気通信紛争処理委員会の機能の概要
図表5-2-1-3 電気通信紛争処理委員会の機能の概要

イ あっせん・仲裁が可能な紛争の種類
 委員会のあっせん・仲裁の対象となる紛争は、これまで主に電気通信事業者間の協定や契約の締結に関する紛争であったが、法改正により、平成23年6月30日から委員会が扱うことができる紛争が拡大し、コンテンツ配信事業者等と電気通信事業者との間の紛争やケーブルテレビ事業者等と基幹放送事業者との間の紛争についても新たにあっせん・仲裁の対象となった。現在、委員会は、次のような事業者間等の協議について、相手方が協議に応じないときや協議が調わないときにあっせんを行うことができる(そのうち一定の場合は仲裁を行うことができる。)(図表5-2-1-4)。

図表5-2-1-4 あっせん・仲裁が可能な紛争の種類
図表5-2-1-4 あっせん・仲裁が可能な紛争の種類

ウ 委員会が果たしている役割
 委員会は、これまで、大きく4つの役割を果たしてきた。
[1]専門性を活かした迅速な紛争の解決
 あっせんについては、これまで51件の申請を処理し、約6割の事案を解決している。
[2]紛争の発生の未然防止
 事業者相談窓口の助言により本格的に紛争化する前段階で解決した事例もある。また、過去の事例を委員会のウェブサイト等で積極的に公開し、類似の紛争防止に努めている。
[3]セーフティネットの機能
 公正中立な第三者機関として、両当事者の主張を確認して紛争の解決を図る委員会があることで、電気通信事業者等の事業展開に当たっての安心感の醸成につながっている。
[4]総務大臣への勧告を通じた競争ルールの改善
 勧告を通じ、我が国のブロードバンドサービスの競争促進や固定発携帯着電話料金の低廉化、MVNOの発展等に貢献してきた。

エ 委員会の活動の状況

(ア)紛争処理件数
 委員会は、平成22年度末までに、あっせん申請を51件、仲裁申請を3件処理し、諮問に対する答申を8件、勧告を3件実施している(図表5-2-1-5)。
 平成22年度においては、総務大臣から電気通信設備の接続協定に関する協議再開命令の申立てに係る諮問が1件あり、委員会は諮問について審議を行い、総務大臣への答申を行った。

図表5-2-1-5 紛争処理件数
図表5-2-1-5 紛争処理件数
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(イ)事業者相談窓口における相談等
 平成22年度に17件の相談、問合せ等を受けた。相談内容ごとの受付件数は次のとおりである。

図表5-2-1-6 相談内容別件数
図表5-2-1-6 相談内容別件数

(ウ)委員会の認知度・利便性向上に向けた取組
 通信・放送事業者等に対して、セミナー等の場を利用した委員会の概要や活動内容などの説明や今般の法改正にあわせ新しいパンフレットを作成する等の周知活動を行い、委員会の認知度・利便性の向上に取り組んでいる。
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