第1部 東日本大震災における情報通信の状況
第1節 通信等の状況

第1節 通信等の状況


1 通信網への被害

(1)通信インフラへの被害

●基地局や中継局に甚大な被害が発生

 今回の震災においては、地震や津波の影響により、通信ビル内の設備の倒壊・水没・流失、地下ケーブルや管路等の断裂・損壊、電柱の倒壊、架空ケーブルの損壊、携帯電話基地局の倒壊・流失などにより、通信設備に甚大な被害が発生した。また、商用電源の途絶が長期化し、蓄電池の枯渇により、サービスが停止した(図表1-1)。

図表1-1 携帯電話ネットワークの被災箇所
図表1-1 携帯電話ネットワークの被災箇所
総務省資料により作成

 通信事業者各社は、移動電源車百数十台、車載型携帯電話基地局40台以上を被災地に配備する等、サービスの迅速な復旧に取り組むとともに、復旧エリアマップや通信被害地域の公表を行ったところである(図表1-7)。
 固定通信網については、NTT東日本の固定電話で、加入電話とISDN合わせて最大約100万回線が不通となるなど、NTT東日本・KDDI・ソフトバンクテレコムの3社で約190万回線が被災した1図表1-2及び図表1-3)。復旧活動の進捗や、電力の復旧等により、不通回線数は減少したが、4月7日に発生した最大震度6強の余震により、一時的に不通回線数が増加した。その後、各社、一部エリアを除き、4月末までにほぼ復旧した。

図表1-2 東日本大震災における通信の被災状況
図表1-2 東日本大震災における通信の被災状況
総務省資料により作成

図表1-3 固定電話の不通回線数の推移
図表1-3 固定電話の不通回線数の推移
(出典)総務省資料

 また、携帯電話及びPHS基地局についても、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル及びウィルコムの5社合計で最大約29,000局が停波した2図表1-2及び図表1-4)。こちらも、復旧活動の進捗や、電力の復旧等により、停波局数は減少したが、4月7日の余震により、一時的に停波局数は増加した。その後、各社は、一部エリアを除き、4月末までにほぼ復旧した(図表1-5及び図表1-6)。
 なお、通信事業者各社は、被災地の基本料金等の無料化又は減免や利用料金の支払期限の延長を行った。

図表1-4 携帯電話基地局の停波局数の推移
図表1-4 携帯電話基地局の停波局数の推移
(出典)総務省資料

図表1-5 東日本大震災による被害状況の推移(地理的分布/NTT東日本及びNTTドコモ)
図表1-5 東日本大震災による被害状況の推移(地理的分布/NTT東日本及びNTTドコモ)
総務省資料により作成

図表1-6 東日本大震災による被害状況の推移(地理的分布/KDDI(au))
図表1-6 東日本大震災による被害状況の推移(地理的分布/KDDI(au))
総務省資料により作成

図表1-7 車載型基地局(陸前高田市)
図表1-7 車載型基地局(陸前高田市)
(出典)KDDI株式会社資料

●ネットワークインフラへも被害が発生

 今回の震災では、ネットワークインフラにも大きな被害が発生した。沿岸部の通信設備については、津波の被害により、電柱・ケーブル等の多くが消失したほか、多数の通信ビル内の設備が損壊するなどの被害が発生した。また、太平洋岸に沿って基幹回線及び親局が設置されているため、これらの損傷により固定通信については、内陸部の交換局も一時機能が停止した。携帯電話も、基地局まで固定回線を使用しているため、多数の基地局が停波した。このため、通信事業者各社は、別ルートの基幹回線に迂回措置をとるとともに、一部回線についてはマイクロ波や衛星回線を活用するなど、応急対策や復旧活動に努めた。
 国際間においても、日米間、日アジア間を結ぶ海底ケーブルが一部被災し、迂回措置による応急対策が行われた(図表1-8)。

図表1-8 海底ケーブル陸揚局(JIH仙台局舎)
図表1-8 海底ケーブル陸揚局(JIH仙台局舎)
(出典)KDDI株式会社資料


1 3月13日時点。なお、NTT東日本における東北地方の加入電話及びISDNの回線契約数は約270万契約(平成22年度末時点)
2 3月12日時点。なお、携帯・PHS計5社の東北・関東地方の基地局数は約137,500局
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